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(無題)

投稿者:ゴジラ ◆Wo8ofIen4Q
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2019/12/15 21:19:54 (fKukltNt)
私は単身赴任中のサラリーマンです。
 旅話をするBBSでの会話を一つの趣味にしています。
 最近の話なので女性が特定されないよう、私の赴任場所、女性が住んでいる地域、彼女が記載した内容の一部は記載しません。BBSには書いていない個人情報は匿名のため問題ないと考えてある程度記載します。

 BBSで女性(仮名菜穂)が書いた主たる内容は、ある地方へ一人旅をしたいのでおすすめの場所を教えて欲しいというものでした。
 その地方とはまさに私が単身赴任中のこの地のことですし、私も赴任中にこの地域を散策しておこうと色々回っていますから、お勧めしたいところが頭にたくさん浮かんできました。
 そして、それをBBSに書くことだけで楽しんでいました。
 私以外にも数名の男女が菜穂さんの書き込みに対してレスを書いていました。
 1週間ほどすると菜穂さんから私がBBSに登録しているアドレスにメールが届きました。
 私はメールでいくつか提案をしたり、その反応を待ってまた手直ししたりを繰り返していました。二人で旅行のスケジュールを組むような感じでとても楽しめました。
 連休の中でのたった2泊の旅行なのでコースのやりくりは大変でした。
 菜穂さんは中学の教諭だということ、お子さんが1人いらっしゃることなどもわかりましたし、私も自分のことを色々書いたので、会ったこともないのに次第に旧知の仲のような感覚になりました。
 旅行が実行されるまでに2ヶ月ちかくあったので、色々なやりとりができ、お互い打ち解けている部分も多くありました。
 そのせいか、菜穂さんからの申し出で、こちらに来られた日に昼食をご一緒する事となりました。
 新幹線の到着を待ちながら私は約束した店で待機していました。
「駅につきました。すぐお店に向かします」
 のメールに、
「店の中にいます」
 と返事をすると、しばらくして店の入り口にキャバ嬢が歳を重ねたような派手な中年女性が入ってきました。
 ちょっと想像とちがうなと思いながら手を振ると、その女性は変な顔をして別の空き席に行きました。
 私がホッとして目をメニューに移して苦笑いしていると人の気配がしたので顔を上げました。するとそこには色白の飾りっ気は無い素敵な女性が立っていて、目で「あなたですか?」と伝えてきたので名乗ると、その人が菜穂さんでした。
「実はあそこのケバい女性だと勘違いしまして」という話から入ったら菜穂さんは大笑いしてくれて、場が和んで楽しい食事となりました。
 食事のあとは場を喫茶店に移して旅行の話やBBSの話で盛り上がりました。
 菜穂さんは私に連絡してくれた理由について、こう説明してくれました。
「私の書き込みに何人もの男性がお返事をくださいました。どの方も必ず『自分が案内します』と書かれてました。でも、あなただけがそれを書かずに旅の提案だけをしてくださいました。私に会いたがらなかったのはあなただけです。だからあなたに興味を持ってメールしました」
 と。
 菜穂さんは仕事上の悩みがあるけれど旦那さんがそういう事については一切話を聞いてくれないこともあって、気分転換のためと仕事に役立てるためとで旅行を決行したそうです。
 上品で教養のある話し方と笑うととてもかわいい色白の顔、体を動かすとぷるんと揺れる少し大きな胸。僕は菜穂さんの魅力に圧倒されました。
 喫茶店を出ると菜穂さんはキャリーバックを引っ張って一人旅に向かしました。
 一目惚れみたいなものです。それから私は菜穂さんのことばかり考えてしまいました。でも、菜穂さんからメールは来ませんでした。
 喫茶店で撮った2ショットの記念写真を眺めては、「素敵な人だったなぁ。旅行楽しんでるかなぁ。もう会えることは無いんだろうなぁ」と思って、ため息をついたりしてました。
 菜穂さんの一人旅はぐるっと回ってこの地に戻ること無く帰るコースでしたから、会えることはもう無いと思っていました。

