2022/03/27 20:40:15
(jSj4bea1)
ラブホテルの一室で目が覚め、隣には下着姿で俺から昨夜、婚約指輪を貰ったという女、手にしたスマホには昨夜婚約指輪を突き返した元カノなりたての女からの着信。
この状況で落ち着けと言う方が無理だ。
俺はすっかり慌てて夏美からの着信を受ける。スマホから夏美の声が響く。サクちゃん、大丈夫?昨夜かなりショック受けてたから心配で。
俺は夏美の心配しているという声に喜んだ。もしかしたら夏美は昨夜、家に帰って心を変えてくれたのかもしれない。プロポーズなんて急だったから。
俺はなんとか気を落ち着かせ、大丈夫。いやこちらこそ昨夜は急に変なコト言ってごめん。びっくりさせたよね。来週でもゆっくり話そうよ。
視界の端で、下着姿の女の呆れる意思表示の大袈裟なジェスチャーが見える。
俺は視界に入らないように反対を向いて通話口を手で覆ってちょっと今朝はバタバタしてて、来週また連絡するからと言った。
通話口が短く沈黙した後、夏美の小さな声が聞こえて来た。サクちゃん、私達もう会わない方が良いと思うの。
俺は、頭をガツンと殴られた気がした。どこまで脳天気な男なんだろう。プロポーズを断られ、落ち込んで1人でタクシーにも乗れないくらいに落ち込んでいた男を死なれちゃ困ると心配して翌朝に連絡してきた女に、びっくりさせてゴメンね。来週また話そうって。馬鹿か…。
俺は恥ずかしくなり、そりゃそうだよね。来週は話そうとかじゃないよね、何言ってるんだ俺。ごめん、ごめんと慌てている俺のスマホが取り上げられた。
振り向くと下着姿の女が俺のスマホを手にしている。女はスマホに向かって大きな声を上げる。
ねーあんた、昨夜この男振った女でしょ?
何、中途半端にいい人ぶって、振った男に電話してるの?何、俺を捨てないでくれとか、まだ愛してるとでも言わせたいの?
俺は慌てて下着姿の女からスマホを奪い返す。
スマホから夏美の興奮した声が響く、何?誰?今の女!今どこにいるのっ!何?今の言い方っ!
俺が慌てて、夏美ちゃん違うんだ。知らないひとなんだよ。俺の声に被さるように夏美の声が俺の耳をつん裂く。
何?貴方、人に昨夜プロポーズしといて翌朝は違う女と一緒に居るんだ!あり得ないっ!通話が切れた。
最低の女ね。良かったじゃん。そんな女と結婚しないで。下着女は俺に向き直って言う。
なんで勝手に電話出たんだ?俺が言うと
何言ってんの。情けない。婚約指輪返した女が中途半端な憐れみで電話してきたんだよ?
男ならスッパリ切りなさいよ。と女が言う。
確かにその通りだ。それどころか俺のプロポーズを断った彼女の心変わりを期待した。さらにはもう会わない方が良いと、ご丁寧に2日連続で振られた。
俺が黙り込むと、元気出しなよ。サクちゃん。と俺の頭を小突いてきた。
上品な淡い水色の下着。長い手足の白い肌。肩までの艶やかな黒髪。少し垂れ目気味の大きくて優しげな瞳。
わたしの名前、覚えてる?プロポーズした女の名前を忘れちゃうんじゃ、そりゃ振られるわ。
仕方ないか昨夜、凄い酔ってたもんね。
でもメチャ楽しかったよ。私はカオリ。サクちゃん今日は休み?
そう言ってカオリは、にっこりと俺に笑いかけた。
俺はごめんなさい。昨夜は色々あって凄い勢いで飲んじゃって。カオリさん。はじめまして、僕は雄一。佐久間雄一でサクちゃんって呼ばれてて。
サクちゃんはユウイチって言うんだ。ユウイチって顔じゃないね。私の知ってるユウイチは2人ともマトモじゃない。ユウイチ界にもちゃんとした人居るんだねと言ってカオリがクスッと笑う。
いたずらな笑顔が魅力的だった。
カオリは、サクちゃん改めユウちゃん。今日が休みなら朝ごはん一緒に食べに行かない?わたし、もうお腹ペコペコ。と言って下着から覗く白い腹をさすった。
そうだね。確かにお腹空いてる。もう今日が何曜日なのか分からないくらい二日酔いだけど、土曜日だよね?休みだからどっかご飯行こうか。とお腹をさすっておどけているカオリに言った。
決まり。じゃあわたしシャワー浴びてきちゃう。
先にシャワー使って良い?カオリはタオルどこにあるんだろうと洗面台あたりを探っている。
俺は勿論。先に使ってと答える。カオリはじゃあお先にっと言って風呂場に向かう。
風呂場に向かうカオリのキュッと上がって形の良い尻を見送った俺の脇でスマホが鳴った。
夏美からの着信だった。俺はスマホをベッドに放ると晴れ晴れとした気分でベッドから起き上がった。