ピアノを弾くことに集中するあまり、背後から忍び寄る気配に気づかなかった。
どこかで聞き覚えのある声がしたかと思えば、突然大きな手のひらで口元を覆われる。
「ひっ…!」
声を上げる間もなく首筋に冷たい感触が走る。
背後から口を塞がれ首筋に刃物を押し当てられるという、今まで経験したことのない事態に体が強張る。
男の太い指から伝わる汗の臭いにも嫌悪感を煽られ、自分の身に起きようとしていることに恐怖と不安を感じていた。
ただ、私を襲った男には見覚えがあった。
用務員の松倉さん…長くこの学校に勤めている方という認識はあったが、あいさつ程度しか交わしたことがなく、自分がこんなことをされる理由が分からなかった。
しかし、知っている相手ということもあり、話せばやめてくれるかもしれないという一縷の望みに賭けることにする。
「ま、松倉さん…?どうしてこんなことを…やめてください」
背後に立つ松倉さんに目線をやり強く睨みつけるも、瞳には恐怖の色が浮かんでいた。
※元投稿はこちら >>