 翌日も、メールは来ませんでした。
 私は連休でもやることがなく、ぼーっとしていましたから余計菜穂さんのことを思い出してしまいます。
 きっと旅行を楽しんでいるだろうと思うことにしました。
 菜穂さんの旅行最終日の昼前にメールが届きました。たぶん帰路につくお知らせだろうと思ったのですが、そこには、
「今お時間空いてますか?」
 とあります。
 空いてるには空いてるのでそう返事を返すと、
「近くまで来てます。いらっしゃらなければ帰ろうと思ってました。一昨日お聞きしたスペシャル定食たべたいです」
 とのこと。
 それは、私のマンションから5分の所にある駅に隣接したレストランの定食のことです。私の話をちゃんと聞いていてくれたようで、私の最寄り駅を菜穂さんは覚えていてくれました。
 私は急いで駅の改札まで迎えに行き、レストランに案内しました。
 菜穂さんはスペシャル定食を食べながら、一人旅の結果を早口で話してくれました。そして、
「今までのやりとりや一昨日のおしゃべりが本当に楽しくて、どうしてもまたお会いしたくて、戻って来ちゃいました。何も言わずに来てみてお会いできたらそれは運命で、お会いできなかったらそれも運命かなと思って連絡せずに来てみました。」
 と、私を見ずに定食を見ながら言いました。
「私も菜穂さんに会いたかったです。変な話、送り出してからずっと菜穂さんの写真を見てました」
「本当ですか。私もです」
 そう言ってまだ残っている定食をほおばっていました。
「写真見ながら、菜穂さんてすてきだなぁって思い出してました。こんな素敵な女性を落とせる男になりたいもんだなんて、思ってました」
 ととんでもないことを口走ると、菜穂さんは私の顔を見みながら、ビックリすることを言いました。
「私、もう落ちてます」
(つづく)
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2
投稿者:紅虎
2019/12/16 00:53:26    (7VBwAFzW)
続き楽しみにしてますよー
( ^ω^ )
ストーリーが良えわぁ
3
投稿者:(無名)
2019/12/16 08:55:09    (TXPDHwAU)
この後の発展が楽しみです!
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投稿者:(無名)
2019/12/16 19:12:29    (3M.quIVD)
続きを!!!
5
投稿者:ムメイ
2019/12/16 21:52:41    (uhUOcveo)
いいですねぇ。
序章でがっちりつかまれました。
続き お待ちしています。
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投稿者:ゴジラ ◆/BYb8x3Gd6
2019/12/17 00:38:27    (0LmVvK89)
続きです。

