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桜の下で

投稿者:ライラプス ◆AdKeSZp7eg
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2012/04/23 16:05:07 (3Yv7Ff07)
桜の盛りも過ぎ、名残の花びらが一風ごとに舞う新緑の葉も眩しいこの短い一時が好きだ。
朝から今までスカイラインを何度も流して楽しんだが、流石に空腹には耐えられず山を降りて来た。
11時を少し回っている。
喫茶店でランチでもと思ったが、重装備のこの姿で入店するのは気恥ずかしかった。
コンビニでサンドイッチとコーヒーを買い、さっき見つけた公園で食べる事にした。
入口の車止めまでバイクを突っ込み、すぐ横のベンチで食べる事にした。
ここの公園の桜も半分以上の花びらが散り、残った花びらも風が吹く度、別れを惜しむ様にヒラヒラと舞い風下に流れて行く。
誰もいない公園は、時折通り過ぎる車の音とインラインフォーのエンジンが冷えていくチンチンというかすかな音だけ。
一つ目のサンドイッチを食べ終わった時、反対側の入口からジャージ姿の学生らしき人が歩いて来るのに気がついた。
男の子?女の子?…、髪形はショートで男の子みたいだが、体つきは華奢で女の子の様にも見える。
余り見ているのも失礼と思い、視線を落とし食事を続ける事にした。
砂を踏む足音が段々と近づいて来る。
すぐ横まで来た事は足音で分かった。
不意に「こんにちは」と若い女の子の声。
思わず顔上げ横を見る。
まだ春だというのに、良く日焼けしたスレンダーな少女が立っていた。
「アァ、こんにちは」、私は慌てて挨拶を返した。
手には大きなスポーツバッグを持っている。
小麦色の肌と白い歯が印象的だ。
「あれ、おじさんのバイク?」
おじさん?…まだ32なんだけど…心の中で言ってみるものの、この子から見れば充分おじさんかと思い直した。
「そうだよ」
「ちょっと見て良い?」
「どうぞ、まだエンジンとマフラー熱いから気をつけてね」
いったいこの子は何歳なんだろう?
高校生にしては少し幼くも見える。
彼女がバイクを見ている間に残りのサンドイッチをコーヒーで流し込んだ。
「おじさん、このバイクバリ伝のグンのと一緒?」
私は思わず笑ってしまった。
「よくそんな昔のマンガ知ってるな。まぁ同じと言えば同じだけと、排気量がちょっと違うかな」
「お兄ちゃんもバイク好きでマンガ持ってたから、私も全巻読んだんだ。…あっ分かったこれ900だ~!」
「正解」
少女は屈託無い笑顔を私に投げ掛ける。
「おじさん、そこに座っても良い?」
「どうぞ」私は、お尻一個分横に移動して、彼女のスペースを確保した。
彼女は横に腰掛けるとバイクについて色々と質問してくる。
その話の中で彼女の事も少し判ってきた。
高校に入学したばかりの新一年生で、8月に16歳になるので夏休み中に免許を取ろうと考えてる事。
今日は、朝から友達と喧嘩になって、お腹が痛いと言って早退してきたことなどを話してくれた。
「おじさんこそ、平日なのに仕事は?」
「僕は火・水曜日が休みなの、そのかわり土・日は仕事」
「へぇそうなんだ、だったらこの後暇?」
「まぁ予定は無いけど」
「だったらバイクで何処か連れてって。」
「家すぐそこだから着替えてメット取って来るから待っててね!」
私の返事も聞かず、彼女は走りだしました。
路地の角で振り向くと「5分…10分で戻るからね」
大きな声で私に念を押すと、塀の向こうに消えてしまいました。
タバコに火を着けこれからの事を考えます。
このまま逃げようかとも思いましたが、別れた妻の事をふと思い出した。
