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2022/03/17 16:26:16 (AInd4mX6)
俺はアラフォーの独身男。見た目もスペックも負け組の典型のような男だ。
三流大学を卒業後家電量販店に就職、本人は一生懸命のつもりだが能力も要領も足りずに10年勤めた職場に馴染めないなどと言い出す駄目な男だった。

当然まともな恋愛経験も無く毎日を惰性でただ生きていた。三十代半ばの冬に父が体調を崩して実家の家業である酒屋をたたむという連絡が来た。

小さな酒屋だ。昔はこの辺りのバーや居酒屋の納めで良い時もあったが時代が変わって格安の酒販店が表通りに出来てからは、業務用も家庭用も売上を奪われて昔からの顧客数十軒を相手に細々とした商売をしていた。

父の入院の支度をしている母を手伝っていた時に、店を閉める無念を聞かされた事や今の自分の仕事の中途半端さに嫌気が差していた事もあり俺は家業を継ぐことを決めた。

その後、退院する事無く亡くなった病床の父に家業を継ぐと伝えた時に喜び笑ってくれたのが俺が父に出来た唯一の親孝行だった。

俺が家業を継いで2年目、俺なりに努力して酒造メーカーと何軒か契約し、こだわりの日本酒や焼酎を揃え始め多少は客も掴み相変わらずの低空飛行ながらなんとかやっていた頃、知り合いの紹介で1年程取引をしていた小さなスナックのママから連絡が来た。

青森の実家の母が骨折したという半年程面倒を見に戻らなきゃならないのだが、オープンして1年やっと固定客が出来たところで店を辞めたくない、どうせ家賃を支払わなければならないなら、毎週末は店で飲み常連客の殆どと知り合いの俺に週末でけ店を開けないかという提案内容だった。

アラフォーの独身男である。仕事が終われば毎晩近所の飯屋で晩飯を食い、安いスナックで時間を潰して寝床に着くだけの毎日だ。

俺からすれば、近所には顧客に頼まれてと言い訳が出来て、毎晩のスナック代が浮き、さらには小遣い稼ぎにもなる一石二鳥の申し出だった。

飲食店経営どころかバイト経験すら無かったが俺は家賃以外の維持費、電気代とカラオケ機器のレンタル代、仕入れ等は俺が支払い、後は全部自分の利益という条件でこのスナックの代打経営を引き受けた。

見ようによっては色っぽいと言えなくもない熟年ママ目当ての年配客も居たが、大概の客は飲兵衛の寂しがり屋だカウンターの中の人間がママから俺に変わっても心配したほど離れた客も無く、以前と変わらない面子が毎晩ぼちぼち訪れた。

店をやり始めて2週間ほどした週末に前の週に常連客が連れてきた職場の友人が取引先の男女を連れて賑やかに入店した。

こないだ来てすっかり気にいっちゃってさ!今日はお客連れてきた。かなり酒が入っているようで上機嫌だ。この男を先週連れてきた常連客のボトルを出そうか迷っていると、マスター!ボトル入れてよ!あとお茶。お茶割ね俺たち。と言ってきた。

焼酎ボトルを俺がテーブルに運ぶと男はテーブルを挟んで座っている連れてきた男女を俺に紹介し始めた。

こっちがね、タケちゃん。タケダさん。いやーね本当にね、もー世話になってるの!この人には!タケちゃんと呼ばれた男は妙に腰の低い中年男で、いやいやとんでもない世話になっているのはこっちですよなどと恐縮した芝居をしているがこちらを見ようともしない事からプライドが高そうなことが伺えた。

この手の男は見透くぐらいに分かりやすくく煽てるのが有効だ。俺はこのタケダを容姿から持ち物、話し方や声、全てを持ち上げた。タケダは何?マスター馬鹿にしてるの?などと口では言うがまんざらでも無い様子だ。

そしてそのタケダの横に座っていたのが陽子だった。こっちはねー。ヨーコちゃん!可愛いでしょ?マスター惚れても無駄だから。すげーイケメン旦那が居るんだよー、残念。この人は経理やってるからね!変な請求書とか送ると直ぐ電話掛かって来て怒られちゃうから!

