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不協和音の悦び ―調教のタクト―

投稿者:久瀬 ◆q79IjxiWQ.
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2025/12/19 18:50:29 (Nn85etRw)
音大の第4練習室には、冬の終わりの湿った空気が停滞していた。 比奈は一人、ヴァイオリンの弦を狂ったように弾いていた。指先はとうに感覚を失い、肩は石のように硬い。けれど、休むことは許されない。来月のコンクールで結果を出せなければ、特待生の枠を失う。

「――音が濁っている」

背後から降ってきた冷ややかな声に、比奈の指が跳ねた。 振り返ると、入り口の影に久瀬が立っていた。カシミアのコートを腕にかけ、冷徹な美貌に侮蔑の色をにじませて、彼は比奈を見つめている。

「……久瀬先生。お疲れ様です」 「挨拶はいい。それより今の旋律だ。お前は楽譜をなぞっているだけで、魂をどこに置いてきた? そんな臆病な音では、聴衆を服従させることなど到底できない」

久瀬が一歩、歩み寄る。彼特有の、苦い煙草と白檀のような香りが比奈の鼻腔をくすぐった。それだけで、彼女の背筋にゾクリとした戦慄が走る。

「すみません。もっと……もっと練習します」 「練習量で解決する問題ではない。お前には、根本的に足りないものがある」

久瀬は比奈のすぐ傍まで来ると、彼女が握りしめていた弓を、長い指先で強引に取り上げた。 「えっ……」 「自分の意志でどうにかしようとするのをやめろ。お前に必要なのは、強固な意志ではなく、徹底的な『放棄』だ」

久瀬の指が、比奈の強張った肩に触れる。厚いニット越しだというのに、彼の体温がまるで烙印のように熱く感じられた。 比奈は息を呑んだ。恐怖のはずなのに、触れられた場所から熱が広がり、下腹部がキュッと締め付けられるような感覚に襲われる。

「今夜、私の個人スタジオに来い。お前のその、無意味なプライドを削ぎ落としてやる」

それは招待ではなく、抗いようのない命令だった。 比奈は断らなければならないと思った。けれど、久瀬の昏い瞳に射抜かれた瞬間、彼女の唇からこぼれたのは、自分でも驚くほど艶を帯びた、震える声だった。

「……はい、先生。伺います」

これが、自分の人生が取り返しのつかない場所へと滑り落ちる合図だとは、その時の比奈はまだ、認められずにいた。

【設定】
比奈: 大学のオーケストラ部で、コンクールに向けた過酷な練習に明け暮れる日々。周囲の期待に応えようと、指先に血が滲むまで練習するが、心は常に「何かが足りない」という空虚感を抱えている。
久瀬: 特別講師として大学に現れた久瀬。彼は言葉の刃で学生たちのプライドを容赦なく切り刻む。比奈は彼を「怖い」と怯えながらも、彼に叱責される瞬間だけ、不思議なほど自分の鼓動が強く打つのを感じている。

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