2013/06/28 14:11:28
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『あの、帰り遅くなると悪いから、用件を短く言います。良かったら最初、友達でもなんでもいいから、付き合ってもらえないですか?』
今時、随分純な言い方する子だなと思いました。
そしてストレートな言葉に驚きでした。
でも由真ちゃんは俺を見ていたろうけど、俺は見ていないので初対面、はいんじゃ付き合いましょうと、軽々しく言えませんでした。
非常に由真ちゃんが真面目な女の子に思えたからです。
『いきなりそう言われても、彼女いないから付き合いましょうとは言えませんよ』
『わかってます、わかってます。だからもし良かったらここに連絡下さい』
そう言って封筒を出しました。
『番号とアドレス書いてますから、良かったらでいいですから』
封筒から手を引くと、テーブルに手のあとが残ってました。
相当な緊張があったみたいで、おそらく手のひらは汗で濡れていたんでしょう。
『わかりました』
俺はその封筒をスーツの内ポケットに入れました。
『ほんと、突然でごめんなさい。今日は有難うございました』
『バスの時間大丈夫?僕はまだ少し大丈夫だけど』
『あ、ちょっとまずい』
『話しはわかりましたから、遅くならないうちに』
『はい、すいません』
立ち上がるとちょっと急いで茶店を出て行きました。
俺が茶店で会計しようとしました。
『あの子が置いていったのか、レジんとこに千円あったよ。可愛い、今時には珍しい女の子だよね?ウブだよね』
マスターは話しを少し聞いていたみたいで、笑って俺におつり300円渡しました。
うちに帰り、封筒を開けると確かに番号とアドレスが書いてました。
このアドレスに返事するかどうか、迷いました。
なんて返事すれば良いかも思いつかず、その日はしませんでした。
翌日、駅前のバス停に乗り換えを待っていました。
由真ちゃんいるかな?と見てましたがいません。
今日は時間合わないのかな、そう思ってバスに乗ると、別なバスが着いたみたいで、ゾロゾロと乗ってきた中に由真ちゃんがいました。
目が合うとちょっとお辞儀されました。
友達数人といたみたいで、楽しそうに会話してました。
その姿も昨日同様、真面目な女の子って感じでした。
そしてS病院前で降りていきました。
俺は会社につくと、始業までの間に由真ちゃんにメールしました。
『隆一です。これが僕のアドレスです。番号はこれです』
とだけ送りました。