陽子はそんな事ないですよとか、ひとしきりはしゃぐ芝居をした後、俺に向き直り良いお店ですねー常連客ばかりの地元のスナックって感じ。昭和っぽくて家庭的。

昭和っぽい。お客さんうまいねー!ボロいだけだけどー。客達がワイワイ盛り上がっている。その日は気の良い常連客が多く、タケダ達も初見と思えない程、店に馴染み、遅くまで盛り上がりタケダも陽子も上機嫌でまた絶対来ますと空になったボトルの代わりに新品のボトルを入れて帰って行った。

場末のスナックだ。来る客が殆ど決まった曜日ごと、何日おきか決まってくる。
月曜は意外と混む。店が休みの日曜日、寂しく過ごした常連客が人恋しくてやってくるからだ。

火曜辺りが決まって暇になる。
タケダ達が来た翌週の火曜日、俺はいつものように本業の酒の配達を7時迄に終わらせてスナックを7時半に開店させた。

9時まで誰も来ないなんてことは平日はざらだ。その日も9時半頃までカウンターの中でスマホをいじって一人過ごした。

カランカランと扉の鈴を鳴らして、ひとりの女が入ってきた。だいぶ酔っているように見える陽子だった。

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15
2022/03/19 08:20:40    (3YdhOpEc)
たくちゃんさん

すごい筆遣いに引き込まれています。
お店の描写から女性の心理まで。

ぜひ、お聞かせください
その後を
14
投稿者:批評家の批評
2022/03/19 05:48:41    (i46Sftdf)
成功体験の少ない中年のオッサンが、辛い人生のうさ晴らしにエロサイトの投稿に冷や水浴びせて批評家気取り。
読まなきゃ良いのに、この先の展開も期待してしまい嫉妬に狂い、批判しか出来ないオッサンがせめてウィットに富んだ批評を書けるかと考えれば、期待をする方が無理かと。

自身がここで下手にスレッドを上げちゃえば、自身の才能の無さから落ち込み、また新たな才能を見つけてはチョッカイを出してしまう。
13
投稿者:(無名)
2022/03/18 23:56:07    (Bz0PIyaL)
女性経験の少ない中年のオッサンが、旦那に裏切られ傷ついた人妻に同情して、ヒーロー気取り。
前置き長い分この先の展開も期待してしまいがちだが、経験値低いオッサンが皆の期待通りの濡れ場を書けるかと考えれば、過度な期待はしない方が無難かと。

それにここで下手にその人妻に手を出しちゃえば、旦那と不倫相手から取れるものも取れなくなってしまう。
12
投稿者:マチャ
2022/03/18 18:02:01    (DMac8yk1)
なんか、素敵な展開っす!
続きをお願いします。
11
投稿者:たくちゃん
2022/03/18 12:44:24    (l6p/c63U)
えっ?
陽子は驚きの表情を浮かべて俺に振り返った。

帰らなければ良いじゃないですか。
俺は咄嗟にもう一度同じ台詞を繰り返した。

陽子は俺の表情を窺う様に見つめながら、でも…帰らないと…と呟く。
俺は陽子を咄嗟に背後から抱きしめていた。

帰らなければ良い。俺は陽子をきつく抱きしめながら呟く。彼女の胸の上で交差する俺の腕を陽子の右手が掴む。

有難う。でも帰らなきゃ。
陽子さん、傷ついてボロボロじゃないですか。何があったか分からないですが、こんな目に合わせる様な男の元に帰したくない。俺は抱きしめた腕を解いて、彼女の肩を掴んでこちらに向き直らせた。

2度しか会った事無いけど、俺には分かります。
あなたは素敵な人です。幸せになるべきです。
俺は40近くにもなって家庭も持てない馬鹿だけど、もし貴方みたいな人と一緒なら、もっと一生懸命生きて貴方を大事にする。決して貴方をこんな風に傷つけたりしない。

