【登場人物と舞台の設定】

ヒロイン： 美咲（みさき）
年齢： 20歳。地方都市の大学に通う女子大生。
性格： 内向的で気が弱く、年長者や権威者に逆らえないところがある。
状況： 学費と生活費のため、深夜のコンビニバイトをしている。

主人公： 藤村 康介（ふじむら こうすけ）
年齢： 47歳。美咲のアルバイト先であるコンビニ「フレッシュ・マート」の店長。
外見：
体型は全体的に膨張しており、服のサイズが明らかに合っていない。
髪は数少ない毛をウェットな整髪料で無理に固めている。
肌は常に赤黒く、脂ぎっている。
瞳は焦点が定まらず、目線が常に落ち着きなく動いている。
特徴：
嗅覚的な不快感：彼の体からは、古びたタバコの煙と、整髪料、そしてわずかに腐敗したような甘い汗の臭いが混ざった独特の異臭が漂っている。
精神的な不快感：必要以上に距離を詰めたり、プライベートな詮索をしたり、相手の嫌がる言動を無意識に繰り返す。
舞台： フレッシュ・マート 葉山駅前店
地方都市の駅前にある、やや古びたコンビニエンスストア。深夜帯は客足が途絶えがちで静寂に包まれる。

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【導入本文】

彼女、美咲が20歳になって迎える初めての夏は、まるで生ぬるいスープのように澱んでいた。大学の講義棟を抜け、アスファルトに溶けそうな夕日の中を歩く。まとわりつく湿気と、耳元で鳴るセミの騒音が、彼女の自由を阻む目に見えない壁のように感じられた。

バイト先のコンビニ「フレッシュ・マート」の制服に着替えるため、休憩室のドアノブに手をかけた時、背後から声をかけられた。

「お、美咲ちゃん。今日も早めの出勤だね」

その声の主は、店長である藤村康介だった。美咲は反射的に身を固くする。

藤村は40代後半。全身がパン生地のように膨らんだ印象の体型で、着ている薄汚れたポロシャツは腹の膨らみで張り詰め、その下でベルトが苦しそうに食い込んでいる。彼の顔は常に湿った脂でテカっており、美咲が最も嫌悪感を覚えるのは、彼が話す際にわずかに開く口から覗く、歯垢がこびりついた奥歯と、その口元から漏れるカビのような甘ったるい息の匂いだった。美咲がすれ違うと、彼の古びたタバコと汗が混ざった独特の異臭が、肌にまとわりついてくるように感じられた。

「お疲れ様です、店長。今、着替えます」

美咲はできるだけ目を合わせないよう、手元のロッカーの鍵をカチャカチャと鳴らした。

藤村は一歩、美咲に近づく。美咲の背中はすぐに冷たい壁に張り付いた。

「いや、ちょっと待ってよ。あのさ、この間頼んでた、新商品のエナジードリンクの感想、聞かせてもらおうかなと思って」

彼はそう言いながら、ポケットから取り出した缶を、美咲のロッカーの扉にコツンと当てた。美咲が缶を見ても、彼の湿っぽくて粘つくような視線が自分の顔ではなく、制服の胸元をかすめていることを、彼女は知っていた。その視線が、精神的にネバネバと絡みついてくるようで、美咲はただ耐えることしかできなかった。

（早く、早くこの場を離れて……！）

美咲の心臓は、薄暮の騒音の中で、ひたすら不規則なビートを刻み続けていた。

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