……美咲、ちょっと話があるんだけど……今、時間あるか?
リビングのソファに腰を下ろしたまま、俺は妻の美咲に声をかけた。
夜の9時過ぎ。子どもが家を出てからというもの、夫婦二人きりの夜は静かだ。美咲はいつものように台所で後片付けを終え、淡いベージュのルームウェア姿でこちらへやってきた。49歳とは思えない、穏やかで柔らかな笑顔。長年連れ添った妻のその表情を見ていると、胸の奥がざわつく。
美咲:
「え? どうしたの、急に真面目な顔して。仕事で何かあった?」
彼女は俺の隣に腰を下ろし、自然に俺の膝に手を置いてくる。責任感が強く、人当たりの良い市役所の職員らしい、優しい仕草。25年間、ずっとこうして支えてくれた。でも今、俺はその手に罪悪感のようなものを感じていた。
俺:
「いや……仕事じゃないんだ。美咲に、相談したいことがある。……変な話かもしれないけど、真剣に聞いてほしい。」
俺は少し声を落とし、目を逸らしながら続けた。喉が乾く。
最近、ネットで偶然見つけてしまったあるジャンルの小説や動画。
「寝取られ」——妻が他の男に抱かれるという、屈辱的で興奮するシチュエーション。最初はただの好奇心だった。でも、それが頭から離れなくなった。美咲の穏やかな笑顔が、他の男の腕の中で乱れる姿を想像してしまう自分が、怖いほど興奮する。
「美咲、俺たち、結婚して25年だよな。ずっと幸せだったと思う。でも最近、俺……自分の気持ちがわからなくて。
美咲が、他の男に……抱かれるところを、想像してしまうんだ。
最初はただの妄想だった。でも、それで興奮してしまう自分がいて……美咲に、こんなこと話すなんて最低だと思う。でも、黙ってるのも辛くて……」
俺はそこで言葉を詰まらせ、妻の顔を恐る恐る見つめた。
美咲の表情が、穏やかなまま固まるのがわかった。長い沈黙。彼女は自分の本音を長年しまい込むタイプだ。きっと驚き、傷つき、怒るだろう。でも、それがまた俺の胸をざわつかせる。
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