俺はそれだけ一気に吐き出すと傷つきなお気丈に明るく振る舞う愛おしい女性を強く抱きしめた。

陽子は俺の腕の中で子供みたいに声を上げて泣き出した。
あいつ結婚前から私を裏切ってたの!
向こうの女には子供もいるの!
わたし、悔しくて。馬鹿みたいで。今まで何だったのかって。俺の胸にしがみつき絞り出す様な声で言う。

俺は陽子の背中をさすってやった。しゃくりあげる陽子。俺は愛しさが込み上げてきていた。

彼女の髪を撫でる。熱く泣き腫らした顔を撫でて顎を上げさせる。溢れる涙、目元が真っ赤だ。可愛い唇から少し荒い吐息が漏れている。

俺は彼女に口づけした。陽子との最初のキスは涙でしょっぱいものだった。
10
投稿者:(無名)
2022/03/18 08:51:39    (rO2qxIFP)
かなりの出来ですね!最近は中身の無い話ばかりでつまらなかったので大いに期待しています!
9
投稿者:トシ
2022/03/18 08:29:33    (NVMnE./O)
イントロが長い分、たくちゃんの文脈は質の高い読み物として臨場感も期待感も高まります。
続きを楽しみに待ちます。
8
投稿者:ケンジ ◆Fwhi1dSR7E
2022/03/18 06:37:58    (Bd/1Nklg)
茶化さないで。気になります。続きをお待ちしてます。
7
投稿者:(無名)
2022/03/18 05:18:13    (zSXHLBnO)
前置きどんだけ~
6
投稿者:たくちゃん
2022/03/17 23:17:06    (4GALOU6d)
デンモクから顔を上げた陽子が驚き狼狽えている。陽子は自分が泣いている事にこの時、気がついた。

陽子は傍らの自分のハンドバッグからハンカチを取り出して目元を抑える。
明らかに動揺している様だ。ごめんなさい。なんで?やだ私。もう何?やだ。ごめんなさい。
そんな言葉を繰り返しハンカチを使うが、陽子の瞳からはそんな彼女の強気な言葉と裏腹に大粒の涙が溢れて止まらなかった。

俺は咄嗟にいけね、やりっぱなしだったと口走りカウンター隅の小さなキッチンに入り、陽子が気を使わぬ様に彼女の視界から消えた。

俺は何かを火にかけるどころか明かりも点けてないキッチンの暗闇でカウンターから漏れ聞こえる陽子の啜り泣きを侘しい気持ちで聞いていた。

場末スナックの客の嗜好に合わせた有線の懐メロチャンネルで昭和男性アイドル歌手の能天気な曲が余計に詫びしさを誘う。

啜り上げる様子が止まる。出し抜けにマスター!大丈夫よ。もう大丈夫。泣いたら吹っ切れた。出て来てー。

俺がキッチンから顔を出すと、陽子は明るい笑顔を見せた。カウンターに戻った俺にマスター優しいね。有難う。もう大丈夫だから楽しくやろう!わたし、歌う!と気丈に振る舞った。

カランカランと扉が鳴ると常連の近所の商店主が2人で現れた。2人はこの店の人気者的存在の明るい飲み方の男達。

入ってくるなり陽子を見るや、おーっ美人が居る!今日は大当たりだと場を一気に明るくした。
陽子もわーイケメンが2人も来たー!大当たりだ!と明るい声で応える。

その日の客はこの3人だけだった。
俺も混ざってカラオケ大会になり、代わる代わるデュエットをしたり、2人の下品ギリギリの下ネタに陽子は大きく口を開けて笑って過ごした。

11時を過ぎた頃、2人は母ちゃんに叱られると帰っていった。私もそろそろと帰り支度を始めた陽子。
今夜はこの店来て良かったぁ。楽しかった。もうすっかり嫌なこと忘れた。とコートを羽織りながら明るい笑顔を見せた。

しかし、勘定を済ませた彼女は真顔になって呟く。家に帰るのか…。思い出した様に鞄からスマホを取り出すと画面を見つめて溜息をつく。

旦那から沢山、着信とLINEが来てる。嫌だな。会いたくない…帰りたくないな。

帰らなければ良いじゃないですか。
俺は自分の口から出た言葉に自身が一番驚いていた。

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