まだ、東京が今ほどの猛暑ではなく二つ折り携帯が主流だった頃
朝の通勤時に出会う女子高生に淡い恋心を抱いていたことがある。
背が高く、黒くて長い髪の毛に色白の肌…真っ黒な瞳。
いつも僕の乗る次の駅から乗ってきて一番前に並んでいたその子は
やはりドア際にもたれていた僕の真正面に乗り込んでくる。
そのまま身動きできないほどの混雑さに圧されながら
終点の駅までの共にする10数分間は、毎朝の僕のわずかなときめきだった。
その彼女と、この夏、再会するとは…いや、再会できるとは思っていなかった。
彼女にしても信じられないという表情をしていた。
覚えていてくれたんだ…いや、忘れるはずが無かった。
それは、彼女にしても同じことだった。
そんな話ですが…需要ありますか?