それから俺達は、平日は毎朝、例の古墳を一緒に周回するようになり、俺も自然と、徹夜で麻雀とか朝まで飲み。とかいうのがなくなってきました。
しかし、大学では須田と遭遇しても、軽い会釈だけで一切、会話はなし。そんな不思議な距離が暫く続いたのです(この距離感がよかった)
そんな須田とも、毎日毎朝、1時間くらい一緒にジョギングをするものだから自然と距離感も近づいてきて、俺達は気がついたら、ふたり協力でのストレッチとかもするようになってました(背中と背中を合わせて腕をお互いで組み、そのままよいしょー。って相手の背中を伸ばしてあげるような運動)
須田も、夏という季節的なものなのか、肌に吸い付くスパッツではなく、普通のランニングパンツみたいな感じのものを着用しており、ベンチで休憩してジュース飲んでる時とかに須田が動いたとき、ランニングパンツの隙間から、けっこうな高確率でパンチラが見えたりもして、俺は俺で別の楽しみにもなっていました。
また、毎日顔を合わせることで、須田が生理の時にジョギングを休んでいる時も俺の知る範囲となり、俺はおそらく須田の周囲の男では知りえないような情報(須田の生理周期など)を知る、唯一の男になっていました。
俺はそんな頃に、(そろそろ告白のチャンスかな・・・)って思い始めていたのです。
そして、(今日こそは告白するぞ)と何度も決意をしながら、結局、言い出すことが出来なかった夏の真っ盛りの時に、須田がいつも、朝は古墳にいるのに、2日連続でいなかった時があったのです(俺達は、この段階になっても連絡先を交換していなかった)
俺は真剣に、須田になにかあったんじゃないか。って心配になり、俺は大学で須田と仲のいい女友達に、「最近、須田みないけど、何してるの?」ときいたりもしたのです。
すると、須田の友達は、「けっこう重い夏風邪で寝込んでるみたい」と教えてくれたのです。
俺は今までの話の中で、須田が今でも実家に住んでいる。というのを知っていたので、俺は無断で須田の家に行くことにしたのです。
須田の家はこのあたりにある。っていうのは、特段興味も示さず小学校の頃に知っていた記憶があるのですが、こうして完全に須田の家に行く。っていう目的であるのは初めてでした。
俺はその噂の真言密教のオヤジが住んでいるのであろう、須田の家の前までいきました。須田の家は見た目は普通の建売住宅という感じだったのですが、俺がインターフォンを押し、須田の母親が出て、俺が名前をなのってから見舞いに来たことを伝えると、「わざわざ申し訳ないですね」という感じで、お淑やかな感じで落ち着いた母が俺を迎えてくれたのだった。
すると、「愛子は部屋で寝ておりますので、どうぞ上がってくださいな」と、また丁寧に言われたのでした。
今思えば、いくら母親が上がってください。といっても勝手に上がっていいものかどうか考えると思うが、当時の俺は、いっても18才という事もあって、そこは普通に無礼にも「ではおじゃまします」と上がらせてもらった記憶がある。
ただ、印象的だったのは、須田の父親は霊媒師。という事もあってか、家がなにか線香の臭いがしたこと。そして無駄なものが一切なく、きわめてシンプルな家の内部だった事。というのを覚えている。
俺は須田の母に案内され、2階の須田の部屋の前までくると、須田の母は、「愛子。起きてる?お友達がお見舞いにきてくれたよ」といい、中から「うーん・・」という元気のなさそうな声が聞こえると、須田の母は「どうぞ」とドアを開けてくれたのだった。
ここから俺は、にわかに信じれない状況を目にすることになる。
俺はてっきり風邪で休んでいると聞いていたので、須田に「大丈夫か?」と尋ねると、「うーん。。。今回のはちょっとキツイ」というのでした。俺は「そんなに重いのか?」ときくと、「風邪ってきいてるよね? ・・・でも実はそうじゃなくて。。。信じてもらえるかどうかだけど、悪い幽霊に憑かれちゃってさ・・・」と、細々と話してきたのである。
俺は(は?幽霊?何言ってんだこいつ)と、正直思いました。
今となっては、妻の愛子がどういう家庭で、どういう経験で、愛子の父がどれだけ厳格な修行者であることを知っているので、さほど驚く事でもないのですが、当時は、こいつ熱で頭おかしくなったんじゃないか?くらいにしか思ってませんでした。
そしてさらに驚くべき光景なのが、この後でした。(もう、信じてもらえるかどうかっていうとこですが、いちおう、ありのままを書きます)
ずっとベッドの上で、会話もなく、見舞いに来た俺も、(こんなに重いんだったら、帰った方がいいのでは。。)と思い始めた頃、いきなり須田が、「またきたあああ!!!!!><」とカナ切り声を上げたのです。
そして須田はベッドの上で耳を塞ぎ、必死の形相というか、体をブルブル震わせながら、よくわからない呪文のようなものを何度も繰り返し唱え、(記憶の中では、おんぺいなんとかなんとか、なんとかそわか。みたいな)悶え苦しむのでした。
俺が「大丈夫か!!!!」と須田に近寄った時、須田は悶えながらオシッコを漏らしていたようで、パジャマの下半身の股間部分が、じゅわー。とシミだしてくるのが見えました。
俺はすぐさま、これはただ事ではない。と思い、「おばさん!愛子さんが!!!!」と階段の上から呼ぶと、すぐに父親と母親が上がってきて、父親も、またよくわからない呪文を唱え、短刀のようなもので、空を切るような真似をすると、、須田はまた落ち着いたのでした。
須田の母は、愛子がおもらしをしているのをすぐに察知してか、タオルを須田の下半身にまき、「とりあえず下に降りてくださいな。娘はこういう状態ですから・・」と言われたのだった。
俺はそれから須田家の1階で、須田の父親から、「愛子は今、悪い地縛霊に憑かれて、心身ともに病んでいるんですね。ですが、これも数日すれば改善しますから。ただウチはご存知かもしれませんが、もともと霊的なものとは近い距離にありまして・・・・」みたいな、向こうは誠実に理解してもらおうと話しているのだが、俺にとってはちんぷんかんぷんな説明を受け、、、、俺はその日はそのまま帰ったのだった。
帰ってからも、どっちかというと、頭がポカーンとしたような感じで、ただ須田が、「またきたあ!!!」と叫んでからの光景が何度も頭の中をリピートしていた。(当時は、まったく意味不明で頭真っ白だったけど、先述したとおり、須田家の家業を知る今では十分に理解できる)
俺は意外と、そんな凄絶な光景をみたにも関わらず、普通に学校にいき、翌朝もひとりで古墳の周辺を走っていた。
いつか、須田がまた元気になって現れてくれるだろうと願いつつ。
つづく。
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