滲んだ視界の端に、女性隊員の姿が見えた。
辛い渦中にあったせいか、リズベットは同性の姿に少し安心したが、それは間違いであったことにすぐ気がついた。
アリスの冷たい叱責に、びくっと怯え、ふらふらと立ち上がる。
目つきは鋭く、まるで罪人を見るかのようなもので、貴族扱いはおろか、同性の同情のようなものも感じなかった。
家畜のようにホースからかけられる冷水で顔や胸元を洗い、タオルも与えられずに部屋を連れ出される。
廊下に出るのは抵抗があったが、アリスが警棒を取り出して脅され、怯えながら部屋から出た。
同じ地下には地下牢があり、そこに入れられた。
地下牢は何部屋か並んでいたが、誰もそこにはいない。他の獣人たちのことが気になり、格子にしがみついて、アリスに尋ねたが…
「あ、あの…、獣人のみんなはどうしていますか…?みんな、無事でしょうか…?」
裸に剥かれ、精を吐き出された直後に、自分以外の獣人を心配…。
そんな態度は、獣人によって兄を失ったアリスにとっては反吐が出るもので、警棒を格子に叩きつけて威嚇し、「質問ができる立場にあると思うな!」と一喝するだけだった。
アリスが立ち去ると、1人残されたリズベット。
鉄骨剥き出しの簡易的なベッドと、適当に置かれた桶だけ。廊下と部屋を隔てるのは鉄格子だけであり、プライバシーもクソもない。
昨日…、いや、今朝までは豪奢な屋敷にいたとは思えない落差だった。
ベッドに横たわると、体重が軽いリズベットでさえ、ギシッと軋む音がした。寒くも暑くもない、生暖かい地下特有の空気を感じながら、ぼーっと天井を眺める。
(みんなはどうしているのかしら…。シオン…、貴女は無事なの…?なんとかしてダーウェルを説得しないと…)
使用人たち一人一人の顔を思い浮かべる。
彼女たちの身を案じ、無事を祈るが…、ぶるっと少し身を震わせた…。
(そういえば、朝すぐにここに連れてこられたから…。でも、ここにはアレしか…)
視線の先にあるのは床に転がる鉄桶。
鉄格子の外、廊下からは室内は丸見えであり、もし誰か通ったなら…。
しかし、1人になった安心感もあって我慢ができず、結局、桶の上に跨った。
隠すものは何もなく、せめて廊下からは背中を向けたが、もはや何も意味はない。
ほんの少しして、ジャーッ!と桶に水が叩きつけられる音が地下に響いた。
裸のまま桶に向かって放尿していると、惨めな気持ちが一気に湧いてきて、心が折れそうになってしまったが、
(私が折れたらダメ…!みんなはもっと不安な気持ちで、もっと辛い目に遭ってきたんだから…!もっとしっかりしないと…!)
使用人たちのためにも負けられない、と改めて心に誓うのだった
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