第十七章どのくらいの時間が過ぎたのでしょうか。先ほどまでの狂乱の宴が嘘のように、室内は静まりかえっていまいた。聞こえるのは妻と田中君の、長く太い息遣いだけです。私はというと果てた後の余韻に浸る間もなく、これから起こることを一瞬でも見逃すまいと息を押し殺して二人の様子を見つめていました。ベッドの軋む音が沈黙を破りました。全身を汗で黒く光らせた巨大な筋肉の塊が、薄明かりの中、上半身を起こしました。ひとつ大きく息を吐くと満足そうな笑みを浮かべ、繋がったままの白い裸身へ再び自らの体を重ねると、妻の唇を奪いました。他人棒に犯された後の、初めて見る妻と他の男とのキス。妻は目を閉じたまま、自然に彼の唇を受け入れました。最初は唇同士を軽く触れあわせるだけでしたが、次第にお互いの唇をむさぼるようになり、やがて濃厚に舌を絡ませるディープキスとなったころには、二人の姿は愛し合う恋人同士のようでした。その姿に、後頭部がしびれる様な快感を覚え、私の愚息は三度固さを取り戻していました。「ああ、また固くなってきたわ」妻は唇を離し、深い吐息とともにそう漏らします。それが私の愚息を指してのことでないのはすぐにわかりました。「すごいわ、若いのね」「ああ、奥さん。僕、また」「待って、このまま続けたら破けちゃうわ。ゴムを付け直さなきゃ。」再び猛獣使いの美女とライオンの関係に戻ったのかと、その時は思ったのですが、それが思い違いだったのを思い知らされるのはこの後のことです。彼は妻の言いつけどおり彼女の中の巨根を引きぬきます。ズボッという音が聞こえたような気がしました。「ああっ」抜くときですら妻に声を上げさせる愛液まみれの凶棒は、力強く血管を浮かび上がらせたまま少しもその勢いを失っていませんでした。「ああ、もう、こんなになって」潤んだ瞳で、妻はもう待ちきれないとばかりにゴムを引き抜きました。「すごい。いっぱい出たのね」大量の精液を含んだゴムを目の前にかざしながら、妻が甘い声を漏らします。「奥さん、ひとつ教えてもらってもいいですか?」「なあに」ゴムのふちを縛りながら妻は答えます。「さっき、奥さんが『いや』とか『だめ』とか『壊れちゃう』って言ったときのことなんですが」「いやだ、私、そんなこと言ってたの?ごめんなさい、正直、夢中であまり覚えてないの」妻は、顔を真っ赤にしながら田中君のそばから離れ、ゴムをベッドサイドのゴミ箱に落としました。「いえ、そのときは僕も夢中で。だから、ほんとは止めようと思ったんですが、つい勢いのまま続けてしまいました」ゴムを名残惜しそうな表情で捨てる妻が顔を上げた瞬間、ベッドサイドの床に跪いたままの私と目が合いました。「あら、いたの」とは言いませんでしたが、妻の表情はそのとき初めて私の存在を思い出したかのように見えました。続けて「あなたが悪いんだからね」とでも言いたげに、上目づかいで私をにらんだかと思うと、振り向き、再び田中君のそばに身を横たえたのです。初めて見る妻の挑発的な表情に、背筋がゾクゾクッとするような興奮を覚えました。田中君は続けます。「あの時、あれでよかったのか、それとも止めたほうがいいのかがわからなくって」「そうね、あなたは知らないかもしれないけど『嫌よ、嫌よも好きのうち』なんて言葉もあるくらいだから、難しいかもしれないね」「その言葉はきいたことあります。あの、実際、前の彼女にも拒絶された時に、その言葉が頭にあって。それで強引に続けていたら、すごい怒られて。それも上手くいかなかった原因のひとつなのかなって」ベッドの中央で、お互いの一糸まとわぬ裸体を隠そうともせず、肌を密着させて見つめ合いながら語り合う二人の姿。それは誰が見ても恋人同士にしか見えなかったと思います。実際、妻はこのとき初めて田中君のことを「あなた」と呼びました。「そのときのことを思い出してみて。それと、最初に私が『ストップ』って言ったときとさっきの私と比べて、違いがわからないかな?」「言われてみれば、なんていうか、ほんとに嫌なときは奥さんも彼女も言い方が鋭いし、表情も険しかったような気がします」「そう、そういうことよ。結局、感覚の問題なんだけど、声とか顔とか力の入れ具合とか、いろんなことを観察して判断するしかないと思うのね。でも、あなたは十分見えていると思うわ、大丈夫、自信もって」「はい、ありがとうございます。じゃあ、この後は、奥さんが『だめ』って言っても続けていいですか?」「この後って。あら、まだまだ元気みたいね」妻は放出後も全く固さを失わない田中君のペニスに目をやると、口元を緩めて手を伸ばしました。「ああっ、はい、奥さんが嫌でなければ」「嫌じゃないわ。ここまできたら、私のこと、田中君の好きにして」そう言って枕もとのゴムの袋に手を伸ばすと、待ちきれないように袋を引き裂き、自らの両手で彼の怒張にゴムを被せたのです。「ああ、もう我慢できない、早く、入れて」
...省略されました。