私は39才のうだつの上がらない営業マンです。
女房子供有りです。
私は二ヶ月に一度、顧客回りのため、東北地方を四泊五日で出張、それを約十年やってきました。
宮城、岩手、青森、秋田と宿泊するいつものルート、いつもと変わらない出張です。
七月、いつものように出張していて、たどり着いたいつもの弘前でのホテル。
ホテル内の和食処で夕食をし、ボーナスが出た直後だったのでちょっと懐に余裕あって、いつもならしないバーラウンジで軽く一杯やっていたときでした。
平日夜のためかお客はまばらのバーラウンジ、私はカウンターでビールを飲み始めました。
口をつけてすぐ、同じくカウンターに先に座っていた女性が近寄ってきました。
『隣、座ってよろしいですか?』
驚いた私。
『え?ああどうぞ』
隣に座った女性もビールを飲んでました。
『こちらにはお仕事で来られたんですか?』
『そうですがあなたは?』
『面白くないことがあって、ちょっと逃げてきたんです』
『面白くないこと?』
『まぁ家で色々とありまして』
左手薬指にはしっかりリングがありました。
あまり立ち入ったことも聞けないし、差し障りのない会話に終始してました。
年の頃は私と同年代くらいかな~、ちょっと都会的な雰囲気からと訛りのなさから、この辺や東北の人ではないようだと思いました。
一時間も話しをしたか、私は翌朝、早めに出なければならないといい、席を立ちました。
『お喋りに付き合ってくれて、ありがとう』
そう言ってその女性は、ビールをもう一杯注文してました。
部屋に入り、明日の準備をして、さあ寝ようかとしたときです。
『コンコン』
ドアをノックされました。
誰?と思いながらドアを開けると、先ほどの女性でした。
『カウンターに置かれた鍵に、502ってあったからつい』
そして私の横をすり抜け、入っていいと言ってないのに、部屋に入ってきました。
もしかしていわゆる、逆ナンみたいなやつ?とすぐ思いました。
彼女はテーブルに、鍵を置きました。
503、私の隣部屋でした。
そして言われました。
『お仕事で迷惑かもしれませんが、私と寝て見ませんか?』
随分ストレートな言い回しと思いました。
『私みたいなのでいいんですか?』
そう謙遜して見せました。
『お見受けしたところ、私と年近そうだし、さっきの紳士的な態度で、誘ってみたくなりました』
続きます。