嫁子から相談があったとき、俺は直ぐに拒否できない事情があった。
元カレの母親から電話があって、うつ病で精神病院に入院している息子を、
嫁子に見舞ってほしいと頼まれたというのである。
その男は6年前、看護師をしている嫁子に一目惚れし、
交際を申し込んできた男だった。2年の交際を経て結婚を申し込まれ、
嫁子も承諾したが、男の両親が猛烈に反対して破談になったのだった。
当時嫁子は24歳、男は28歳。男の親は会社経営をしている資産家である。
大学を出ておらず、名家の出でもない看護師の嫁子は、
跡取り息子の嫁には相応しくないと男の両親は考えたらしい。
嫁子の方も急速に熱が冷めて、あまり後悔せずに破談にしたのだった。
その後、小・中学校の同級生だった俺と26歳で結婚。
今、俺たち夫婦は結婚生活2年目、共に28歳、子供なし。
俺は大学を出て役場に勤めている。大学では福祉を専攻し、
役所では命の相談窓口も担当しているのだった。
元カレは嫁子が俺と結婚しているのを知って、
うつ状態が重症化して自さつ未遂を起こし、入院中らしい。
結婚せずに粘っていたら、親がそのうち結婚を許すと思っていたのかもしれない。
俺の気持ちとしては嫁子と男を会わしたくない。
でも保健福祉担当の立場としては嫁子を諦めさせて、
男に社会復帰させることも考えねばならぬ場面だ。
俺と嫁子は前にも書いたが、小中の学校で幼なじみ、
何度か同じクラスにもなり、親同士もPTAなどで知り合いだった。
友達が進んで夫婦になった感じで、一目惚れみたいな熱い恋ではないが、
お互いの性格がよく分かっての結婚だと思う。
嫁子は二人の弟がいて、面倒見のいい性格だった。
俺の手前、元カレに会いに行くのを遠慮しているが、
かなり気になっている様子だった。
さらに、役場の窓口に元カレの父親が俺に相談がしたいとやって来た。
「ご迷惑なことは重々承知しております。私もどうしてよいか、
分からないのでございます。
私の妻が一度奥様に会わせて、今は幸せな奥様の姿を見たら、
息子も納得するのではないかと言うので、
無理は承知でお願いに来ました。」
俺は嫁子の夫としてというよりは、福祉課の職員として、
元カレの親の申し出を承諾することにしたのだった。
俺が元カレとの面会を承諾したのに嫁子は驚いていた。
「本当にいいの?」
「話をするだけだぞ、キスとかはNGだからな。」
「わかってるって」
元カレと交際当時、どこまでの関係だったか聞いてはいないが、
エッチもしていたかもしれない。嫁子にその気はないと思うが、
相手はからだを求めるかもしれないので、十分注意しなくてはならない。
まあ、病院にいるのだし、嫁子も今は専業主婦になっているが、
元は看護師である。患者の扱いは慣れてると思い、信用していた。
数日後の金曜日に、嫁子は元カレの見舞いに行った。
平日を選んだのは、休日は夫婦で過ごしたいと嫁子が言ったからだ。
午後1時過ぎ、嫁子から、これから出かけます、というメールが入った。
車で1時間ほどの所に元カレが入院している病院がある。
夕食の準備もあるので5時までには帰宅すると言っていた。
仕事が終わってすぐに帰宅すると嫁子は夕飯を作って待っていた。
「どうだったの、健一(元カレ)さん。」
「うーん、元気なかった。」
「いろいろ話したの。」
「話したよ、夫の事も。そしたら過呼吸になっちゃって。」
ちょうどその時、主治医の先生が来て、今日はお引き取りください、
て言われて、嫁子は10分ほどの面会で帰ってきたのだった。
帰り際に健一が、今日は病気のせいでうまく話せなかったので、
また来てください、と嫁子に懇願したというのである。
「で、また行くの?」
「あなたは嫌なんでしょう?」
「必要があるんだったら行ってもいいよ。」
俺は自分では懐が深い男のつもりで言ったのだったが、
自分の言葉を後で散々後悔することになる。
実はこの時、俺は嫁子が二度とN男に会いに行かないと思っていた。
失恋して子供じみた狂言自さつする男など、
嫁子が相手にするはずがないと思っていたのだ。
それに面会時の様子も俺にそう思わせた理由だった。
精神的な病気の治療なら嫁子ではなく、医者の仕事である。
それから約1年間、健一のことは夫婦の話題から消えていた。
1年ほどたったある日、健一の父親が俺に面会を求めて、
役場に現れた。健一が退院して、少しずつだが父親の会社を
手伝えるようになったという。すべてが嫁子のおかげだというのである。
俺は意味が分からず、嫁子がそんなにお役に立ちましたか、と言うと、
再々病院にも見舞いに来ていただき、息子の復帰を支えて頂きました、
さぞや俺が気分を悪くしているのではないかと心配しておりましたが
杞憂でした、などと意味不明の謝辞を言い、帰っていったのだ。
その夜、俺は嫁子にこれはどういうことなのかと追求した。
俺が昼に健一の父親が来て言った内容を嫁子に話すと、
嫁子が急に泣き出してしまったのだ。
俺は嫁子の反応に面食らってしまった。
嫁子がポツリポツリと話し出した内容は次のような内容だった。
週に1回ほど病院に行っていたという。
俺が会議で帰宅が遅くなることが多い木曜日だった。
愛情ではなく同情からだという。
「エッチもしたのか?」
俺が聞くと、健一が足でしてくれと頼んできたという。
健一はドMの性癖なのだそうである。それで個室病室の
椅子に健一を座らせ、嫁子の素足で健一のペニスを刺激して
逝かせたというのである。俺とのセックスでは、一度も
足ではしたことはなかった。俺は腹を立て、俺にも
同じことをするように嫁子に言った。
嫁子は俺に床に寝させ下着を脱がせると、素足で俺のペニスを
マッサージした。健一とは昔交際していたとき、
よく足の裏で健一を逝かせていたそうである。
変態なドM野郎だと思ったが、嫁子のマッサージは予想以上に
上手だった。椅子に座った嫁子は、両方の足の裏の土踏まず
の部分で俺のペニスを挟むと、器用に足を動かした。
最初はゆっくり、次第に早く、途中では円を描いて・・・
「あたしの足で、こんなにおちんちんが喜ぶんだー、あたし、
見てみたいなー、あなたの精液が出るとこ、あたし、見てみたいなー」
俺はその声を聞くとすぐに逝きそうになった。
「おちんちんがビクビクしてきた、うわっ、あつーい、
あたしの足に精子いっぱい出てるー」
それから、毎夜、嫁子から健一としたことを聞き出すのが俺の日課になった。
俺と嫁子は小・中学校の同級生である。だから、嫁子の性格もよく知っている
と思っていた。でも、それは間違いだった。嫁子がドSの性癖であることに、
俺は今頃気が付いたのだった。 (続く)