寝とられ体験、のつもりで皆さん、自分もですが、拝見してるのでは?自分はそうですが!体験談!小説!どちらにしても読む気無くして終いますね!余りにもお粗末な…
第二十九章九州では桜の開花宣言が出されたその日、春先にしては汗ばむほどの陽気の中、田中君と美佐君が我が家を訪れたのは午後二時を回ったあたりでした。私が玄関で二人を出迎えリビングに通します。妻は愛想のない態度を隠そうともせず、テーブルに紅茶を注いだ白い陶磁器を並べました。「はじめまして。高橋美佐と申します。」深々と頭を下げる美佐君。妻は一瞥をくれただけで「こんにちは」と素っ気なく一言返し早々とキッチンに引っ込んでしまいました。私は早くも冷たい汗が首筋を伝うのを感じました。美佐君には、妻と田中君の意向は伝えていませんでした。なので、彼女が今日設けられたこの場に臨む気持ちと、我々三人のそれとの間に大きな乖離があることを知らないのは美佐君一人でした。早くもその違和感を察したのか、美佐君は椅子に腰を下ろしながら上目遣いで私に不穏な眼差しを向けました。私はいたたまれなくなり、とっさに目をそらし口を開きます。「暑いね、今日は。なにか昼間から一杯飲みたくなってきたな。由美、冷蔵庫に冷えたビールがあっただろう。田中君たちも、よかったらどうだい」キッチンで洗い物をしているらしき妻からの返答はなく、重苦しい沈黙が流れました。気まずさに耐え切れなくなったのか、田中君がティーカップに手を伸ばし、紅茶をすする音が室内に虚しく響きます。「あの」美佐君が、背を伸ばしたまま私を見つめ口を開きました。「西村さん、お話が違うっていうか、そもそも話がまとまってないんじゃありませんか?」図星の指摘に加え、冷たい眼差しで射抜かれた私は何も言えず俯いてしまいました。「まとまるわけないでしょう」背後から妻が発した威圧的な響きの声に、振り向きたくなるのを我慢してうつむいたままの姿勢を維持しました。「やっぱりこうなるか」心の中で後悔しましたが、先には立ちません。「どういうことですか、西村さん」再び美佐君が私に向けて問い詰めるのを、うつむいて聞くしかできない私。おそらく顔色は蒼白を通り越して真っ青になっていたことでしょう。「高橋さんっておっしゃったわね。あなた、いくつ?見た感じ、高校生でも通じそうですけど、もうすぐ成人になろうって年齢なんでしょう?」「そうですけど」妻の挑発的な口調に、美佐君も挑戦的な視線で返します。「高橋さん。あなたのお母様もたぶん、私とそう代わらないお年だと思うの。だから、これは親の小言だとおもって聞いてください」これまでの問い詰めるような口調から一転、急に柔らかな声で説いて聞かせるように話す妻の豹変振りに、思わず「上手い」と膝を叩きそうになりました。緩急を使って彼女を説得しようとする猛獣使いの思惑に気づいた私は、ほとんど尊敬の眼差しで妻を見つめていたとおもいます。「もっと、自分を大切にしてほしいの。あなたみたいに綺麗で清廉なお嬢様が、田中君のような誠実な彼氏と純粋で実直な恋愛関係を育んでくれたら、これ以上のことはないと、きっとあなたのご両親もお考えになるんじゃないかしら」「純粋、ですか」「そう、私もそうだったからわかるけど、あなた位の年頃って自分にも自信があるから。もっといい相手がいるんじゃないかとか、なんていうか、常に満足できないまま目移りしちゃうことがあると思うのね」「はい」「でも、実際はそんなことなくて。私くらいになると思うの。本当に自分に合ったパートナーとか幸せって探すんじゃなくて、気づくものだと」そこに田中君とのセックスは含まれているのか、私として気になりましたが、まさかこの場で問いただすわけにもいかず、黙って聞いていました。「なんだか、幸せの青い鳥みたいですね」「そう、そんな感じ。だから、ね。田中君っていう素敵な彼氏を大事にして、二人の幸せに気づいてほしいの。聞けば、田中君も今回の話にはあまり気乗りしていないっていうじゃない。それなのに彼の気持ちを無視して、あなたの望むようなことをしたって、この先二人の関係にいいことはないような気がする。」「そう、ですね。私にとって田中君が一番大切なことは間違いありません」「でしょう。そのことに気がついてくれれば、どうすればいいかわかるわよ、ね」「はい、わかりました。私がどうかしてました」やけに従順な美佐君の様子が却って気になりました。「よかった、わかってくれて。見た目通り、聡明なお嬢さんでよかったわ。ありがとう。」妻は自らの説得工作が成功したことを疑ってないようです。「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした」「さぁ、気を取り直して、食事にしましょう。支度はできているから、座って待ってて」妻を除く三人が席に座り、冷えた紅茶を飲んでいると、五分もせずにテーブルには料理が並べられました。最初は重苦しい雰囲気だったのですが、アルコールが回るにつれて次第に四人の口も滑らかになり、料理の殆どが各人の胃の中に放り込まれたころになると、随分とにぎやかな宴席をなっていました。この頃になると、私の美佐君に対する猜疑心もかなり薄まり「このまま丸く収まってくれるのかな」などと、後から考
...省略されました。