はるか昔の遠い記憶。でも鮮明な記憶。
携帯どころかポケベルもまだ皆に行き渡る前の話です。
とある専門職で既婚者だった俺は当時32歳。
四国から大阪へ帰り、転職することになった。
あと2ヶ月ほどでその職場を去ろうかという時に職場のサークルの呑み会があった。
男メインのサークルだったが、事務職の女の子数人がマネージャーと称して花を添えていた。
恭子当時24歳もその一人だった。
皆が振り向くほどの美人とは言えないけどハキハキしてて、目もくりっとした愛嬌のある女の子だった。小柄だけどでも出るところは出た肉感的な感じ。
ただすでに人妻。同僚の真面目なやつと結婚していて当時妊娠7ヶ月も過ぎ、あと少しで産休入りとという頃だった。
職場自体は女性が多かった。俺はやんちゃもしていて職場内で何人かと関係を持っていた。その中の一人の話では恭子は性的にも真面目で初夜まで身体を許さなかったと聞いていた。
旦那は旦那でこれまた純朴な田舎の青年タイプ。結婚まで女性との付き合いもなく、結婚は処女と童貞カップルだったらしい。
そんな職場結婚のカップルだし、恭子はちょっと気の強いところもあって怒らせると怖くもあった。なので無理して手を出す気もなく、今回の呑み会も特別の期待もなく、淡々と参加したのだった。
一次会は退職の挨拶などもして無事終了。二次会はお決まりのカラオケ。そしてたまたま恭子と隣になった。
下心はなかった。その時は。
全くなかったと言えば結果的に嘘になるかもしれないけど。まじめにそんなことは考えていなかった。
もちろん妊婦の彼女はシラフ、私はというとそこそこ出来上がっていて、気持ちも緩んでしまったのかちょっとエロモードに。
カラオケとおしゃべりで隣の話も聞こえないのでお互いの耳元に話をする感じ。
そんな中たまたま手がちょっと触れてしまった。
それでスイッチが入ってしまった。持っていた上着でさりげなく隠しながら彼女の左手に私の右手を重ねてしまった。
彼女は逃げない。
試しに少し握るとかすかに握り返してきた。
えっ、いける?? いけるかも?
さらにそして囁いてみた。
「いろいろお世話になったね。いざ職場離れるとなると寂しいわ。今さらだけどいっぺんデートしたかったなぁ」
世話になったのはホント。彼女は私の仕事のアシスタント的な仕事もしていたので大変世話になった。
とはいえベタすぎる言葉だ。同じ呑み会に旦那もいるし、社交辞令で逃げられる範囲で反応見てみたのだった。
するとなぜか反応が良かった。
「やっぱり行っちゃうんですね。私も寂しいです。挨拶聞いてホントにやめるんですねって」
暗いのではっきりはしないけど若干潤んだ瞳のようにも。さらにいけるかも?
周囲にバレないよう服で隠して手を強く握った。
すると恭子もしっかり握り返して来た。
「ほんとは俺さんのこと好きだったんです。でも奥さんいるし、諦めてました」
だって。
そこからは俄然やる気に。
「じゃあ思い出づくりにデートしようよ。大人のデート」
思いつめたように考える恭子。
「ダメです。結婚してるし、妊娠してるし・・
それに・・一人で夜は出られないし」
「それに」の後の間にひとかけらの望みを残しつつも一瞬でも期待させといてそれはないよ、とがっくりもした。
それでも、もう一押ししてみた。
「でももう会えないよ。なんとかならない?」
恭子はしばらく間を置いて言った。
「わかりました。今度旦那が当直の日があるの。その日食事ご馳走するから食べに来てくれませんか?
でも食事だけですよ。」
なんだこの展開は。
びっくりしながらも、よっしゃ、もらったと心の中でガッツポーズ。
やる気の出た俺は調子に乗った。恭子のむっちりとした太ももにも手を伸ばしストッキングの上からゆっくりと撫で回す。
恭子はモジモジしてはいるが、嫌がってる様子もなく払いのけることもなかった。
でもこう言う時こそ肝心、まずはみんなの動向に注意を払うのが大事だ。あたりを見回す。
旦那は愛する妻を見ることもなく、談笑している。よしよしこれでいい。
そして時々耳元で「手料理楽しみ。そして恭子が欲しい」とささやいた。
「食事だけですよ、俺さんの好きなもの作りますね、何がいいですか?」
ってあくまでも食事だけにするつもりのようだが、こっちはそれで終わらせる気など毛頭ない。
予習のつもりで太ももと手を撫で回したりしながらあれこれ口説きの言葉を少しずつ囁いた。
しかし、大人のデートなしとは言いつつ、家に招いてくれるのはホント何言ってるかわからない。
まああとで聞いたら当直の日も必ず旦那から電話があるから家から出られない。
だから家に招いてくれることにしたらしい。
いずれにしてもこんなチャンスないわけで。
嬉々として当日を待った。