妻は高校の同級生で一年生から付き合い始め、同じ大学に進学し就職して一年で結婚したものの互いに仕事に追われ、ただの同居人として三年間暮らしただけだった。
休みが違ったのも大きな原因だったかもしれません。
妻の方から別れて欲しいと言われサインしてからもう五年になる。
付き合い始めた頃、私のバイクの後ろに乗るのが好きで、会う度に何処か行こうとせがまれた事を思いだした。
タバコを二本吸い終った頃、ヘルメットを抱えた彼女が、走って戻って来た。
額にうっすらと汗をかき、息をきらせ笑顔で私を見上げます。
ジーンズにスニーカー、赤いジャケット。
ショートヘアーの彼女は、遠目には少年に見えるだろう。
何処に行きたいか尋ねると、スカイラインの上にある展望台に行きたいと言う。
エンジンをかけ彼女を乗せると、しっかりとつかまる様に言い握る所を教えた。
「大丈夫、お兄ちゃんに何度も乗せてもらったから」
了解と頷きヘルメットのシールドを降ろし、静かに走りだした。
午前中何度も走った道を再び戻る。
20分程で展望台駐車場に着いた。

「もっと飛ばしても平気だよ」
「生意気言うな、もし事故ったら大変だろ」
「そうだね、…お腹空いたから家からパン持ってきちゃった」
展望台まではここから10分程歩かなければならない。
休日だけ開く売店の自販機で飲み物を買って、二人並んで歩き始めた。
「そう言えば名前聞いてなかったな」
「私?由香、おじさんは?」
パンをかじりなから答える。
「隆弘」
「じゃターくん」
「なんだそれ、じゃ由香ちゃんはユーちゃんかな」
「それで良いよ」
最後にきつい坂を昇りきると、眼下に海が広がる展望台だ。
「う~ん、気持ち良い海が綺麗」
東屋のコンクリートのベンチに座り、しばらく景色を楽しんだ。
「ねぇターくん、結婚してるの?」
やっぱりターくんか、おじさんの方がましかなと思ったが、気にするそぶりもみせず「前はね」と答えると
「バツ1へぇ~!」
「今更だけど、ターくん何歳?」
「サンジュウ、ニ」
「え~27・8かと思ってた、若く見えるよ」
おいおい若く見えてて、おじさんかよと思いましたが、スルーしました。
それから由香は一人で話続けるので聞き役に徹した。
学校の事、家族の事(ちょっと複雑かな)……
「ところで今朝、なんで友達と喧嘩したの」
由香の顔色が急に変わった。
「言いたくなかったら話さなくて良いよ」
膝を抱え暫く無言でいた由香でしたが、うな垂れてイヤイヤという様に頭を振り、
「男の子って勝手で嘘つきだし、友達だと思ってた女の子も私より他人の話を信じるんだもん。みんな嫌いだ!」
泣いているのか鼻を啜る音が聞こえた。
話を聞くと、テニス部の中学の先輩(彼を慕って同じ高校に進学したとの事)に告白したところ、人気の無い校舎裏に連れていかれキスされたらしい。
そこまでは良かったのだが、嬉しさで舞い上がっていると彼の手が胸をまさぐり始め、もう一方の手をスコートに差し込み「やらせろよ」と耳元で囁かれ、我慢できず彼を突き飛ばして逃げてしまったらしい。
運悪くそれを彼の友達が見ていたのだが…。
彼は、ばつが悪かったのか由香から抱いてくれと言い寄ってキスしてきた。
胸を揉んだらペチャパイの癖にハァハァ言いながら興奮するから、キモくなって断ったと友達に説明したらしい。
その話を今朝友達から聞いて、違うと説明したが信じてもらえなかったと言うのだ。
由香の友達もその先輩に憧れていたから、抜け駆けして告白した私も悪いかもしれないけど、友達から絶交と言われ、学校に居たくなくて早退したのだと話してくれた。
余りにも幼い悩みにどう答えて良いか分からず、
「暫くしたらみんな忘れるよ、嘘はそのうちばれるから」
「由香にそんな事やってる様じゃ他でもやってるだろうから、たぶんその先輩評判悪いと思うよ、友達もそのうち分かってくれるって」
