私は妻から聞いた番号に電話をかけた。
男が出て私だとわかると恐縮し始めた。
私「さっきはいきなり手荒な真似をして悪かったね、
僕も頭に血が上っちゃって」
男「こちらこそいろいろ申し訳ありませんでした」
私「明日の夜でも会って話がしたいんだけど時間つくって
もらえませんかね?×××町まで行ってもいいけど」
私は男の免許証を手にしながら話した。
男「私の方はどこでもご主人の都合に合わせます。」
私「それでは会社に電話入れますよ。
番号は××××-××××ですよね」というと
男は驚いたように息を呑んだあとで「そうです。」
と言って電話を切った。
妻も私が会社の電話まで知っていることに驚いた感じだった。
私「明日、奴と会うことになったけどおまえも一緒に会うか?
奴の口からおまえの知らない話が聞けるかもしれないぞ。
おまえに独身だって嘘ついた理由とかな」
翌日私は奴の会社に電話をして夜10時に家に呼んだ。
男は玄関に入るなり私に頭を下げた。私は男を部屋に招き入れて
妻と二人並ばせた。二人は土下座をしていた。
私「これから話をしてもらうけど本当のことを話してください。
嘘やごまかしがあったら怒りますよ。さっそくだけど二人の
出会いからの経過を話してください」
男の話は妻から聞いたものとほとんど同じ内容であった。
私「女房から聞いたけどあんた独身なんだって?」
男「はい。数年前に女房と別れて今はマンションにひとり暮らしです」
私「おい、最初に本当の事を話せと言っただろ、
おまえは自分の身だけ守ろうとしてんのか?×××町に住んでる
女房や娘に確認するぞ。おまえそこに住んでるんじゃないのか、
とぼけやがって、今度嘘ついたら容赦しねえぞ」
男「・・・・すいません。」
私が自宅まで知っていることに狼狽の色が浮かんでいた。
私「なんで独身だって嘘をついた?」
男「理由はありません」
私「そうか。でもうちの女房は俺と別れてあんたと一緒になるとまで
思い込んでいたぜ。あんたに女房子供がいるって正直に話して
くれてればこいつもここまで本気にならなかったかもな。
あんたどうする?今の女房と別れてこいつと一緒になるか?
あんたこいつのこと愛してるんだって言ったそうじゃないか。
あんたこいつのどこが良くて付き合ってたんだい、身体目当てか?」
男「すみませんでした。女房はなんにも知らないんです。
奥様はいい方でした。でも奥様とはこれっきり別れます。
勘弁してください。」
妻「あなた、私とのことは遊びだったの?だましたのね。」
妻は叫び泣き始めた。
私「あんたはこいつとのことが女房や娘に知られるのが怖いのか?」
男「お金でしたら少しなら用意できます。」
私「慰謝料は当然だが、あんたそれだけで済まそうとするのかい?
こいつはすべてを失うんだぜ。離婚させられて子供にも二度と
会えず実家の親にも縁を切られるかもしれないんだよ、
あんたどうすんの?」
そばで妻は泣き続けた。
男「私はどうしたらいいのでしょう?」
私「自分で考えろよ。あんたはそれだけの事をしたんだからきっちり
責任は取ってくれ。それとな、俺はあんたの会社にも乗り込むぜ、
あんた仕事中にひとの女房抱いてるんだからな。会社にも社員の
管理上の問題があるだろ。そのあとのあんたの処分はどうなるか
は俺は知らないよ。あんたと会社の話しだからな。」
男「お願いです。それだけは勘弁してください。私と奥様の事で
ご主人の気持ちが納まらないことはよくわかっています。
でも会社にはどうか穏便にお願いします」
私「あんた自分のことばっかりだな」
つづく