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2003/06/24 14:28:56 (ETVpROEp)
その日に限って僕はバイクでチョット遠出した。
受験勉強のストレス解消は日帰りのバイクのツーリングで解消している。
気の向くまま、田舎の知らない道をぶっ飛ばすと、気分爽快!
ところがその日はどうした事か道に迷ってしまった。一度走った道は必ず記憶して
るし、これまで道に迷う事は殆どなかった。
迷ったと判ったけど、舗装もしてある道だからこのまま走れば県道か国道に出る筈
だとその時は気楽だった。「全ての道は俺の家まで通じている」と僕はいつも友人
に言っている。でもなかなか大きい道路に出会わない。標識もなくなった。チラッ
と引き返そうかとも思ったけど、マア良いか!時間もたっぷりあるし…何処に行き
つくか楽しみでもあったし、そのまま走ることにした。
道は狭くなり、やがて舗装もなくなった。雑木林が道の両側に迫ってきて、どうや
ら山道になってしまったような感じがした。でもこのまま走れば小さな峠でも越え
てその向こうの村まで行けるはずだ。
僕はスピードを緩めてカーブを曲がった。そのすぐ先の雑木に囲まれた狭い畑に人
影が見えた。とっさにブレーキを踏んでその人の近くにバイクを停めた。
女の人が一人、手に鎌を持って中腰で畑の周囲の草を刈っている。
「こんにちは~~。すみませ~ん!」と僕はその人に向かって叫んだ。
100m近く離れている所為か2度大声で呼んでも振り向いてくれない。
仕方なく、バイクをそこに置いて畑に下り、近づいて行った。
10mぐらい近づいたところでもう一度大声で呼んだ。すると草刈の手が止まり、
僕のほうを振り向いて耳から何かを外す仕草をした。僕は3mぐらいまで近付いて
立ち止まり「あの~すみません!ちょっと聞きたいんですけど」と言った。
「あっはい!」と言いながらその人が頭と顔を覆っていた手拭のようなものを顔の
部分だけ取った。僕は正直ビックリした。32~3かなと思える小柄で色の白い丸
顔の可愛い清楚な感じの女性で、声も奇麗だった。
畑で草刈の姿を見て僕が想像していたのは、40代か50代の色の黒い野太い声の
おばさんだったからそのギャップの大きさに驚き、その清楚な奇麗さに驚ろき、ビ
ックリして次ぎの言葉が出なくなってしまった。
「あの~」とその女性が言った。驚いて目を見張ったまま黙ってしまった僕に不信
げな様子だった。
「い、いえ、あの~」
「はい?」
「さっき、あそこから声をかけたんですけど、聞こえませんでした?」
僕はしどろもどろで、どうでも良いようなことを口走ってしまった。と言うより道
を訊ねると言う用件そのものを忘れていたんだと思う。
「え~?そうなんですか、すみません気が付かないで」
彼女はチョットはにかむような顔になり、右手に持っているものを僕に見せた。
「CD聞いてたものだから」
手にはイヤホンがあり、コードが腰に付けているウエストポーチ(?)に続いてい
る。
「あ~そうなんですか!3回も4回も(実際は2回なのに)呼んだんだけど、聞こ
えないようだったから」
「まあ!ゴメンナサイね」
「い、いえ。それ誰の曲ですか?」
「え?はずかしい。…OOOOなの。わたし年なもんだから」
と確かこの前亡くなった男の歌手の名前を言った。
「いえ!ええと、あの結婚してますよね?奥さんかな~間違ったらごめんなさい!
年だなんてことないです。若いです。いえ本当です。」
僕は意気込んでチョット声を大きくした。歌手の名前など、どうでも良かった。

(つづく)




 
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