部活の練習を終えて部室へ戻ると、先輩とOGが何やら騒いでいた。
中に入ると、同級生の男子が、先輩達に囲まれていた。
部室は男子禁制だったが、3年の先輩は男子を逃がさないように押さえつけていた。
「1年、こいつは痴漢だ!」
特に恐い先輩が、私達に怒鳴る。
「ウチらの部室に忍び込むなんて、良い度胸をしてるな」
「警察を呼んでやるから覚悟しろよ」
と言うと、男子の腹を踏みつけていた。
どうやら男子は、先輩たちの着替えを盗撮していたらしい。
証拠品だと言う男子のスマホが、部員に回された。
中に保存されていた画像や動画には、部員が着替えている様子が移っていた。
「(私の名字)、ちょっと来い!」
一番恐い先輩に呼ばれ、私は震えながら彼女に近づいた。
「コイツはオマエのカレシか?」
と訊かれた。
全く身に覚えも無いので、首を横に振った。
先輩は私に男子のスマホを手渡すと、私に画像を見せてきた。
私の名前が付いたフォルダーには、みんなとは別に授業中に撮影された画像や、登下校時に盗撮したような写メが保存されていた。
「私は知りません」
「告られた事はありましたが、きっぱり断りました」
と弁解すると、先輩は、
「オマエは、覗き魔な上にストーカーだったんだな?」
土下座する男子に、先輩は厳しく詰め寄った。
「コイツはヤベェよ」
「早く通報しようよ」
と、先輩達は口々に男子を罵りながら、追い詰めていた。
すると
「すいません」
と言って、男子は床に額を擦り付けて、謝り始めた。
情けない声で泣きながら謝る男子に、私達もドン引きしていた。
「マジ?」
「キモい!」
「許せない!」
1年の中からも、嫌悪の声が聞こえてきた。
「先輩、早く通報しましょうよ!!」
「りなをストーカーしてたんだし、仲間が痴漢されたなんて許せません」
「退学させましょう!」
「りなも恐いはずだから、逮捕して貰いましょう」
「そいつの親に慰謝料を払って貰いましょう」
徐々に過激になる言葉。
女子特有の集団ヒステリー。
付きまとわれていた私は、何も言えないまま、周りの空気に呑まれて行った。
怒りに怒りが募ると、全員が男子を攻撃し始めた。
その様子を見ていた私は、胸騒ぎにも似たザワザワした気持ちが沸いていた。
つづく