2024/12/15 20:33:53
(YUiDTvZn)
30分程ノンストップで走り続けた車両が大きめの駅で停車する為、ゆっくりと減速していく。
男は、目の前の少女のスカートの中に向けていたカメラレンズ、そのスマホをすっと引き、ポケットの中へとしまい込んだ。
うっすらと笑みを浮かべ、そのカメラに映りこんだ映像を心待ちにするように高鳴る鼓動を感じながら。
大きめの駅では総じて怒涛の人の流れが生まれる。
折り返る車両に向かう者、帰宅を急ぐ者、友人との待ち合わせに向かう者様々だ。
目の前に立っていた少女も例外ではなく、下車しない乗客の隙間を縫ってぎりぎりの中で降りていく。
カチャン…。
そんな少女のポケットから何かが落ちたのが見え、思わず拾ってしまうと、
「あ…ちょ…。」
思わず声をかけそうになるが、気づかず立ち去ってしまう少女の背を見ながらそれ以上声を張ることはしなかった。
握っていたのはスマホ、いくつかストラップもついている。
ついさっきまで使用していたからか、不運にも画面のロックが解除されている状態だった。
「スマホを落とした…だけなのに…ってね…。」
呟くように男は唇を動かすと、その画面がオフにならないように慎重にケアしながら。
「夏純ちゃんっていうのか…。
苗字は…野田…ね…。
あ、あそこに通ってるのか…。へぇ…。」
プロフィールが丁寧に保存されているわけではないが、SNSでのやり取りを見れば大凡の素性を把握することができた。
といっても、いつまでも持っていても仕方がない…、そう思ったのか。
「IDは…っと…。」
手早く電話番号…メールアドレス、SNS関係のIDを自分の携帯に保存すると
「あ、駅員さん…、すいません。
落とし物みたいで…。」
近くにいた駅員に落とし物として届ける。
今どき、財布以上に貴重で、個人情報の一切が載っているといっても過言ではないスマートフォン。
必ず駅の拾得物預かりに連絡はするだろう、そう考えて卑劣な目論見を実現させる為の行動だった。
「早ければ今日中…。
まぁ明日にはさすがに手元に戻ってるかな…。」
そんなことを考え、淫らな欲望と期待を胸に家路についた。