2014/10/22 12:02:49
(bWBMo9W8)
美代子が週末に飲みに聞いてから、僕は仕事が手につきませんでした。
部長が僕に嘘を言った可能性もあると最初は思ってました。うろたえる僕の様子を見て楽しんでいるんじゃないかと。
でも、同じ日に美代子は飲みに行くと言ったのです。
行く相手は企画の女子メンバーだと言っていましたが、今は美代子が嘘をついてるとしか思えませんでした。
木曜日。
僕は部長に話があると言って、会社近くの喫茶店まで来て貰いました。
「すみません。急にお呼びたてして…。あの、明日の件なんですが…」
「おう、7時に待ち合わせや」
「本当…なんですよね?美代子は…企画の人達と飲みに行くって僕には言ってて」
「へえ。嘘ついてるんや」
「あの…やっぱり、飲みに行くのはやめていただけませんか…?」
「なんで?職場の元先輩と飲みに行くの止める権利あるんか、お前に?」
「いえ、それはそうなんですが…僕は部長と美代子の、その、昔の関係を聞いてしまったもので…」
「今さら、そんなん言われてもなー。美代ちゃんが行きたい言うてた店ももう予約したし。何や?心配なんか?嘘ついてるし?」
部長はまたニヤニヤ笑いをします。
「お前がそんなに心配なら、メールでちょいちょい報告したるわ。それやったら安心やろ」
「それは…そうですけど…。あの、美代子は普通に部長の誘いをOKしたんですか?」
「ああ、前も言うたけど、なかなか、うんと言わんからさ。いろいろ、あの手この手でモーションはかけたで」
「それで…OKしたんですか…?」
「したよ。ただ飲みに行くだけやで?たいしたことちゃうやろ?」
「それはそうなんですが…。あの…変なこと…しませんよね?」
「何やねん?変なことって?そりゃな、男と女のも関係やったら何が起こるかはわからんわ。でも、それは美代子の判断やろ?美代子が断わったら済む話やん?お前、そんなことでグジグジ言うてたら、嫁に愛想つかされんで?仕事でもそや。お前はすぐに慌ててバタバタしてすぐパニックになりよる。男なんやから、ドンと構えろよ、ドンと!」
最後は仕事の説教みたいになってしまい、僕はそれ以上何も言えませんでした。
その日の夜、僕はなかなか眠れませんでした。
そして、隣りで寝ている美代子の布団に潜り込みました。
「何暖」
すでに眠っていた美代子が驚いて目を覚まします。
僕は美代子のパジャマの上から体をまさぐりました。
「エッチしよ…」
明日の事を考えて不安になった僕は、今夜、美代子を抱くことで部長と会っても妙な気を起こさないんじゃないか、と思ったのです。
「明日も早いんだから、いいって…」
美代子は僕の手をはねのけました。
「したいんだって…。いいだろ?」
「眠いんだからぁ」
美代子は僕の手を逃れて、布団の奥の方へ移動しました。
「なんだよ…!」
僕は諦めて自分の布団に戻ります。
美代子が断ること自体不思議ではありませんでした。
ここのとこ、僕と美代子はセックスレス状態。
子供が生まれてからセックスの回数は減り、美代子が仕事を始めてからはまったくしていなかったのです。
しかし、僕は部長と美代子のことを考えると、その後もほとんど寝ることはできませんでした…。
翌日、美代子が飲みに行くので、僕は早めに家に帰ることになっていました。
今朝も美代子は特別変わった様子はありませんでした。
少しいつもより華やかな服を着ているなと思ったので、そのことを訊くと、「飲み会だし」と普通に答えます。
部長もいつもと一緒でした。
僕だけが仕事が手につかない感じでした。
7時前には僕は家に帰っていました。
夕方、まだ会社にいる時に美代子からメールが来ました。
[今日はごめんね。ご飯炊いてくれたら、オカズはレンジで温めてくれるだけでいいので。子供たちよろしくです。]
[わかった。今日は何人で行くんだっけ?〕
僕はわざと返信に書きました。
[3人だよ。◯◯さんと◯◯さん]
妻の返信に僕は怒りを覚えました。
部長と僕は同じ職場にいるということは、部長が僕に飲みに行くことを告げる可能性があります。それを平気で嘘ついてるということは、部長と口裏を合わせているからしかありません。
ご飯の支度をしている時に、部長からメールが来ました。
[今、美代子と合流]
部長は僕にメールで報告すると言っていました。
美代子がどんな顔で部長と待ち合わせたのか、想像すると不安がまた大きくなってきます。
リビングでテレビを見ている時も僕は携帯を握りしめていました。
次にメールが入ったのは8時半頃でした。
[美代子と食事中。美代子、ワイン飲んで顔真っ赤になってる。]
妻は普段あまり酒を飲みません。アルコールには弱い方でした。
[美代子は結構飲んでるんですか?]
僕は返信しました。
返事はなかなか来ませんでした。
ようやく、部長からの返信があったのは1時間ぐらい立ってからでした。
[今、店変えてバーで飲んでる。美代子もカクテル飲んでるよ。鈴木(僕)、あんまり外食とか連れて行かへんねんてな?]
店を変えてまだ飲んでることもそうですが、美代子が僕とのことを部長にしゃべっていることに腹が立ちました。
僕は美代子にメールしました。
[まだ飲んでるの?帰りは何時頃?]
そして、部長にもメールを送りました。
[あまり酒は強くないので、飲ませ過ぎないようにしてください]
2人ともすぐに返信はありませんでした。
10時を回り、子供たちもベッドに入りました。
僕は返信の来ない携帯をずっと見つめ続けました。
と、美代子からメールが来ました。
[返信遅くなりました。みんなでこれからカラオケに行くことになったんで遅くなります。先に寝ててもいいからね。]
カラオケ?今から?
僕は妻にメールします。
[今からカラオケ行くの?電車、大丈夫なの?]
部長とカラオケに行くのでしょうか。
ただ、食事をするだけだと思っていたのに、2人が遅い時間まで一緒にいることに、僕のイライラはピークに達していました。
と、またメールの着信があり、僕は妻からだと思って携帯を見ると、それは部長からでした。
[※絵文字 ピースマーク]
僕にはその絵文字の意味がわかりません。
部長に確認しようとメールを打っている途中で、また部長からメールが入りました。
[美代子落としたで。今からラブホ行ってくるわ]
僕は一気に血の気が引きました…。