前置きもそこそこに本題に入る男。
そこに緊張を和らげるような話題を持ってくるのも、少し違うだろう。
EDに対する捉え方はそれぞれ。
仮に、それを気にしているのが夫だけだったすれば、夫婦での来院はない。
少なくとも夫婦で足を運んでいるということは、長島のEDは夫婦にとっての問題と重く認識しているという事。
それが子宝を求める故か、快楽的な意味合いを孕むのかは定かではない。
しかし、その緊張を和らげることが正ではないと思える状況なのは確かだ。
強張ったような雰囲気の抜けきらぬまま問いかけられたことで、女からの返答も少し掠れ、上ずっている様にも聞こえる。
緊張を和らげず話を進めるというのは、余裕を与えないという側面を持つ。
勢いのままにある程度進んでしまえば、無意識下で「そう言うモノ」という認識を植え付けることにつながることを、男は理解している。
「仰る通り。
ストレス…が、大半の原因になりうる中でも理屈はとてもシンプルなケースが多いんです。
性欲…、興奮…、
ただただ、ご主人は仕事のストレスで興奮という物を感じられなくなっている可能性もある…という事です。
逆に言えば、ご主人に滾るような興奮を再び呼び覚ますことができれば回復の兆しとなるのではないか…、そう考えているんですよ…。
もちろん、あくまで可能性。
そう簡単な話ではない、ということは念頭に置いたうえで…ですがね。」
抑揚のない話し方は、よく言えば説得力があり、悪く言えばどこか他人事のように聞こえる。
同じ内容を話すのしても、相手の性格や価値観、置かれた状況によって正解にも不正解にもなりうるということ。
男は意識してこの話し方を選んでいるが、果たしてこの「長島果歩」には効果的かどうかというところもまだ見えない。
だからこそ、大げさにせず、事実ベースで話を続けることを選んだ。
否定するタイミングを与え、拒否するタイミングを与える。
促される状況であっても、自ら選んだということを自覚させる為に。
「インターネットの普及するこの世の中、手段はそう少なくはない。
探せば、興奮につながる要素、は五万を見つかるでしょう。
ただそれは、貴女方ご夫婦の為になるのかどうか…、そう言う話です。」
目的地に向かう道筋、右往左往しながら推測させるような口ぶり。
しかし、男はそろそろとばかりに結論に繋げる。
「回りくどいですね…、はっきり言いましょうか…。
果歩さん…、貴女が、ご主人を興奮させ…、再起…、再び勃起するように導くんですよ。
分かりますか…?
妻である、貴女が、ご主人を…興奮させる。
生殖器というのは、本来は雄と雌にもたらされるもの。
人間とて、大別すれば動物。
ご主人は治療を、貴女はご主人を興奮させる為の行為を学ぶ。
二人で取り戻しましょう…、理想の、憧れた夫婦を。
時間はかかるかもしれない。
プログラムは私が組みましょう、不確定な要素も多い、それでも、貴女がご主人のことを思うなら。
私も協力は惜しまない。
貴女が…勃たせるんです…。ご主人の…ペニスを…。」
徐々に露骨な言葉が並び始める。
勢いを最小限に抑え、淡々と話す。
馬鹿な女でないことは理解している、だからこそ言っていることを理解していると思いたい。
そして、その必要なことは自分にとってどれだけの羞恥を極めるモノなのか、想像できない中でも想定はできるくらいには。
【承知しました。
私の方は必ずお伝えするとお約束いたします。】
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