トイレの前に行くと、女子トイレの方から 生活疲れといった感じのやつれた40代ぐらいの主婦が出てきて 目が合う。
よく見かける茶髪のミニスカおばさん。
つい目を背けて、トイレに入りおしっこをする。
(今日は、よく出たし……。)
そんな事を考えながらおしっこを終え、 お店から出るとあのおばさんが店の前で立っている。
誰が待ち合わせでもしてるのかなぁと チラっと見て、ポケットからタバコを取り出し、 火をつける。
「あのー彼くん」
「は・・はい」
「三万でどうですか?」
俺は一瞬頭が真っ白になってしまう。
「あ……高いですよね…… 二万でいいです……。」
「二万?」
「一万でもいいですけど……」
「ちょっとちょっと待ってください。 売春するって事ですか?」
「は……はい。 そうです。すいません、えっと、そのお金無くて……。」
おばさんは下を向いて、上目使いで どうですか?とモジモジしている。
「あのーダメですかぁ?」
おばさんは妙に甘ったれた声で見てくる。
正直言って、妙にそそられ見ていたのは事実……こんなこと滅多にないチャンス。
「わかった、一万円ならいいよ」
おばさんの顔がパっと明るくなる。
「はい、一万円でいいです。 あのーでもホテル代はー、そのー 払ってもらえますか?」
「いいよ、いいよー」
「じゃあーあっちのホテル街の方に行きますか?」
「はい」
俺はおばさんの手を握って歩き出す。
「小さい手だね。」
「は・・はい、ありがとうございます」
おばさんは手を繋いで行くとは思っていなかったのか、 妙にぎこちない歩き方になっている。
妙に楽しくなってきてしまう。
「名前は何て呼べばいいかな?」
「幸枝です・・」
「幸枝さん」
「はい、あのー私は何て呼べばいいですか?」
俺は少し迷ってしまう。 本名言うのも怖いし……。
そうだ!
「よしきです」
「よしきさんですか?」
おばさんが頷いてくれると、 握った手に少し力を込める。
おばさんは恥ずかしそうに、 また下を向いてしまう。