「そうかな?」
由香は体を傾け私にもたれかかってきた。
シャンプーか石鹸の香りでだろうか、いい匂いが鼻孔を擽る。
「ターくん優しいね」
「大人をからかうな」
由香に笑顔が戻っていた。
「ねぇ男の人ってペチャパイは嫌いなの?」
「何言ってんだ、人それぞれさ」
「ターくんは?」
「だから大人をからかうな」
由香は私の手を取ると、開けたジャケットの隙間に導き自分の胸に押し当てた。
「私のオッパイやっぱり小さいかな?」
掌に幼い膨らみを感じた。
「何してんだ、まだ高一だろ、そのうち大きくなるさ」
慌てて手を引きく。
「初めてのキスはターくんが良かったな」
「なんだって?」
由香の方へ振り向くと、そこに由香の顔があった。
目を閉じた由香の唇が私の唇に重なった。
すぐに唇を離し「ターくんのエッチ」と、悪戯っ子の様な目で笑います。
「おいおいいい加減にしないと怒るぞ」
内心はいい歳をしてドキドキしてた。
「でも今言ったのは本当だよ」
由香の頭を軽く小突くと、「そろそろ帰るぞ」と声をかけた。
駐車場までの道程をじゃれてくる由香をかわしながら下りた。
出会った公園まで戻ると、別れ際連絡先を教えてくれと言うので自宅の電話番号を教え事にした。
その時は、少女の気まぐれ程度に考えていたのだが。
「絶対連絡するからね」
手を降る由香に見送られ公園を後にした。
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22
投稿者:ヒロ
2012/04/28 16:44:14    (6MZXKguV)
由香がハッピーエンドになるように!
よろしくお願いいたしますm(_ _)m
23
投稿者:ライラプス ◆AdKeSZp7eg
2012/04/29 02:36:42    (FeSt5t6U)
由香との最後の二日間が始まった。
いつものインターチェンジ近くのコンビニで待ち合わせた。
高速に上がる前に、休憩するサービスエリアを伝えた。
今は、バックミラーで心配しながら確認する必要は無い。
私の走りに充分ついて来る。
由香の為に、この二日間何をしてやれるのか?。
『良い思い出』を、ただそれだけだ。
明後日の10時には、リサイクルショップと引越屋が来る事になっている。
ライフラインの手配も終わっている。
車は先週の休みに、転勤先の不動産屋を訪ねた際に置いてきた。
荷物を積み込み引越屋と一緒にバイクで行けば、それで全て終りだ。
携帯は、先月から会社のを支給されている。
勿論由香には教えていない。
自分の携帯はこの旅を終えたら処分するつもりだ。
バイク仲間にも転勤は伝えなかった。
由香もその日は、夕方まではバイトと聞いている。
可愛そうとは思うが、由香のバイトが終る頃には、私の痕跡は無くなっているはずだ。
ただ一つ由香が、会社に聞く事は考えられた。
その時は少なくても、転勤先は知られる可能性はある。
しかし今は、それを考えても仕方が無い。
四月が目の前とは言え、走りだせば体感温度はかなり低い。
山越えをしてしまえば違うと思うが、まだ山の中だ。
サービスエリアの熱いコーヒーで暖まる。
次の休憩ポイントを打ち合わせ、再び走り出す。
昼には目的地に着いた。
観光ガイドで紹介されていた店で昼食をとり、いくつかの旧跡を見てまわった。
観光案内にあった桜の名所に寄る事にした。
河川沿いに桜並木が続き、途中に小さな公園があった。
バイクを止め、桜の下にあるベンチに腰掛けた。
暖冬とは言え、南国のこの地でも桜はまだ二分咲きだった。
それでも春の伊吹は、充分に感じる事は出来た。
「来週なら満開だったかな~、でも綺麗だね」
由香が頭上を見上げ呟く。
「ターくんと知り合ってう三年だね。」
「出会った時は、散り始めだったかな」
