2017/01/08 03:14:19
(7g3NeI1A)
緊張しながら涼子が続ける言葉を待っていました。
「私が、由紀にあることを頼んだんだけど…」
涼子も緊張しているのか、一言話すと一気にコップに入ったお茶を飲み干しました。
それを捕捉するように健が話し始めました。
「俺はあのとき寝た振りをしていたんだ。もちろん宏樹もな」
涼子は事前にこの事を健から聞いていたのか驚いた様子はありませんでしたが、妻は私と健が聞いていた事を初めて知り動揺していました。
私は後ろめたさから妻の顔を見ることが出来ませんでした。
妻も申し訳なく思ったのか「宏樹、その…あれは…」
「あれは…俺が浮気して涼子が悲しまないように。不安な涼子を安心させる為に言った事だよね?」
うまく言葉が見つからず困っている妻をフォローするように健が代弁しました。
「う、うん。まさか二人に聞かれてるなんて思ってもなかったし…」
健はともかく私に聞かれていたことが妻を動揺させたのでしょう。
今度は妻が私の目を見ようとしませんでした。
「二人、じゃなくて宏樹に。だよね?」
動揺する妻を健はさらにここから畳みかけていきました。
「じゃああの時の話しはなかったって事にする?俺は別に構わないさ。ここまで涼子と由紀ちゃんに気を使わせて浮気なんて出来ないからな…」
健の言葉を黙って聞いている3人。
私の中にある不安が過りました。
このままでは、この話はなくなってしまう。
今一度…健と妻が…乱れる所を…
この機を逃せばもう来ない…
そんな事が頭を廻り、気付けば身体が勝手に動き妻の手を掴むと部屋から二人で出ていきました。
リビングから出た私は妻に二人には聞かれないような声で言いました。
「なぁ、俺の事なら気にしなくていいんだ。由紀の事はずっと愛してる。健はああ言ってるが浮気するかも知れない。
そうなったら俺達も責任を感じるし涼子さんも悲しむと思わないか?
由紀さえイヤじゃなかったら…」
今思えば何故そんなに必死に妻を説得したのかわかりません。
そんな私の様子を察したのか
「本当にいいの?こんなの変だよ?普通なら宏樹は怒る方の立場なんだよ?私や涼子に…」
正しい事を言ってるのは妻で私が間違っているのは誰が聞いても明らかです。
それでも…一度は涼子の提案に乗った妻を説得することが全てでした。
「それはそうだけど…由紀と健がしたからって、俺も涼子さんと…なんて言わないし、あと一度だけだし」
支離滅裂な事を言う私に呆れたのか諦めたのかとうとう妻は
「本当に抱かれてもいいの?嫌いにならない?」と、言ってきました。
「あぁ、絶対に嫌いにならない。それと一応確認しておきたいんだが…」
一瞬間を置いて禁断の質問をしました。
私にとっては非常に大事な質問を。
「なぁ、由紀は健ともう一度したいか?」
妻は少し黙っていましたが、やがて口を開き「そう…ね。あの激しいのをもう一度くらい味わってもいいかな」
その表情は困っていると言うより、何故か妖しく、楽しみにしているように見えました。