その当時は、その出来事に直面している当事者であったので今とは感覚も受け止め方もまったく違いますが、思い起こせば(よく平気であんなことやってたよな)と呆れてしまう体験をした事があります。
今から5年前、僕が26歳の頃の話です。当時の僕は何を思ったのか・・・新しい趣味を始めようと急に中古のクラリネットを買ったんです。クラリネットというのは木管楽器という種類の笛なのですが、縦笛やピアニカとは違い、専門的な技術と知識が必須となる楽器であるというのは、楽器の形状からも見て取れる事だと思います。
それを中古で4万で購入した僕は、とりあえずそれを趣味として独学として練習していた時の事なのですが、知人が「俺の知り合いにクラリネットとかフルートもそうなんけどプロの人知ってるぞ」と紹介をされたのです。
とりあえず僕は「へー、是非一度会ってみたいものだな」と返事をしたのですが、それがあのメンヘラ夫婦との出会いの前触れだったとはこの時、気が付いていませんでした。
僕は知人に、その「先生」と会う日を設定してもらい、初日から「自宅に来ていいよ」と言ってるぞ。との返事をもらい、教えてもらった住所へと足を運んで行ったのです。
僕の家から自転車で30分。その先生の家は見た目は一見、普通の建売住宅。中に入ると、、、ゴミ屋敷一歩手前の散らかった環境だったのです。
(まー、、芸術家とか音楽家って変わり者が多いっていうしな。。)くらいにしか考えていませんでした。
そして先生の名前は「元村」という名前であり、年齢は当時39歳くらいだったと思います。ですが、見た目はもう完全なオッチャン。中年体系で腹が出てジャンクフードと酒が好きという、見た目も中身もオッチャンそのものだったのです。(楽器演奏の腕はやっぱり一流でしたが)
その奥さんも、同じ〇〇フィルハーモニー管弦楽団という楽団で知り合ったピッコロ奏者の女性であり、奥さんのほうは年齢30代前半くらい。このオッサンには勿体ないな、、って思える感じの華奢な女性でした。
それから僕たちは、そのオッサン先生の家で、オッサン先生が若かった頃から今に至るまでのオーケストラでの演奏のビデオや、数々の受賞した表彰などの自慢話に付き合わされ、クラリネットの練習・・・というよりかは、ただオッサン先生の都合のよい話し相手になっている僕の姿があったのです。
(なんか変だぞこの家・・)
既に書いた通り、部屋、いや家全体が散らかっている。家電製品はだれが見ても分かる型遅れのリサイクルショップ等でかき集めたような年期の入った感じばかり。リビングにあるピアノの上には雑誌や古新聞が山積みに乗せられている。床やそこらには謎のタオルのような物体とか、毛玉のついた片方だけの靴下とかが落ちてたりするんです。
雰囲気からして、僕が最初にイメージしていた「高貴な音楽家夫婦の邸宅」とはまったく違う光景がそこあったのです。
オッサン先生は焼酎を飲みながら僕に「タバコ持ってる?」とか聞いてくるし、そこそこ美人な素質を持っている奥さんは、ノーメイクでヨレたTシャツにありきたりなスキニージーンズ。これといって遠くから「じー」と見てくるだけで会話に参加してくる気配もない。
答えを言ってしまえば、、、メンヘラ夫婦だったのです。そして生計の手段は福祉・・・だそうでした。
メンヘラ、、それはオッサン先生は自称、、鬱病だそうでした。本人曰く、「今はわりと改善してるんだけどな」といいますが、全てにおいて胡散臭い。また奥さんのほうは、オッサン先生曰く、「不安神経症」と言ってました。
この夫婦はもともとはそうではなかったのは理解できました。オッサン先生の過去の栄光のビデオや結婚式の風景を見ていると、オッサン先生は以前はスタイルもよく、見た目も鮮麗された男だったのです。奥さんもドレス姿に楽器演奏していてアップスタイルの髪型からメイクから超美人。結婚式のときも由緒ある神社で神式のやり方で親族に見守られて盛大な結婚式を挙げている写真があったのです。
それがなぜ、今こんなに没落してしまったのか、、オッサン先生の言葉を信じるなら、「音楽でメシ食ってたんだけど、ストレスもあってヨメハンと同時期に鬱と神経障害にかかって二人とも仕事から離れたんだよ」としか聞いていませんし、それ以上を追求する気にもなれませんでした。
それにしてもこのオッサン先生の情けないところは、とにかく金がない。
そんな人間との交際なんてやめればよかったのですが、当時は僕も若くて勢いもあり、楽器演奏の腕だけは確かなオッサン先生を師と仰ぎ、それから(相手はいつも家にいるので)僕が暇な時に酒や食べ物を持って家に遊びに行く習慣がついてしまったんです。
最初の頃はまじめにクラリネットの練習とかもしていたのですが、だんだんと酒飲み友達みたいな感じになっていき、オッサン先生はいつも「タバコくれ」と「金貸してくれないか?」とよく言ってました。金といっても2000円とか5000円とかなので普通に貸してあげてましたが・・・。
挙句の果てにはオッサン先生は、自分が持っている唯一の隠し財産である、プラチナ製のフルートと、若いころに使っていた総銀製のフルートのうち、総銀製のフルートのほうを僕に20万で買ってくれとか言い出し、(中古で普通に買うと50万近くするので)僕はフルート奏者ではありませんが、総銀製の重厚感に一目ぼれしてしまい、またオッサン先生が毎月2万のローンでもいい。との事なので購入する事になったのです。
オッサン先生と付き合いが深くなっている事を感じてきた頃合いでもありました。
さらにオッサン先生はフルートを僕に売って毎月2万の臨時収入を確保しただけでなく、、酔っぱらいながらこんな事まで言い始めたのです。
オッサン先生「内緒なんだが、ヨメハンのでよければエロ画像(動画も)のセットも買ってくれないか?」
大輔「へ?Www 奥さんのエロ画像ってなんすか?W」
オッサン先生「金ないからさ、売れるものといったらこんなのしか思いつかないんだけど、いちおういい女だとは思ってはいるし、大輔に問題がないならハメ撮りしたやつもあるから買ってくれないかって思ってな」
大輔「まぁ、、たしかに奥さんはキレイな人ですけどw それをなぜ僕がハメ撮り動画なんて・・w」
オッサン先生「無理にとは言わないけどな。もしよければの話だよ」
大輔「一応聞きますけど、どんな画像なんです?」
オッサン先生「やってる行為の中で合間、合間にとった画像とか、、ベッドの上に定点カメラで設置した動画とか、、そんな感じだよ」
大輔「それをいくらで?W」
オッサン先生「いっても自分のヨメハンのだからな。。せめて5万はほしいな」
大輔「5万ですか・・w」
結局、僕はそれを相手を助けるという意味も込めて買う事にしたのです。だって奥さんは、今でこそノーメイクでヨレたTシャツで積極的な人間関係をやめてしまった人ですが、女性そのものとしてみれば、まったく悪くない人だったからです。
オッサン先生はそのハメ撮りデータをUSBに入れたものを僕に手渡してくれ、、僕はそれを家に帰ってから観賞してみたのでした。
これが・・・オッサン先生夫婦と越えてはいけない壁を越えてしまった最初の一歩になってしまうのでした。
続く。