「…。」
車に乗り込み腕時計を確認する。
部屋を出る瞬間から車に乗り込むまでたったの五分。
自ら口にした通り、地下駐車場行きの直通のエレベーターに乗れば迷うわけもない。
ある程度プライバシー配慮のされたホテルのエレベーターは上昇のみと下降のみに分かれている。
上昇のみのエレベーターは下降時に乗ることは出来ず、下降のみのエレベーターは上昇の際に乗り込むことはできない。
部屋を出れば一方通行で各階で迷うこともない。
瑠璃子も同じ時間で降りてくる。
つまり、男が車に乗り込んでから瑠璃子が現れるまでの時間が、しばし部屋に残っていた時間と言える。
(五分…。)
別段急かす気はない。
が、どの程度でやってくるのかは楽しみのひとつだった。
誰にも会わないとはいえ、夫の目の前で下着を全て取り払い、素肌にワンピースという言わば布切れ一枚だけで知らぬ男の下へやってくる。
思い切るまでにどの程度の時間を要するのか。
(あの様子じゃ、下着を取ってこいと言われただけだから、などと言ってストッキングは履き直して来るとは考えにくい。
そもそも、そんな煩わしい女ならここへは来ていないだろう。)
さらに待つこと数分。
エレベーターの扉が開く。
万一にも迷わぬよう、エレベーターが見える位置に停車していた。
パッ、パッ、と数回ライトで合図。
余計な方向に歩いて、他人と出くわしても面白くない。
その数回、瞬く車のライトに照らされた女は一瞬、裸にも見えた。
それだけ心もとない服装であることは言うまでもない。
ゆっくり女の脇まで車を移動させ、助手席の窓を開ける。
「思ったより早かったね。行こうか…。」
カタンッ、と音がすれば助手席の扉が僅かに開く。
淫らな雌への片道切符、その入口が開いたかのように。
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