ナンネットID のアカウントをお持ちですか? ログイン ログイン
ナンネットID
 
1
2022/12/20 20:07:37 (HVrDq4qG)
俺は40半ばのうだつの上がらないサラリーマン。
都内の小さな光学機器メーカーの営業をしている。10年前に結婚したが上手くいっていたのは最初の1年くらい。2年目から毎日、気が滅入るような言い争いや嫌味の応酬。

それでも離婚しないのは一人娘だった嫁の家に入婿になり結婚1年目に産まれた娘と二世帯住宅に住んでいる事情があるからだ。

嫁は娘とべったり。口を開けば嫌味しか出てこないような女だが、それを知っている地元ではそこそこ知られた料理屋を営む嫁の両親が俺を腫物を扱うように大事にしてくれている。

俺は帰宅すると平日は家族で夕飯、週末は同じ建物の隣に住む嫁の両親達と夕飯を食べる事をこの10年続けている。

嫁が娘を塾、ピアノ、英会話と通わせてその送り迎え。平日は食卓にふきんを掛けてあるおかずに味噌汁を温め直し、飯をよそって1人で食う。

飯を食い終わりソファでテレビを見ていると嫁と娘が帰宅する。男性アイドルやイケメン俳優、流行っているスイーツの話。
俺が会話に入る余地も無い。

俺は女子トークから逃げるように風呂に入り、寝床に入る毎日だった。

そんなある日、昼間会社の同僚と若い頃好きだったグラビアアイドルの話を他愛もないランチ時に交わした。

俺はその日いつもの様に、娘を塾に迎えに行き誰もいない食卓でレンジで温め直した夕飯を1人で食べていた。
俺は昼間の会話を思い出していた。

スタイルの良いレースクィーン上がりのグラビアアイドル、今や演技派女優になったグラビアアイドル。同僚達の口から出てくるのはメジャーどころ。

トミさんは?同僚に聞かれて俺が答えたのは内容的に仮名にしておくが葉山小夏。
皆が口々に知らない、誰それ?と言う。

素早く画像検索した同僚がコレ?とスマホ画面を俺に見せる。10年ぶりに彼女の姿を見た。
俺がそうそう。この人この人。と答えると皆が一斉にマニアック~どっと笑った。

確かに葉山小夏は売れたグラビアアイドルでは無い、それにスタイルが良いと言うよりはムチムチのグラマータイプ。顔も美人というより愛嬌のあるタイプだった。

俺は当時、二流男性誌のグラビアで愛嬌たっぷりの明るい笑顔と色白でムチムチした彼女に魅了され結婚前は彼女のファンになり情報をネット検索して集めていた。
彼女がブログをやっているのを見つけ毎日、更新をチェックしていた。ブログ内容は大概、2流雑誌掲載や町おこしのイベント出演の告知で彼女がテレビやメジャーな雑誌に出ることは無く、所謂鳴かず飛ばずのグラビアアイドルだった。

俺はその頃、上司の紹介で今の嫁と付き合う事になり結婚を決め、グラビアアイドルの事など全く忘れ日々の生活に追われる様になった。

それこそ10年ぶりに葉山小夏を思い出した。
食卓で葉山小夏が珍しく近所のショッピングセンターに来ると聞いて悪友と出かけて当時の俺には高価な写真集を買ってサインを貰った事などを思い出していた。あの写真集何処にやったかなと思っていた時に玄関でガチャガチャと鍵を開ける音がして嫁達が帰ってきた。

何まだ食べてるの?嫁の第一声。
俺はいや今、食べ終わったと答え、茶碗を流しに持っていく。嫁達の嬌声が響く、新しい塾の講師が超イケメンらしい。

俺は年甲斐も無く娘とはしゃぐ嫁を横目で見ながら風呂場に向かった。
風呂から出た俺は布団に入りスマホで葉山小夏と検索してみる。

彼女のブログが出てきた。ブログは5年前を最後に更新されていなかったが最後の内容は事務所を辞めてフリーになり名前を心機一転KONATSUにするというものだった。

KONATSUで検索すると元グラビアアイドル葉山小夏改めKONATSUとプロフィールの一部が表示されるTwitterが出てきた。

Twitterも3年前のツイートを最後に放置されていた。トップに貼りついた葉山小夏は少し歳を取り良い女になった30代の彼女の笑顔。

ツイートを追っていくと彼女はどうやら地元に帰りダンス教室のインストラクターをしていたようだ。
フォロワーは400人足らず、3年前の最後のツイート、ダンススクールのオーナーと意見の相違。
いいねは3つに留まっていた。

