私の両親は私が中学生という多感な時期に離婚しました。
私は母に引き取られ母方の実家に弟と3人で暮らし始めました。
離婚原因を母から父の浮気と言われ、生活環境の変化や色々な事の原因を作った父を激しく恨んでいたのを覚えています。
母もそうでしたが、祖父母からも父への非難の言葉を聞かされて育った私や弟は当然の結果父親を嫌い、月に1度の面会さえも拒否をし関わる事を避けていました。
本当に大好きで尊敬していた父をあそこまで嫌悪できたのはそんな環境にいた事が原因だったと思います。
そして今から5年前、私が高校2年生の頃に母が再婚しました。
父のせいで母も苦労したんだと思い、弟と2人して母を祝福したのを覚えています。
当時母は43歳で、まだまだこれから女と言える年齢です。複雑な気持ちもありましたが祝福の気持ちの方が大きく、母を冷やかしながら喜んでいました。
相手の方は52歳の良くも悪くも普通のおじさんで、何でも職場の関係で知り合ったと聞きました。
しかし、そんな幸せな時間は長くは続きませんでした。
それは忘れもしない、母が再婚して向かえた年の終了式の日でした。
その日、学校から帰ってきた私に中3の弟が何とも形容しがたい顔で話しかけてきました。
『純也(私)・・・今日さ・・・ばあちゃんに会ったんだ・・・』
「ばあちゃん?」
『うん・・父ちゃんとこの・・』
「あいつのとこの?」
その頃の私は、父の事を”あいつ”とぞんざいに呼び捨てていました。
あの頃の自分を殴り殺してやりたい程のつっぱった態度でした。
「で、何て?」
『うん・・・なんかね・・とうちゃん・・死んだってさ』
正直父の事なんか忘れかけていた私は、久しぶりに聞く父の話に一気に不機嫌になっていましたが、弟の口から出た衝撃の言葉に私は思考能力を完全に奪われました。
「いつ?」
『去年』
「・・・・・」
『それでさ、ばあちゃんが1回線香あげに来てくれないかって・・・・どうする?』
「・・・・・・」
その場で答えを出せなかった私は弟と相談し母に話してみる事にしました。
その晩、義父は残業で居ない食卓で3人食事をしている時に私から切り出しました。
「母ちゃん、今日さ健司(弟)のとこに渡辺のばあちゃん来たんだ」
『渡辺の?いつ!!何しに来たの!!』
母のあまりの剣幕に一瞬たじろぎましたが話を続けます。
「とうちゃんが死んだから線香あげに来てくれって・・・」
すると母から信じられない言葉が返ってきました。
『何言ってるの!!あの人と私達はもう縁が切れて関係ないのよ!!線香あげるなんて・・・駄目よ!!』
「で、でもさ・・・」
『渡辺のお義母さんもズルイ人だわ!!あれだけ断ったのに健司の所に行くなんて!!昔からそうよ!!あの人と来たら常識がないんだから!!』
取り付く島もない母の剣幕に圧倒されてしまい話はそこで終わってしまいました。
しかし、なんだかスッキリしない母の言葉に違和感を覚えた私は、その週の日曜日に父方の実家を1人で訪ねたのです。