2025/04/06 11:15:21
(rAoTIzW8)
「成績は優秀…。しかし一人を好む…か…。」
知人から連絡を受け快く引き受けたものの、コミュニケーションを取れない子供はなかなかに厄介だと感じていた。
「集団生活に馴染めないということは…個人レッスンするしかなさそうだが…。
果たして僕を受け入れてくれるか…そこが問題だろうな…。」
色々と思案を巡らせてみてもより良い方法が浮かばない。
不安に駆られながらも、元々のポジティブな性格からか、本人に会ってみなければ何も始まらないだろう…。
そう考える事にした。
翌日…例の娘を連れた知人が訪問してくると…。
「そうだな…ずいぶんご無沙汰だったよな…。そうか…もう3年になるか…。」
少し疲れたような表情を浮かべながらも、努めて笑顔を絶やさないように心掛けている事をいとも簡単に見抜かれてしまう…。
「まぁ…こういう仕事柄…苦労は尽きないからな…。」
苦笑いを浮かべて頭を掻く仕草。
知人もまた問題を増やしてしまうようで申し訳ないと言わんばかりの笑みを浮かべながら、娘を紹介してくれた。
父親の背後に隠れるようにして立っていた娘を半ば強引に父親は横に立たせる。
小さく頷く仕草が心の中に不安を抱えているようにも見えたが、父親の言う事には素直に従う従順さを感じた。
「はじめまして…僕は杉浦雅人…よろしくね…?」
俯いたままの娘に声を掛けるものの反応はなく、自分の中に踏み込まないでと言われているような感覚に包まれた。
「あ…あぁ…心配は要らないから…。
なんだ…相変わらず忙しそうだな…。」
父親が去っていく後ろ姿を見つめながら、その視界の隅では取り残された娘が俯いたまま立ち竦んでいた…。
「弥生…ちゃん…?さぁ…入って…。」
玄関先で立ち尽くしていた娘を教室内に誘う。
自分が何をすべきか何故ここへ連れてこられたのかを理解しているのだろう。
言葉を交わすことはなくとも、こちらの指示には素直に従ってくれる。
教室内に案内するとひとつの椅子に腰掛けさせる。
その前に椅子を運び、対面の形で声を掛ける。
「弥生ちゃんは…人と接するのが苦手かな…?」
話しかけても返答はない。
コレは困った子供を預かってしまったと後悔しながらも、知人から頼りにされたのだから何とかこの状況を克服しなければと気を取り直して…。
「うん…まぁ…そういう時期って誰にでもあるしね…。
少しずつ慣れていってもらえれば…。」
俯いたままの娘からは見えていないだろうと思いながらも、娘に向ける表情は和らかく笑みを絶やさない。
「ここには色んな子が来てるんだけど…友達になれる子がいるといいね…。」
何を言っても反応を示さない娘。
それではと話題を変えるように…。
「弥生ちゃんは…どの科目が得意なのかな…?得意って言うか…好きな科目でもいいよ…?」
やはり反応がない…。初対面なのだから仕方ないだろうと考えることにした。
「じゃあ…弥生ちゃんの好きな事…教えてもらえるかな…?
ここではね…みんなそれぞれに好きな事をして過ごすんだ…。
弥生ちゃんは…何をしている時が一番楽しいかな…?」
【こんな感じで大丈夫でしょうか?
長年教育に打ち込んできた男は婚期も逃し未だに独り者…。
子供たちを見つめる目は教育者として恥ずかしくないものだと自負してきたものの、心の片隅に芽生えた意識が盗撮へと自らを突き動かしてしまう…。
そんな感じで大丈夫でしょうか?】