 ここからは余計な言葉は不要で、流れるように抱いてしまうというのが小説の展開なのでしょう。
 しかし、私に思いもかけぬ菜穂さんの行動と言動に、恐らくパニック状態になっていたようです。
 この素敵な女性に私ごときがそんなことをいわれるはずはない、と第三者的な立場で否定する側に回ってしまったような感覚でした。
「この建物にはハンバーガーショップもあったのですけど、撤退してしましました。本屋もあったんですよ。でも、やっぱり撤退してしまった、その代わりに飲み屋でも出来るかと楽しみにしていたら、出来たのは整形外科ですよ」
 などと、どうでもいい話をしてしまいました。
 菜穂さんはちょっと間を置いてから、
「そうなんですか。飲み屋さんはご近所にいくつかあるのでしょ?」
 と私の話に乗ってくれました。
 いや、乗ってくれたと言うよりも、私が菜穂さんの告白を台無しにしてしまったという自分への嫌悪感でいっぱいでした。
 菜穂さんに恥をかかせないためにはさっきの話はなかったことにしてしまう方が良いとさえ思いました。
 いや、なかったことになってしまったという後悔に押しつぶされたのかもしれません。
 バカなことをしたもんです。
「飲み屋さんは、ないんですよ、一件も」
「そうなんですか、残念。帰りも電車だし、そんなお店があればお酒飲んじゃおうかと思ったのに」
「ここはファミリー層の多い新しい住宅地だから、そういうお店は出来ないみたいです」
 と、私は真面目に答えた。
「ファミリーで思い出したけど、ファミリーマートがありますね、駅前に」
「はい。駅前にもあるけど、私のマンションの隣にもあるんですよ。たった500メートルしか離れてないのに」
「そうなんですか。じゃあ、そこでお酒とおつまみを買って明るいうちから飲んじゃうとか、良いかもしれないですね」
 どんなに鈍感なにも、さっきの私の失敗を菜穂さんがフォローしてくれたのがわかった。
「そ、そうですね。じゃ、お酒とおつまみを買って、私の部屋で飲みましょうか、もし良ければですが」
「突然お邪魔してご迷惑でなければ」
「全く構いません」
 ここまで女性にリードされるのはなんとも情けない話です。
7
投稿者:通行人♀ ◆qG5Uj1x8xc
2019/12/17 11:16:53    (npotG9cW)
ナンネでこんなに引き込まれるのは初めて。微妙な心理や描写、表現も作文もとてもいいです。
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投稿者:ゴジラ ◆/BYb8x3Gd6
2019/12/17 22:08:20    (0LmVvK89)
レストランからのマンションまでの道のりでは、二人は異常なくらい饒舌でした。
 何も話していない時間が恥ずかしくて、頭に浮かんでくることを見透かされたくなくて、ついついマシンガントークになってしまいます。
 気がつくと菜穂さんもさっきの3倍くらい饒舌で、中身がないことばかり口に出します。
 二人は途中のコンビニでワイン、日本酒、そしておつまみをおおめに買い込みました。
 コンビニ2つ隣が私の住むマンションです。二人はマンションに向かって歩き出しました。
「綺麗なマンションですね」
「築10年です。1LDKだから一人だと余裕があります。単身赴任の場合家賃は管理費以外会社持ちなのですけど、会社負担の上限に自分で少し足して良いマンションにしました」
 本当にどうでも良いことが口から飛び出します。
「どのお部屋ですか?」
「506号室です」
「わかりました。先に行っていてください」
 そういうと、菜穂さんはマンションの前で立ち止まりました。
「どうかしました?」
「先にちょっと部屋の中に片付けたいものとか、おありじゃないかと思って」
 菜穂さんはなんて気の利く女性なんだろうと私は思いました。
「いえ、見られて困るものなんてないので、大丈夫です」
「えーと、私も家族に電話しておきたいので」
 私の方が鈍感なだけかもしれません。
「それは気の利かないことで、すみません。では、電話が終わったら前室のパネルで506を押してください」
 菜穂さんは片手でOKマークを作ってきびすを返し、私に背を向けてスマホ操作し始めました。
 その姿を見てから私はマンションに入り、エレベーターで5Fへ行き、自室に向かいました。
 私は自室に入るとすぐにトイレを済ませ、脱衣場に脱ぎ捨ててある服を洗濯機につっこみ、大慌てで寝室の枕カバーを交換し、クイックルワイパーでフローリングを超高速で綺麗にしました。
 それだけ短時間でやったで、息が上がっていました。
 タオルであふれ出す汗を拭きながら、もうそろそろインターホンが鳴るだろうと構えてみたけれど、鳴りません。
 はたと気付いてトイレに行き、さっきトイレを使ったときに気になった便座を専用の薬剤入りティッシュで拭いて、便器の気になったところを急いでブラシで掃除しました。
 そしてインターホンの前に陣取りました。
 それでもインターホンは鳴りません。
 たぶん、電話相手の家族とは旦那さんのことでしょう。旦那さんと会話して、自分の行動にブレーキがかかってしまったのではないかと僕は心配になりました。
 それで帰ってしまったのではないかと思い始めたのです。
 それとも何か問題があって長話になっているのかもしれません。
 いずれにしても菜穂さんは黙って帰るような人ではないはずです。
 しかし、しばらく待っていても菜穂さんは戻ってきませんでした。
「まあ、人生こんなもんだよね。そうそううまいことはないさ」
 私は妙な独り言を呟いて、覚悟するかのようにとりあえずがっかりしてみました。
 その瞬間、インターホンが鳴りました。
「菜穂です!」
「あ、今開けます」
 私は慌てました。焦った私は解錠ボタンを押す前に終了ボタンを押してしまいました。
 こうなるともう、解錠できません。
 慌てて玄関を飛び出し、エレベーターに乗り、そしてエントランスの扉を開けました。
「あら。ここって遠隔で解錠出来ないんですか?」
「いえ、できるんですけどその・・・・・・まあとにかくどうぞ」
 私はぜいぜい言いながら菜穂さんを部屋まで案内しました。
 おかげでどうして菜穂さんがこんなに戻ってこなかったのか聞き忘れてしまいました。
(つづくかも)
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2019/12/17 22:25:11    (bpmgeJZM)
続きをお願いします。
10
投稿者:通行人♀ ◆qG5Uj1x8xc
2019/12/18 01:47:48    (CiA1o7Jr)
貴方は、じれったいほど好感持てる方ですね。早く早く。

11
投稿者:(無名)
2019/12/18 09:23:22    (XPubur2y)
お願いです。
続けてください。

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