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2006/09/05 01:48:51
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私の車に乗せて国道に出て、港のある街まで走らせた。
窓を少しだけ開けて外気を入れながらエアコンを回すと、ちょうど心地よ
い室内温度が保たれる。
「山中さんとは、面接の時お聞きしましたけど、高校生のお子さんがいら
っしゃるんですね。」
「はい。学校と塾で大変です。」
「そうですね、今は学校だけでは・・・。みなさん、塾へ行ってるようで
すね。」
「そうなんです。」
「ご主人は、今日は帰らないそうですけど、来週はもどられるのです
か。」
「はい、多分。単身で転勤したときは、毎週必ず帰ってきてたのですけ
ど、半年くらいすぎてからは、月に3回になり、一週間おきになり、先月は
一回だけでした。」
と少し笑いながら言う。そのことに不満があるとか、寂しがっているとか
は、感じていない雰囲気である。
確かに毎週帰ってくるのも大変だろうと思った。自分なら、ほとんど帰ら
ないだろうと思った。
「それは、お寂しいですね。でもご主人も大変ですよね。」
「ええ、確かに大変だと思います。4時間かけて帰って日曜の午後にはま
た出かけるんですから。」
「そうですか、もう長いんですか。」
「はい、3年になります。」
「ではもうそろそろこちらに戻れるんじゃないですか。」
「そうだと良いんですけど。」
別にそう期待しているふうには思えない答え方だった。
車は港に着き、岸壁に停めて停泊している船を眺めながら、そんなとりと
めのない話をしてから、ふたたび車をもとの会社の駐車場に向かった。
「そろそろ酔いも醒めたみたいだし、運転も大丈夫でしょ。」
「ええ、ほんとにすみませんでした。たすかりましたわ。」
「いえいえ、入ったばかりの職員さんを放っぽりだしては帰れませんか
ら。」
笑いながら、そう言う。
駐車場に着いて自分の車に乗り換えた後も、窓を開けて、
「本当にどうもありがとうございました。仕事のほうも頑張りますので、
今後ともよろしくお願いします。」
と言って、会釈をする。
「ええ、月曜からもお願いしますよ。お互い頑張りましょう。」
そう言って、私も軽く頭を下げて笑顔を返す。
山中さんは、軽自動車特有の高い音を出して駐車場を出ていった。