階下では相変わらずどっちが娘だと思わんばかりの娘とはしゃぐ嫁の声が響く。
俺は葉山小夏いやKONATSUのTwitterをフォローした。

この3日後、葉山小夏からなんとフォローバッグがあった。俺はその翌日やはり味気ない1人の晩飯を済ませて寝床で寂しさから思いあまって彼女にダイレクトメッセージを送った。

結婚10年目の娘と嫁に邪険にされて家で居場所が無いしょぼくれオヤジです。
久しぶりに小夏さんの話が会社でランチ時に出て、10年前大ファンだった事を思い出しました。
今日も色々とあって思わずメッセージを送りました。小夏さんは元気でしょうか。
結婚生活に疲れ果て、小夏さんを追いかけてた10年前に戻りたいです。
なんて書き込み気持ち悪いですよね。久しぶりに見つけて懐かしくてつい勢いあまりました。
小夏さんが元気で何処かで今も活躍してること願ってます。

俺は送信した瞬間から、送信した事を後悔した。
しかし、その5分後彼女から返信が来た。

それは、くたびれてしょぼくれたサラリーマンが今、思い返しても正しかったのかどうか分からない決断に至る泥沼に嵌まる事になる返信だった。
レスの削除依頼は、レス番号をクリックして下さい
10
投稿者:ゆっちー
2022/12/26 23:36:25    (tk9IqvTD)
すごいー!
ナンネットの掲示板、もう15年以上見てるけど、
こんなに素敵な文章初めて読みました。

続きが気になります。

ぼちぼちでいいので、また読ませてください♪
9
2022/12/24 13:06:13    (D3RKAG/a)
読みやすい文章に惹かれています!
マイペースで構わないので続きお願いします。

8
投稿者:(無名)
2022/12/23 22:26:43    (36RQNsi8)
これ文学作品?続き期待しています。
7
投稿者:(無名)
2022/12/22 20:16:05    (EifbEqi9)
>>トミちゃんさん
レス投稿とか初めてしますけど、すごく心情描写も分かりやすくて続きが楽しみです!
マイペースでいいので頑張って書き上げて下さい。応援しています。
6
投稿者:トミちゃん
2022/12/22 13:05:35    (QVa8JbwY)
その日、俺たちは何度もダイレクトメッセージのやり取りをした。
彼女は短い結婚生活が破綻し嫁ぎ先から地元に半年前に帰って来て、生活の為に昔のツテを伝ってやっと手に入れた仕事が今回の地元ミニコミュニティFMの仕事だった。

彼女は離婚がまだ成立せずに係争中で有ることや、旦那のギャンブル癖、酒ぐせの悪さに疲れ果てた事などを俺に吐露した。

1時間程もやり取りしただろうか、彼女の明日提出しなければならない書類があるから今夜はこの辺りでとおやすみなさい。と云う返信でその日のやり取りを終えた。

俺が彼女が寄越したメッセージを眺めて余韻に浸っていた時に玄関先でガチャガチャと音がして毎度のイケメン話をしながら嫁と娘が帰宅した。

何?全然食べてないじゃない。何?美味しくなかった?嫁がラップを外したきり殆ど手のついていない皿を手にしながら俺に言う。

いやそんな事ない、昼食をへんな時間に食べたから、あまりお腹空いて無いんだ。

そう。と嫁は俺を一瞥しただけで娘の塾仲間の母親の服装が派手だ、品がないと娘と話し始める。
有名私立女子校受験の塾だ。それなりの層の家の子女が通っている。

我が家の様な二流メーカーの営業が家長の娘が通う様なところでは無いのだ。
俺からすると送り迎えの母親達も塾の送り迎えと云うより、何かの集まりにでも出掛けている様な服装、化粧の女達。

