2013/05/29 12:49:04
(dqn3JuDs)
早いモノで3日経ち、一週間が経ち、もうそろそろ、丸々1ヶ月が経とうとしていた。
沙希もこのまま厄介になってるだけではと思ってはいたが、出来る事といえば家事くらい。
たまに家の庭に出てのんびりしてみたりした。
義雄に対しても、特別の感情ははっきりとあった。
沙希は義雄の家で世話になるようになって身体も余裕がでてきて主人との淫猥な記憶も感覚も爽やかに薄らいでいた。
それもこれも義雄のお陰だと思うと余計だった。それに毎日、会話を交わし見詰め合って義雄の仕草や息吹を感じる度に女として義雄と身体で接したいと願うようになっていた。
庭さきに赤色の軽自動車がとまる。
マユミさんだわ!
沙希にとって、もう一つの楽しみである。
ここにきて出来た、頼れるお姉ちゃん。
「沙希ちゃんいるー?」
何かの為にマユミには義雄から鍵が渡されている。
マユミも義雄の家族の一員として沙希をおもっている。
屈託なく接する所は、さっぱりしていて、男っぽい所があった。
故に、そんな一面のない沙希にはマユミに頼れる一面として見ていたのだ。
沙希も車をみてから、玄関に向かっていた。
「はーい」
沙希が玄関を開けるとマユミはデニムのシャツにキャップを被っていた。
「さ、沙希ちゃん。支度支度。いくわよ」
そう、今日はマユミに誘われ山に山菜を教わる約束だった。
マユミは、長い金髪を一つに束ねキャップの後ろの調節ベルトとの隙間から、ポニーテールをだしてデニムの襟をたてスリムのジーパンが良く似合った。
マユミも昔は女優として芸能活動をしていた時期があって、近所でも評判の美人だったが、名うての不良少女で、若い頃はレディースチームのリーダーだった。沙希の線の細さに比べると肉体的である。
勿論、細い。
細いのだが、女らしい丸みのある細さ。
顔も沙希と姉妹に見えた。やや面長で目鼻立ちがくっきりして、凛としたマユミに真っ白に肌を染め、線を細く儚くさせれば、沙希になるだろう。
沙希もジーパンにニットパーカーを合わせてマユミの赤色軽自動車に乗り込んだ。
山に向かう道中で、まるで子供の様にはしゃぐ沙希に親しみをもって「わたしの妹にしたいわ」そう言った。
沙希も「私もマユミさんが、お姉ちゃんだったら…。そう思います。」
こんなマユミだからこそなのだろう。
マユミは若い頃、同性にも良くモテた。
「まさか…沙希ちゃん!?」
沙希はクスッと目を細めて優しい笑顔で
「やだなぁ。マユミさん綺麗だから、そんな風になってもいいですけど、違うの。本当にお姉ちゃんみたいだなぁって」
マユミも、この時に沙希は守らないとと思った。
山でも沙希とマユミは、本当の姉妹のようだった。
マユミも沙希と帰宅しながら思った。
なんとか、義雄に沙希を。と。
義雄はこの時、ある男とあっていた。
一件の町外れの開店前の小料理屋で義雄と向かい合いに小島と言う、この辺りでは名の通ったヤクザである。
小島は、190cmを越える身長でピンと背筋を伸ばし広い肩を怒らせて、グラス酒を煽っておいてから
「義雄さん。んじゃ、いつでも声、かけたって下さい。わし、おらなんだら下のモンに言伝てたのんますわ」
義雄もグラス酒を煽って「あぁ、頼むわ。どうもな…この歳になっても、トキメいちまってな…ハハ。だから、守りてぇーんだ。できれば…」そこで義雄は言葉を止めたが小島も義雄の言わんとする言葉は解っていた。
小島が酒を飲み干してグラスをおいてから立ち上がり「じゃ、兄さん。相手がわかったら、一度、話しいれにきますわ。じゃ、また。」
そう言って出ていった。
奥から酒をもって女将が出てくると「あれ!?小島くんは?」
丁度、義雄も飲み干して「あぁ、先にいったよ。洋子さんも変わらんね。じゃ、ごっそう様。いくわ」
女将、洋子さんは義雄が昔、お世話になった人の一人だった。
洋子が、酒をおいて懐かしむ眼差しで
「また、みんなで飲みにおいでね。元気でね」
義雄も笑顔でコクリと頭を下げ「近いうちにまた。」
二人を見送った午後の13:00の電気もついていない小料理屋は洋子にとって狭くかんじた。
ひょんな事から、沙希を中心に関わる人間が、一点に向かって動き始めた瞬間だった。