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2025/11/15 18:54:53 (dCntfETs)
自宅マンションの駐車場に空きが無く、俺は自宅から歩いて10分程の場所に駐車場を借りている。

自宅近くにも貸駐車場はあるのだが、大抵は立体式のそれで、朝の出勤で出庫が重なるとだいぶ待たされる事から、いつでも出し入れが容易な町外れの少し寂しい場所の平地の駐車場を利用している。

今年の7月の事だ。俺は新しく始まった部署の立ち上げの責任者になり毎晩残業続きで、この日も退社が夜10時を超えて、帰路の途中にある牛丼屋のロードサイド店舗で食い損ねた遅い晩飯を食い、駐車場に戻ってきた時には11時をゆうに越えていた。

駐車場は一般宅の塀沿いに3台のスペースがある。この辺りは駅からも離れていて街灯も少なくかなり暗い。

俺がいつも通りに塀に向かって車をバックさせて停めようとした時である、バックライトの光に照らされて人影が見えた。

今までこの場所でしかも、こんな夜中に人など見かけた事すら無い場所で、車のバックモニターにちらっと見えた人影に俺は仰天した。

何の衝撃も感じなかったが最悪、人を轢いたかと俺は動揺していた。慌てて車から降りて車の後方を確認した。

目を疑うような光景がそこにはあった。なんと下半身丸出しの気の弱そうな痩せた中年男が立っていて、慌ててくるぶしの辺りに落ちたズボンを上げようとしている。

驚愕の眼差しで俺を見ている下半身丸出しの男。驚愕具合で言えば俺とて同じだ。思わずアンタ何やってるんだ?俺は自分でも驚く程の甲高い上擦った声で尋ねた。

いや、何でも無いんです!ごめんなさい!すみません!慌ててズボンを履きながら男が叫ぶ。
男が何か後ろを気にしている。

男の後ろの暗がりに人影がもう一つあって動いている。よく見ると乱れた着衣を直している女が居た。俺はレイプ犯罪が頭に浮かび、痩せた男に動くな!と叫んだ。暗がりの女性に大丈夫ですか?と声を掛ける。

女から返事が無い。俺は痩せた男におい!お前!と声を荒げて近づくと男はすみません!すみません!と叫びながら走っていった。

追いかけてやろうかと思ったが女が心配で、俺は暗がりにもう一度大丈夫ですか?警察を呼びますか?と尋ねた。

暗がりから少し慌てた様子の30代半ばの女が出てきた。ごめんなさい。違うんです。あの人は私の連れです。ごめんなさい。
女は小さな声で呟くように俺に言うと男が走っていった方にやはり小走りで走っていった。

俺は呆気にとられて走り去る彼女を呆然と見送った。我に帰ると俺は車に乗って改めて車を庫内にバックさせた。

バックモニターに何か白いモノが映っている。俺はふたたび車を降りて車の後方に行く。
モニターに白く光って見えたモノは女が落としていった小さな巾着袋だった。

俺は巾着袋の中身をあらためた。中には化粧道具とスマホ、免許証が入った財布が入っていた。免許証の顔写真はさっき、慌てきった様子でスカートの裾を直しながら走り去った女の顔だった。

俺は女がふたたびココに戻ると確信した。親切心いや、それだけでは無い好奇心と、少しの野次馬根性、イジワルな気持ちが入り混じった複雑な感情で俺は駐車場に留まり、車の中で慌てて戻る筈の彼女を待った。

暫くすると、道路沿いに少ないながらも点在する街灯に沿ってトボトボと歩いてくる女性のシルエットが近づいて来た。


〜つづく
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投稿者:タカシ
2025/11/16 08:52:39    (UC6CMfzM)
トボトボと歩いて来た女の陰が、俺の車のエンジンが掛かっている事に気づいて立ち止まる。
暫く思案を巡らせている様だったが意を決した様に歩を進めて来る。