嫁もこの塾の送り迎えのある日は念入りに化粧をし、着飾って出掛ける。
そんな嫁を一度嗜めた事があったが、逆に地味な方だ、皆さんもっと良い服を着ている、恥ずかしいくらいだと凄い勢いで捲し立てられた。

それ以来、俺は一切嫁にはその手の事を言わずに静観している。嫁は娘に自分が出来なかった事を背負わせて子育てに熱中していた。

嫁が娘に熱を上げれば上げるほど俺たち夫婦の仲は冷えていった。娘も小学校高学年になってからは嫁に何か吹き込まれているのだろう距離が出来ていた。

俺は家庭内で孤立していた。嫁の家に入婿の俺は離婚を躊躇した。離婚など口したら嫁は待ってましたとばかりの態度を取るだろう。
嫁の実家は余裕がある。娘、孫を残してどうぞ明日からお好きにしてくださいになるだろう。

今考えればつまらない意地だったのだろう。俺は離婚の理由になる失点を避けるように地味に毎日を耐えた。そんなつまらない人生を10年近く送っていた。当然、失点中の失点になる浮気などもっての他だ。俺はこの10年、会社で仕事のやり取りをする以外は女性と会話らしい会話すら無かった。

こんなTwitterのやり取りに中年男は久しぶりに高揚感を覚えたのだ。
喧しい女達から逃れる為に俺は食卓を離れ部屋に戻る。彼女のメッセージを何度も読み返し、彼女の画像を検索して彼女の笑顔に俺は救いを感じた。

俺はどうやらビールを飲み過ぎたらしい。殆どそのまま寝込んでしまったようだ。
翌朝目覚めると俺はシャワーを浴び着替えて出掛けた。通勤電車に揺られていると胸ポケットに入れたスマホが小さく振動した。

混雑した電車内の無理な体勢で俺は胸の内ポケットからスマホを取り出す。
Twitterの通知だ。
葉山小夏からダイレクトメッセージが来た。

おはよう。昨夜は話の途中でごめんなさい。
あれからなんとか書類は書き上げてこれからFM局に持っていくところです。

昨夜は話が長くなってしまってごめんなさいね。
お家だったんでしょ?1時間以上もスマホ弄らせて迷惑掛けたんじゃないかと心配で。
でも昨日はすっかり自信なくして落ち込んでいたけどトミさんと話せてすっかり元気になりました。
今日の打ち合わせは頑張ります!ディレクターに負けないゾ。

俺は自分が笑っていることを電車の窓に映る自分に教えられた。早く返信したい。
電車内は、おしくら饅頭状態だ。スマホを持つ腕すら無理な角度。この状態では返信出来ない。

彼女に今、返信したい。電車のドアが開いた。
電車を降りる人の流れに俺は身を任せる。
俺は10年間乗り続けて1度も降りた事の無い自宅から7つ先の駅に降りて自分が乗っていたいつもの時間の満員電車を見送った。

満員電車の窓に押しつけられた人々の暗い顔が印象に残った。俺は思わず声を上げて笑った。
暗い顔で次の満員電車をホームで待つ人々をかき分けスマホを握りしめて通勤客の流れに逆行して進む。

俺は心の中のモヤが晴れるのを感じた。
駅の改札を抜けて、知らない、初めての街に立ち、この10年感じた事が無い気持ちで彼女に返信を打った。

5
投稿者:トミちゃん
2022/12/22 11:14:07    (QVa8JbwY)
葉山小夏の返信は至って常識的なものだった。

トミさんフォロー有難う御座います。
結婚生活は大変な部分も有りますよね。私も苦労しています(笑)それでも奥様と娘さんを大事にしてあげてください。

私は最近やっと落ち着いて来て、また活動を少しずつ再開し始めました。Twitterも放置状態でしたが、こちらも再開しようか、もう誰も私のTwitterなど見てないかと思い最近見ていたら、新しくフォローされた。思わず嬉しくてフォローバックしました。

少しずつですが再開した活動をこちらに報告します。是非応援よろしくお願いします。

と書いてあった。内容は当たり障りの無いものだったが若い頃好きだったグラビアアイドルからの返信に俺は年甲斐も無く心が弾んだ。

それから1週間程して葉山小夏のTwitterが新しいツイートを表示した。
彼女の地元、湘南のミニFM局で昼間2時間の番組パーソナリティを務める事になったというツイート。

2時間前に上げられたツイートには6個のいいねが付いていた。俺は早速いいねを押して彼女にダイレクトメッセージを送った。

おめでとうございます!良かったですね!
残念ながらFMの電波が届かないところに住んでいるので番組が聞けないのが悔しいです。
でも応援してます。頑張ってください!