「そうだね。私ターくんに出会わなかったら学校を辞めてたし、もしかしたらもうこの世には居なかったかも」
「それははちょっと、大袈裟だろ」
「うぅん、だって入学して一週間くらいで、変な噂流されてさ。中学からの友達に裏切られて、毎日毎日いじめられて…」
由香は私にもたれかかり、肩に頭をくっつける。
「ターくんが側にいてくれなかったら、私…」
「由香は強い娘だから、俺が居なくても立ち直ったさ」
「そんなこと無いよ。ターくんに出会えて良かった」
由香の肩に手を回し、強く抱き寄せる。
自分から捨てようとしている女に、何をしているのだろう。
「ねぇ学生結婚て無理かな」
私を見上げるその眼差しに、押し潰されそうになる。
「そんなに焦る事はないさ。まずは教師になる事だろ」
「分かってるけど…」
また泣き顔になる。
「由香にはまだ言ってなかったんだけど…」
由香は何?それと言う顔で、私を見詰める。
「実は…」、口ごもる私。
由香は不安そうに「何?」と聞き返す。
「聞いて驚くなよ。なんと今日の泊まりはスイートルームだぜ」
一瞬訳が分からず、由香の動きが止まる。
「もう~ターくん、びっくりさせないでよ。」

私の肩を拳で叩く。
私は立ち上がり、その拳を避けた。
「3時からチェックインできるからもう行こう」
座りこんでいる由香の手を引き、立ち上がらせた。

24
投稿者:ライラプス ◆AdKeSZp7eg
2012/04/29 12:59:13    (FeSt5t6U)
有名リゾートホテルのスイートがどういう物か、由香にはピンとこないらしい。
私もスイートに泊まるのは、新婚旅行以来だ。
とにかく豪華、行けば分かると由香に説明する。
ホテルの玄関で、ベルボーイが荷物を預かりカウンターに案内してくれる。
それだけで感動してる由香。
宿泊カードに、二度と使う事の無い住所と電話番号を書く。
名前の欄に植村 隆弘と書き、由香にまわす。
由香は私をチラッと見て、私のサインの下に植村 由香と書いた。
満面の笑顔で、カードを受付に渡す。
ベルボーイに案内され、最上階にあるスイートに。
セキュリティカードが無ければ、スイートのある最上階に、エレベーターは止まらないシステムだ。
驚く由香に、カードを見せて説明する。
案内された部屋は、オーシャンビューで太平洋の水平線が窓いっぱいに広がっていた。
由香はすごいすごいを連呼する。
荷物を運び込みベルボーイが去った後、入れ違いに客室係がやって来て、お茶を入れてくれた。
部屋の設備やシステムについて説明を受けた。
私の横でかしこまって話を聞く、由香の姿が可笑しかった。
「奥様」と声をかけられ、一瞬きょとんとする由香。
慌てて「ハイ」と返事するが、顔は真っ赤だ。
コスメ類や部屋着のサイズ等の説明を受けてるのだが、一々ハイと返事をする様に、私は思わず笑ってしまった。
最後に食事の時間を確認すると、客室係は部屋を出ていった。
「も~う、ターくんなんで笑うのよ」
「すまん、だけどあんなに緊張するか」
「だって急に奥様って言うんだもん」
あの客室係が奥様と言ったのは、親子程は歳の差が無いと認識したのだろう。
それに今日は、由香もしっかりメイクしている。
夫婦に間違われご機嫌な由香は、早速部屋の探索を始めた。
寝室を覗いては、ベットの大きさにはしゃぎ、洗面所やトイレの広さに驚く。
バスルームから海が見える~、本当に露天風呂がついてると報告に来る。
すでに浴槽にお湯が張られているので、早く入ろうとせがむ。
喉が渇いたので、ビールを飲んでから行くと言うと、早く来てねと投げキッスをしてバスルームに消えた。
冷蔵庫からビールを取り出し、喉に流し込む。
由香の姿が目の前に無いと、隠していた心が痛む。
これで良いのか、本当に由香の為になるのか?
