私の息子が通うバトミントン教室、保護者会が有り、どこでも同じ様に積極的なのは母親達。
年に何回か保護者会と称して飲み会が開かれる。
その日は家のカミさんの都合が悪く代わりに私が参加した。
保護者に指導者を含め30~40人くらいの集まり。
その大半が女性で男性は指導者を含め何人かの少人数。
中華料理店の大広間を借り立食での飲み会。
少し酔い始めた頃から会場は賑やかさを増し、所々でグループが出来始める。
私が指導者の一人と話しをしていると。
「あの~暖暖暖暖君のお父さんですか?」
と声を掛けられる。
私は頷き挨拶をすると、その女性は自己紹介を始め夏美と名乗った。
「家の子が暖暖暖暖君は凄く上手で羨ましい」
と何時も話してる…と息子を褒めて来る。
悪い気はしないが、家の息子は、どちらかと言えば運動音痴だと私は感じていて、動体視力を養う為にバトミントンを習い始めさせた。
眼鏡を掛け30代後半と思われる夏美さんも、アルコールが少し回ったのか、ほんのりと頬が染まっている。
自然と話も弾み、私は息子が、もう少し大きく成ったら私の趣味であるゴルフも教えたいと話した。
ゴルフ…その言葉に彼女も、実は私もゴルフを始め練習場に通ってるとの事。
共通の趣味を持つ事で、更に話が盛り上がり私達は会場の隅の椅子に座り話に夢中に成る。
3時間近くの飲み会も、そろそろお開きと成り、二次会に誘われるが、私は遠慮した。
春とは言え夜の外は未だ少し肌寒い。
家までは歩いて10分か20分…
店を出た私は近くの自販機で温かい飲み物を買う。
ガタン…と音がして取出し口に飲み物が
「こんばんは」
その音に混じり夏美さんの声。
「あれ?二次会じゃ無かったのですか?」
「止めました」
笑みを浮かべ彼女が言う。
私は頷きながら
「奥さんも何か飲みます?」
と聞くと、嬉しそうハイと頷く。
所々にしか無い外灯の下を並んで歩く彼女は温かい飲み物を両手で掴み
「温かい…」
と嬉しそうな声を挙げる。
「桜も満開に近づき綺麗ですよね」
私の声に彼女も頷き
「そうそう…この先の公園の、枝垂桜も凄く綺麗なんですよ、ちょっと寄ってみません」
と彼女が言い出す。
さほど広くない公園の真ん中に一本の桜の木が花を咲かせ咲き誇ってる。
彼女は、外灯に浮かぶ桜を眺めながら綺麗…と感嘆の声を挙げる。
肩を並べるように寄り添い眺める桜…
周りには誰もいない。
私達は桜の周りを一周して桜を眺める。
桜を眺めながら
「今度、私にもゴルフを教えて下さい」
彼女が言う。
何時も一人で練習に行く私には何の異存もなく
「是非ご一緒に」
と言う。
その時の彼女の表情に思わず見惚れてしまい、彼女を見つめると、彼女は恥じらいの表情を浮かべ、はにかむように微笑む。
「でも笑わないで下さいね私、本当に始めたばかりで下手なんです」
他人の奥さんながら、本当に可愛い女性だと思ってしまう。
手にした飲み物が空に成りゴミ箱に持って行き投げ入れる。
そこは公衆トイレのすく脇であった。
トイレが陰に成り足元が良く分からず、彼女は無意識に私の腕を取る。
木の根が張り出し足元が危ない。
私は彼女の身体を支えるように元の歩道に戻る。
コートの上からでも分かる彼女の柔らかな感触。
私は彼女から手を離す事を忘れたかのように、彼女を引き寄せてしまう。
彼女も抗う事もなく私に寄り添う。
淫な感情が昂ぶり、私の脳裏で悪魔が囁く。
後僅かで公園を出ると言う時に
「帰る前に、もう一度、桜を見ておきません」
彼女が呟くように言う。
「あ…ぁ、そうですね」
私の気持ちが見透かされたような動揺に襲われながらも、彼女に回した手で歩く方向を変える。