その日は仕事で少しトラブルがあり、その対応に追われた。仕事が終わり俺は帰路の電車の中でスマホを取り出しTwitterを開く。
彼女から返信があった。

トミさん、有難う。私も久しぶりのお仕事でワクワクしています。トミさんラジオ聴けますよ。今、小さなコミュニティFMを聴けるアプリが有るんです。
是非、番組聴いてくださいね。

彼女はそのアプリのダウンロードの仕方を書いてくれていた。
俺は早速電車のなかでスマホを操作してアプリを手に入れた。FM局の名前で検索すると局のホームページがあった。トップ画面には少し大人になったが相変わらず愛嬌のある彼女の明るい笑顔の画像が張り付き、月の変わる来週から始まる新番組の告知がされている。

俺はアプリを手に入れたこと、局のホームページを見た事、貴女の笑顔が相変わらず素敵だったと彼女に返信を入れた。

帰宅して玄関を開けたが、いつもの通り玄関先の人を感知して灯る小さな明かりが俺を出迎えるだけだ。真っ暗な廊下、居間、食卓の電気を点ける。

食卓にはいつもの通りラップを掛けた皿がのっていた。俺は冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出す。
冷蔵庫の扉には数枚の写真がマグネットで留めてあるがハロウィンの仮装をした娘と嫁、ディズニーランドではしゃぐ娘と嫁。全て娘と嫁のツーショット写真だ。

この家に泥棒が入ってコレを見たら間違いなく母子家庭だと思うだろう。
写真と一緒に貼ってあるのは娘の週間スケジュールだ。今日は水曜日、娘は嫁が見つけてきた有名女子校合格に実績が有ると云う車で40分掛かる塾に娘を連れて行く日。嫁は娘を塾に連れて行くと近所のカフェなどで塾が終わるのを待ち、ふたたび娘を車に乗せて帰ってくるのだ。

俺は缶ビールを飲みながら葉山小夏のTwitterの過去ツイートを順々に眺めていた。
彼女の地元はうちから電車で1時間程。俺はつい半年程前に彼女の地元にある得意先の新工場の立ち上げで3か月程頻繁に行っていたので、彼女のツイートの地元の店や風景の画像や話題を身近に感じた。

彼女オススメの地元のラーメン屋についてのツイートを眺めている時だった。葉山小夏から返信があった。

トミさん、アプリ入れてくれたんですね、有難う御座います。今日番組のディレクターさんと打ち合わせがあったんです。ラジオはゲストで出演の経験は有るけど自分の番組なんて初めて。
今日打ち合わせしながら、不安になってしまいました。私、ちゃんと出来るかな。自信が無くなってきました。

この返信が彼女が初めて自分の気持ちを書いた返信だった。俺は直ぐに励ましの返信を送った。
彼女から直ぐにまた返信があった。
最初は、そんなきっかけで俺たちは始まった。


4
投稿者:kazy
2022/12/21 23:44:55    (RL5NmGxy)
是非続きをお聞かせください
3
投稿者:(無名)
2022/12/21 18:06:56    (ZJnDX6Ua)
続きお願いしま~す!
2
投稿者:(無名)
2022/12/21 16:57:40    (JSW6K7j5)
続き待ってますよ~
レス投稿フォーム
名前
トリップ[]
E-mail
※任意
本文

投稿文に自動改行は行われません、適宜改行を行ってください。 # タグ使用不可
「sage」
※投稿を上げない
画像認証

上に表示されている文字を半角英数字で入力してください。
動画掲示板
画像で見せたい女
その他の新着投稿
人気の話題・ネタ
ナンネット人気カテゴリ
information

ご支援ありがとうございます。ナンネットはプレミアム会員様のご支援に支えられております。