結局自分の為……
今ならまだ間に合う?、何を…泣かすのは俺。
駄目だ、もう決めた事…後悔はしない。
「ターくん!まだ~」
バスルームから由香の呼ぶ声がする。
残ったビールを一息で煽り、飲み干した。
バスルームに行くと、由香は露天風呂の方に入っていた。
ベランダにつくられた露天風呂に続くドアを開けた。
眼下には太平洋が広がる。
さすがに裸では風が冷たい。
湯舟には四人くらいは入れそうだ。
私が体を沈めると、お湯が洗い場に滝の様に流れた。
由香が体を寄せて来る。
「ターくん遅いからのぼせちゃうよ」
「ごめんな」と言いながら、由香を抱き寄せる。
由香の背に回り、後ろから両手で乳房を鷲掴みする。
アンと甘えた声をだす。
乳首を弄り、首筋にキスをした。
由香の手が私の男根を握る。
片手を秘部に差し込み指を沈めた。
ヌルりとした感覚が指先に伝わる。
由香を目の前に立たせ、自らの手で秘部を開かせ、舌を差し込んだ。
アンアンと喘ぐ。
室内側に戻り、由香のフェラを楽しんだ。
恥ずかしがる由香を壁に手をつかせ、バックから挿入する。
「アンアン、気持ち良いよ~」
激しく腰を打ち付ける
今はゴムをしていない。
逝きそうになるのに堪え、由香を逝かす事に集中した。
「ア~駄目、逝っちゃう!イクイク~」
由香は背を反らし、ガクッと腰が落ちる。
バスルームで一度由香を逝かせた後、ベットで再び抱き合った。
私も由香の中で果てた。
ツーリングでの疲れもあって、由香は小さな寝息をたてていた。
化粧をしていない由香の顔は、やはりまだ幼さを残している。
その無邪気な顔を見ていると、不覚にも涙が溢れて来た。
由香に悟られまいと、静かにベットを抜け出す。
部屋着を羽織り、ベランダに出てタバコを吸った。
微かに波音が聞こえる。
もう遅いのだ、もう引き返せない。
寒さに耐え兼ね部屋に戻ると、由香が起きて来た。
そろそろ食事の時間だと言うと、慌てて身支度を始める。
乱れたベットも整える。
そんな事はしなくても良いだろうと言うと、見られたら恥ずかしいと言う。
寝室のドアを閉めてれば分かるはず無いのだが。
そういう由香がまた可愛い。
フランス料理のフルコースとも思ったが、実は私が苦手なので、和食の懐石を部屋食でお願いしていた。
食事を運んで来た客室係は、すっぴんの由香を見て「奥様お若いですね」と驚いていた。
何となくその反応が面白く、客室係が出ていった後二人で笑った。
由香も日本酒をちょっぴり飲んで上機嫌だった。
食事の後、館内を散策し、お土産を見たりして過ごした。
寝る前にもう一度抱き合った。
チェックアウトぎりぎりまで部屋で過ごし、ホテルを出る。
ハイテンションの由香も支払いの時は、目を丸くしていた。
由香との時間も残りわずかだ。
最後のサービスエリアで、GWの予定はどうしようかと尋ねる由香に、仕事の都合がまだ分からないと答えた。
サービスエリアを出れば、流れ解散になる。
私の降りるインターチェンジは、由香より二つ手前だ。
いよいよ別れの時が来た。
ウインカーを出し減速する。
さよならのハンドサインを由香に送る。
由香も追い抜きざま、ハンドサインを返す。
料金所に続くループが涙で霞んで見えなかった。
……さようなら、俺の由香。

25
投稿者:ライラプス ◆AdKeSZp7eg
2012/04/29 13:52:32    (FeSt5t6U)
翌日予定通り、家電を処分し引越しを始めた。
すでに片付けは出来ている。
段ボール箱と家具が機械的にトラックに運び込まれる。
最後にバック一つが残された。
バックには由香のちょっとした部屋着と由香が作った二人のアルバム、由香専用と持って来た、キャラクターの描かれたマグカップが入っている。
バックを玄関に置き、手紙を一通忍ばせ鍵をかけた。
鍵はそのままポスト口に放り込む。
引越屋のトラックはすでに出発している。
私はバイクのエンジンをかけ、暖機運転を始めた。
転勤は一応上司から、三年と言われている。
父親の病気の事もあり、またここに戻れるとは思うが、約束してくれた上司が居なくなれば、すぐに反古にされるのが会社だ。
夕方になれば由香がやって来て、あのバックを見つけるだろう。
もし由香が来なければ、不動産屋がバックを見つけて連絡してくるはずだ。
ちょっとした賭けだが、必ず由香が来ると信じていた。
由香は泣くだろうか。
きっと私を怨むだろう。
アイドリングが安定した事を確かめ、バイクに跨がった。
由香との思い出を紡いだアパートを、一度振り向き見上げた。
クラッチを継ぎ走り出す。
もう振り向く事はなかった。




由香へ
許して欲しい。
こうするのが由香の為だと思う。
由香に似合いの恋人を見つけて下さい。
三年間ありがとう。


植村 隆弘


追伸 鍵は閉めてからポストにいれて下さい。




さようなら
26
投稿者:(無名)
2012/04/29 18:01:58    (yTUPWTDa)
これで完結じゃないですよね…どうかハッピーエンドにして欲しいです!
