それでは、作り話と思ってご覧下さい。
始まり始まり
親愛なる上島○兵氏に捧ぐ。
昔、昔ある所に、彼女に振られたばかりの男がいた。
その男は六年連れ添った彼女とふとした事で喧嘩別れをして、一人淋しく仕事にあけくれていた。
とある年の瀬、その男の昔ながらの連れのひとことから物語ははじまる。
ある晩、悪友が『女っ気ないお前に女奢ってやるよ』と言ってきた。
それまで素人さんしか相手にしてこなかった僕は、『???』てな感じでキャバクラかなんかかと思って、馬鹿話をしながら着いていった。
導かれたのはとあるビルの一室。
周りを見渡せば殺風景なカウンターに待合室。
これが世にいう『ファッションヘ○ス』
何がなんだか解らぬ間に悪友は会計を済ませた。
僕はと言うと、緊張を解すために無理して馬鹿話を続けるが、間が持たない。
混雑してたのか、およそ30分待たされ、ようやく自分達の順番となった。
店番『次のお客様、お待たせしました』と悪友が呼ばれ颯爽と出ていく。
そして、いよいよ自分の順番かと思うと、点けた筈のタバコを忘れて更にもう一本。
二本のタバコに気付いて、とっさに周りを見回すが、自分以外誰もいない。慌てて、本棚にあった漫画を取り寄せて見るが、内容が頭に入らない。
さらに数分が過ぎ、コツコツと忍び寄る足音に、まるで面接かのように背筋を伸ばし、堅くなる自分がいた。
『次のお客様、お待たせしました』と事務的な対応。それに『ハイ!』と上ずった声で返事をする間抜けな僕。
その時点で『素人ちゃん』全開!
そんな僕の動揺をよそに、事務的にこなす店番に、ちょっとだけ悪態をつきたくなるが、そんな度胸もなし。
カーテンの向こう側に居る女性の気配を感じて、心トキメかせるも束の間、可愛い声とは裏腹に彼女は出てきた。
『初めまして、○○です!宜しくお願いします』
僕はきっかり、三秒間意識が飛んだ!
『初めましてだ!?何言ってやがる!いつも見てるじゃねーか!おいおい、勘弁してくれよ~、こっちは正真正銘の風俗○貞なんだぞ!その可愛い声はなんだよー、誰に似てるか言ってやろうか!?詐欺だーー!いや…ダー!、ヤー!』と頭の中の回路が凄まじい早さで、思いの丈をぶちまけようとする。
しかし、一方では『それは気付かないふりをした方がいい、こんな事もあるさ。声に集中すれば大丈夫!』とあくまで被害を最小限に止めたいコトナカレ主義の僕が対立していた。
そのまま、彼女に手を取られて個室に導かれるも、思考回路がショートして、何が起こったかさえも理解できずに、彼女の心のない適当なサービスに『チェンジ、チェンジ、チェ~ンジ~~!!』と心の中で叫びながら、一度もその気になれずに40分の情事は終焉を迎えた。
その後数年間、風俗なるものに近寄らなかったことは言うまでもない…。
上島様、申し訳ありません。貴方のことは決して嫌いではありません。が、貴方をブラウン管の向こうで拝見する度に、喉の億が苦くなります。
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