彼女は車の中に俺の姿を認めると緊張した表情を浮かべて運転席の俺に真っ直ぐ歩み寄って来た。

俺が運転席から降りる。女は小さな声でさっきはすみませんでした。と言った。
女は30半ばと云った印象で襟に小さな花柄が刺繍された白いブラウスに紺色のタイトスカート。
むっちりとした身体つきの色白の女で、さっき見た腰までたくし上げられたスカートから出ていた真っ白な太ももの強烈なイメージのせいか何か男の欲情を掻き立てる様な色っぽさを感じる女だった。

俺は自分の良からぬ妄想を悟られ無いよう女から目を逸らせて忘れモノですか?巾着袋が落ちてましたよ。と言った。

女は、はい。と小さな声で答え、俺が差し出した巾着袋を受け取る。
女は有難う御座います。と小さく頭を下げ踵を返して来た道を戻ろうとしたが2、3歩歩くと突然、俺に振り返って私っておかしいですか?と泣き顔で叫んだ。

俺がえっ?と答える間もなく女はおかしいって思いますよね普通、こんなところであんな事してる女なんてと泣き叫んだ。

私、自分でもおかしいって思います!もう何が正しいのか、自分がどうしたいのか分からないっと一気に話し、肩を震わせて泣いた。

〜つづく
3
投稿者:タカシ
2025/11/16 12:38:33    (BSGHp5P1)
俺はその場にしゃがみ込んで泣き続ける女にどう接したら良いか分からず狼狽えた。

大丈夫ですか?あの、そんなとこじゃ何なんで座ってください。
おれは泣きじゃくる女に助手席のドアを開けて座るよう促した。連れの男の方はどうしたんですか?助手席に肩を振るわせて泣いている女を座らせながら俺は尋ねた。

逃げました。女はポツリと呟き泣き止み、助手席に座って前方の闇を見つめながらもう一度、逃げちゃいました。と独り言の様に言った。
俺は何と返事を返したら良いか分からず黙り込んだ。女も闇を見つめたままで暫く沈黙の時間が流れた。その沈黙を破ったのは彼女の携帯の着信音だった。

暗く静かな車内に彼女のスマホの着信画面の光とバイブ音だけが響きわたる。着信画面の青白い光に照らされた彼女は無表情のままで、彼からです。と誰に言うでも無く呟いた。

彼、外でするのが好きなんです。週末は車に乗せられてあちこち人けの無いところに連れていかれて、ああいう事したがるんです。青白い光に照らされたまま無表情の彼女が俺に言う。

聞けば逃げた男は、長年不倫関係にあった元会社の上司なのだと言う。不倫に気づいた奥さんに出て行かれて1人になった彼と内縁の関係が続いているのだと言う。

不倫時代にはノーマルな性交渉をしていたのが内縁状態になった途端に彼の性癖が堰を切ったように出て来たのだと言う。

事ある毎に、お前のせいで家庭も会社勤めも駄目になったと責められて彼の言いなりになってコンビニの駐車場、深夜の映画館、雑居ビルの踊り場で彼の欲望の捌け口にされていると言う。

そのくせに、今夜俺の駐車場の暗がりでコトに及んだところを見つかると彼女を置いて我さきに逃げたばかりか、携帯をあの場に落として来たと近くに停めた車の中で話すと俺は関係ない、1人で取りに行けと車を降ろされたのだと云う。

私、何やってんだろう。彼女は呟くとふたたび泣き始めた。俺は居た堪れず彼女の肩を抱いた。
彼女は俺の胸にしがみつきながら激しく泣き始めた。

〜つづく
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投稿者:**** 2025/11/16 14:27:58(****)
投稿削除済み
5
2025/11/16 21:23:57    (QafV05Yz)
良記事の予感!
続き、楽しみにしてます(^^)
6
投稿者:
2025/11/17 13:30:59    (quiBh2TK)
文章を書くのがお上手ですね。
引き込まれました^ ^
7
投稿者:**** 2025/11/18 17:55:43(****)
投稿削除済み
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