「…。」
女の帰宅後、当然のようにカルテの整理を進めていた。
都合の良いカモを見つけた悦びとは裏腹に、だからこそ慎重に、徹底しなければいけないと男は相反する想いを共存させていた。
最悪は以後、女の名前で予約がない事…ではない。
些細な違和感、削り切れない理性が正常に働き生まれる、不信感。
そこから妙な噂が広まり、仕事に支障をきたすことが最悪。
事と次第によっては、社会的な死のリスクは当然付きまとう。
このような行為に踏み込んだのはこの女が初めてなわけではない。
だからこその徹底、中途半端な勢いのまま攻めてリスクを侵すくらいなら、ここでもう関係が切れることもいとわない。
実際、そのような形で連絡が潰えた患者、あるいは患者の関係者も少なからずいた。
だからこそ…。
馬鹿は求めていない。
欲しいのは、妄想が独り歩きする思考が追い付かない、頭の弱い女だ。
信頼、信用、陶酔、崇拝…。
盲目的に医師という職業を信用し、関係性の深い医師にこそ信頼を置いていく。
重要なのは、求められることに応えな良ければいけないという感覚を持たせることではなく、
全て自分たちの為なんだという感覚を身体に、脳に沁み込ませなければならない。
上手くいかないのは自分の所為、なのだと…。
一度そのような思考に陥れば後はそう難しくない。
同じような状況に陥った時にまた思い出す、あの時もそうだったじゃないか…と。
数日後か数週間後か、あるいは数カ月後かはわからない、
しかしまた、長島果歩、名で予約が入ることは確信していた。
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翌日、患者の予約リストを確認すれば口元も緩む。
(来週…、それも朝一番じゃないか…。
確か夫婦共働き、と言っていたはずだが…、たまたま休みだったのか…。
いずれにしても、そのたまの休みにこのプログラムへの再戦、を優先したという事か…。)
カタカタカタ…。
早々にPCに赴くと、予約リストを修正。
週明けの早々の予約を修了させた。
あまり過剰な行為は避けたいところだが、それも開業医の強み。
余計な邪魔の入りえる環境では、最も優先したいことを優先できない。
多少の本業を疎かにしたとて生活に支障はない。
「少しのカウンセリング…、その後の続行…、と行こうじゃないか…。奥様…。
いや…、長島…果歩さん…。」
脱ぐことを理解した上での来院、女はどんな服装で、どんな下着を着けてやってくるのか。
ある意味男にも楽しみが増え、その日を向ける。
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女以外の予約のないその日はガランとしていた。
予約さえ入れておけばマイナンバーカードでの受付、待合室で待つのみ。
便利な仕組みがここでも役に立つとは。
受付係は暇を与えていた、そう、その日は男と女が二人きりになる。
そして…
「長島さん、長島果歩さん…、第三診察室にお入りください。」
【確認で記載させていただいてよかったです。
難しいですよね、相手の意図を汲み取るのは。
ですので、果歩さんも気にせず何でもおっしゃってくださいね。
些細な質問でも結構ですので。】
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