続きその2
俺はそれがとても嬉しかったのと、満足できていなかったアヤに申し訳無く思ったことを覚えている。
最後となったその日は、色々な想いが駆け巡っていた。
誰にも渡したくない、振られたらどうしよう、どのタイミングが良いのか。
ホテルに入っての行為は複雑な思いながらも独占欲が強くなっていたからか激しく求めていたと思う。
お互い疲れて休んだ後ホテルを出ると、夜景が見たいとアヤに言われた。
俺は夜景スポットなんて、実はあまり知らなかった。
唯一知ってる場所を告げると、もっと綺麗な夜景が見られるスポットがあるとアヤは言う。
「夜景の綺麗な場所位知らないのはマズイでしょ~」
なんて笑われた。
アヤの案内で向かったスポットは古い住宅街がある山の上、団地を拡張しているらしく、周りに何も無い場所に連れていかれた。
乗り心地の悪いトレノは車内の俺達を遠慮無く揺さぶる。
そんな事も楽しく、ケラケラ笑いながら目的地に着いた。
確かに眺めは綺麗で、周りに他の車は居なかった。
他愛も無い話しをしながら、俺はタイミングを計っていた。
「ねぇ、何か言いたい事があるんじゃないの?」
突然アヤから話しを振られた。
「え!?」
と焦る俺に様子が変だから、とアヤは言う。
言葉が上手く出ない俺は覚悟を決めて、好きだからちゃんと付き合ってくれ、と伝えた。
長い沈黙、馬鹿みたいに長く感じた。
こっちを見たアヤの顔から答えは予想できた。
「ゴメンね、今の私だと難しい」
今のままの自分では振り回してしまうし迷惑が掛かる、この状態では付き合えない、と。
その後も少し話しをしたが、よく覚えていないが相当落胆していたと思う。
アヤを家に送り届け、たまたまPHSに連絡が来た友達と落ち合い、事の顛末を話して泣いた気がする。
その後何回かアヤと連絡は取ったが会う事は無かった。
再度アヤと会ったのは三年位経ってから、近所の本屋で一緒になった。
お互い彼氏彼女がおり、そんな話しをしていた。
当時の彼女は三回振られて、やっと付き合えた相手だった。
何となくアヤに、今の様に図々しく何回も食い下がったらどうなってたかな?と尋ねた。
「確実に落ちてたよ!好きだったもん」
相変わらずの笑顔でアヤは言っていた。
マジかよ!なんて適当な返事をしたが、当時の度胸が無い自分を恨んだ。
結局これを最後に会っていない。
時々当時乗っていた同じ型のトレノを見掛けると思い出します。
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