2023/01/28 11:16:11
(VLjJuo5B)
「さーおとなしく捕まりなさい。」
その言葉で、私の足は、その場で立ち竦みました。当時10才の私、小学三年生。悪戯盛りの悪ガキでした。
余りの悪戯が過ぎて、おばあちゃんに押さえ込まれて紐で手足を縛られたのが始まりでした。
そのおばあちゃんと母との三人暮らしでした。祖父も父親も既に他界していたのでした。
母は家計を支える為に一人必死に働いていました。留守を守るのがおばあちゃんの役目なのでした。
この日も悪戯をして、逃げ回る私をおばあちゃんが追いかけていたのでした。
おばあちゃんの手には縄が持たれていました。この頃には、紐から縄に変えられていたのでした。
いくら待ちなさいと言われても、捕まるわわけには行きません。
つかまれば、又キツく縄で縛り上げられて、その日一日は外に遊びに行くことも出来ません。
この日は友達と海に行く約束をしていた夏休みの日でした。
「素直にならないと、今日はいつもより縄を増やすわよ。お昼ご飯も抜きにされたいの。それでもいいの、、。」
壁際まで追い詰められた私。目の前にグッと差し出して来たおばあちゃんの腕。
その手の中に握られた縄の束を見た私は、ヘナヘナと其処にへたり込んでしまいました。
「それを確認したおばあちゃんは、「よしよしそれでいいんだよ、おとなしくしていなさい。」
私は蛇に睨まれた蛙の様に言葉すら出せない状態で座り込んでいました。
「さーおばあちゃんの方に背中を向けなさい。そうして両手を後ろに回しなさい。」
言われる儘に、そうせざるを得ませんでした。小学生の細い手首にキリキリと縄は巻き付いて行きました。
おばあちゃんと言えども、当時60才位だったでしょうか。気力体力共に盛んで腕の力も相当のものだったと思います。
縄留めを施したおばあちゃんでした。「次は足を縛りますからね、、。」そう言って、私を畳の上に横たえさせました。
私は、あぁ足までも、歩けなくされてしまうんだ。何かとても情け無くなったことを覚えています。
その時でした。「ゆうちゃん、、」と友達の呼ぶ声が玄関の方から聞こえて来ました。私を誘いに来たのでした。
咄嗟にに、これで縄を解いてもらえる。友達と海に行ける。そう思った私でした。ところが、おばあちゃんのとった行動には驚かされました。
私は、おばあちゃんの手によって猿轡を噛まされてしまったのでした。余りにも辛く厳しい仕打ちに涙を流して泣きました。
玄関まで出て行ったおばあちゃんは友達達に私が行けなくなったことを話していたのでした。
「ごめんなさいね、ゆうちゃんは、夕べから熱を出して、今日一日は寝ていないといけはいの、、。」
なーんだ残念。じゃあ僕たちだけで行ってきまーす。と言って去って行ってしまいました。
私は悔しいやら、悲しいやら、惨めで仕方ありませんでした。
私の側に戻って来たおばあちゃんは、どこか勝ち誇ったような表情になり、縛られ転がされている私の背中の上に片足を乗せて
「いいこと、今日一日は、こうしておばあちゃんと二人きりよ。」言うことを聞かないと、怖いおばあちゃんになりますからね。」
そう言い残して、私一人を部屋に縛り置いたまま、掃除洗濯といった家事をこなして行くおばあちゃんなのでした。
一人になった私は子供心に考えました。何故にあの時、もっと抵抗して逃げなかったのかと。
何故におばあちゃんが手にした縄を見て、身体中の力が抜けて、その場に座り込んでしまったのかと。
捕まりたくない、おばあちゃんに縛られたくないと思いつつも、おばあちゃんに言われる儘に背中を見せてしまった。
そして、両腕を後ろ手に組んで縄掛けを待ったのかと。果たして期待していたというのかう。そんな悩ましい日々がその後も続いたのでした。