2021/05/08 18:45:26
(PilRt.w6)
コメントを頂きありがとうございます。
少しでもムラムラして頂ければ幸いですが、今回は退屈な時間になるかもしれません。
僕は当時、高校を卒業し就職したばかりの18歳…
職場の近くにある歯医者に通い始めました。
夜遅くまで診てくれる診療時間と、仕事帰りに行ける都合の良さで週に1度は通うようになります。
その日、治療も終わり表に出るとまさかの雨…
傘もなく、職場に戻ろうにも数秒でずぶ濡れになりそうな豪雨に尻込みし、歯医者の軒先で雨宿りしていると
「傘ないの?」
振り向くと50前後の女性…
「私も傘持ってきてないの…ついてないわぁ」
雨をボーッと見ているだけの退屈な時間…
彼女はしばらく話し相手になってくれました。
実は彼女を見かけたのはその日が初めてではありません。
僕と予約時間が被るのか、待合室で不機嫌そうに順番を待つ彼女を何度か見たことがあります。
「先週もこの時間にいたよね?」
そう言われて
(人って意外と見てないようで見てるんだなぁ…)
ハッとしたのを覚えています。
それ以外どんな会話をしたのか…
思い出すには年月が経ちすぎてうろ覚えですが
近所の団地で一人暮らしをしてる…
そんな話を聞きました。
雨も次第に小降りになり
「これなら帰れそう…ウチ近いからこの傘貸してあげるよ」
そんな小雨の中なら僕もバスで帰れそうでしたし何度か遠慮しましたが…
それは申し訳ないとか、そういう思いではなく、表情ひとつ変えない彼女に何となく苦手意識を感じたからです。
汚ないものを見たときの眼…
上から人を見下すような、そんな眼をしていた彼女の第一印象はちょっぴり怖かったです。
そんな僕の気持ちとは裏腹に、会話の成り行きで傘をお借りすることになり、彼女を自宅である団地まで送りました。
「ウチここの○号室なの、近くに来ることがあったら玄関前にでも傘置いといて」
その日は団地のエレベーターホールで別れました。
そしてこれが○子さんとの出会いでもありました。
後日、仕事帰りに2回お伺いしたのですがいずれも留守…
歯医者で会うこともありませんでした。
直接お礼が言いたかったので傘を片手に3回目のピンポーン…
「どちら様ですか?」
という返事に
「○○ですが先日、お借りした傘を返しに来ました」
そう伝えると中から
「わざわざ来てくれたの?ちょっと待ってね」
しばらく待つとドアが開きます。
「表に置いといてくれればいいのに…
暑かったでしょ、時間あるならお茶でも飲んでいって」
Tシャツにジーンズというラフな格好で出てきた○子さん…
優しい言葉をかけてくれているんですがその眼は今まで通り、どことなく人を見下した眼をしています。
その日は土曜日で仕事も早く終わり、おやつにはもってこいの時間…
○子さんの眼に躊躇しつつ少しだけお邪魔することにしました。