宴会場を後にして、廊下を渡る私は依然縛られたままの状態で歩みを強制されていた。
今日この日に、なんでこの私が、こんな惨めな罪人同様の扱いを受けなければならないのかと、、。
すれ違う女中さんの好奇な視線に冒される恥ずかしさに、深く俯いて、その場をやり過ごそうとした。
「こら、顔を上げなさい。良く見てもらうんだ」
縄尻を持つ上司からの叱咤の言葉。続いて、役員の男の口から、驚きの言葉が女中さんにむけられた。
「良かったら、仕事が跳ねてからでも部屋においでよ。面白いものが見られるよ」
などと誘いの言葉を掛けたのでした。
上司に髪の毛を鷲掴みにされて、正面を向かされました。目の前に晒した私の顔を見た女中さんは、小さな声で「あっ」と。
その言葉を飲み込むようにして、「さるぐつわまで噛まされて、ちょっと可哀想にみえますね」と言葉を続けた。
「うん、、騒がれると迷惑が掛かると思ってね。何しろ五人を相手にしなければならないのだから、、」
女子さん意味深な言葉を投げ掛けた上司であった。私を取り囲んでいた男達も、その言葉にニンマリと頷くのであった。
ここで結論を先に伝えておきます。
つまり、会社の忘年会と称しての一泊旅行。これはたてまえの事であって、実際には私を捕らえて慰み者にするが為の計画だったのでした。
この旅館も役員の人達の息の掛かったものであって、事前に仕組まれていたのでした。
旅館の女将さんから仲居さん迄も全員が首謀者だったのでした。
隠し芸大会もそのひとつの策略に過ぎなかったのでした。
つまり、日頃から私は、上司、役員といった上層部の者達から狙われていたのでした。
会社内でも、そうした身の危険は感じてはいたのですが、どうする術もなかったのでした。
そうした時代背景が色濃かった昭和の時代だったのです。
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