俺は42歳、農業機械関係の卸しの会社役員。
新卒で入社したのだが、幸い仕事や部下に恵まれたのか若くして上り詰めた。
嫁は2つ年上の姉さん女房。
若い頃に恋に落ちて結婚した。
子供も2人いるが俺は仕事が忙しく、その分稼いではいるがあまり家に帰ることができていない。
俺は仕事も順調、報酬もたくさんいただき有頂天だった。
既婚だが見た目も悪くない俺は言い寄ってくる女も多かった。
基本的には役員の立場を危うくしたくないので会社関係や飲み屋でも会社で使うところの嬢はノーサンキュー、もっぱら性欲は一人で風俗で済ませていた。
嫁との肉体関係は嫁が出産後あまり好まなくなり次第に疎遠になった。
しかし浮気は絶対ダメだと釘を刺す女独特の理論で俺を縛り付けている。
もちろん忙しい身で特定の女と付き合うなどという余裕などないというのが本音。
……だと、思っていた。
麻結に出会うまでは。
麻結は27歳独身で一人暮らし、会社の取引とはあまり関係のないヨット好きが集まるパーティーに誘われて行った先で知り合った女性だ。
麻結は中堅企業創業社長の令嬢で品がありいかにも世間知らずだが教養のありそうな女性だった。
今はある企業でOLをしているが、いずれは婿養子か誰かが父の会社を継ぐのだろう。
パーティーでも社長から紹介されて話した程度だが、麻結の方からLINE交換を求めてきたのだ。
「おいおい、お嬢様が妻子ある男性に近寄っちゃいかんよ」
と諫めたが、
「そんなんじゃないのよ。私は将来農業に可能性を感じてますの。そのための情報収集です。譲さん(俺のこと)またお食事していただけますよね?」
「ああ、まぁそういうことならいくらでも」
その後麻結と俺は月に一度ほど食事に行く仲になる。もちろん健全な食事のみの仲だ。
勉強熱心な若い彼女は、将来父の会社の一部門として農業関連の事業を担う野望を抱いている。
俺も自然と熱弁を振るうようになり、麻結もワインを飲みながらもメモを取るほどに熱心だった。
「譲さん、もっとこのことについて教えて欲しいわ。でも今日は食事も終わりね。いつもご馳走になってますから今日は私の奢りでもう一軒どうですか?」
「あ、ああいいとも」