27
投稿者:ouka   oukaouka
2012/04/29 19:50:07    (UZCZbAvu)
本当に二人が最高の幸せをと願ってます。
28
投稿者:ストライク
2012/04/30 02:00:42    (l9uLg2Vo)
自分と重なる…ってか 心を鷲掴みされました。
29
投稿者:ライラプス ◆AdKeSZp7eg
2012/04/30 06:36:30    (gn/l.3AN)
約束通り三年後、再び転勤で地元に戻る事が出来た。
父親の容態は一進一退で、とりあえず急を要するものでは無い。
実家に戻る事も考えたが、通勤に不便なのでまたアパートを借りる事にした。
街中の方が便利だが、バイクが安心して置ける事の方が優先した。
郊外にある3DKにした。
隣がオーナーの家で、庭に大きな桜の木があり、アパートの駐車場まで枝が張り出していた。
あれから由香の事は、なるべく考え無いようにして来たが、完全に忘れる事などできなかった。
新に恋人をつくる事もしなかった。
相変わらず、母親からは再婚を勧められたが、無視して来た。
由香と過ごした時間と同じ、時間が過ぎた事を思うと遠い過去の様にも感じる。
由香もこの春には四年生になるはずだ。
今年は、教員採用試験に追われる日々だろう。
新しい恋人は出来ただろうか。
幸せになってくれれば良い。
三月末に入居した時は、固い蕾だった桜は、今は花の盛りと咲き誇っている。
今は自家用車で通勤しているが、人員の増加に伴い社用車での通勤に変える様に指示が出ていた。
オーナーに頼み社用車の駐車場を確保した。
会社からの帰宅途中、一台のバイクがつかず離れずついて来る。
一瞬由香を思いだしたが、排気音が違う。
アパートの駐車場に入る為、ウインカーを出したらそのバイクはあっと言う間に、私の車を追い越していった。
明日は休みだが、タクシーでも使って社用車を取りに行くつもりだ。
どうせなら早く変更する方が楽だ。
翌日早く目が覚めた。
バルコニーの窓を開けて、空模様を見る。
良い天気、駐車場の桜が綺麗だ。
部屋から花見ができるなと、つまらない事を考える。
まだ6時なので、二度寝をする事にした。

30
投稿者:ライラプス ◆AdKeSZp7eg
2012/04/30 13:04:40    (gn/l.3AN)
騒音で目を覚ました。
誰かがバイクを空吹かしいる様だ。
この時間に暴走族でもあるまいにと、寝ぼけた頭で考えた。
一二度空吹かしすると、しばらくは静かになる。
何なんだこいつは…、よく聞くとこの排気音は、私のバイクと同じ音だ。
エアクリーナーボックスを外して、Y社の集合管をつけた音だ。
一瞬私のバイクが悪戯されてるのではと思い、跳び起き窓を開けた。
そこには私と同じバイクがあった。
いや色は違う、私のはシルバーだが、そのバイクは真っ赤だ。
ライダーがこちらを見上げていた。
スモークのシールドで顔は分からない。
ヘルメットから、背中にとどく程の長い髪が印象的だ。
そして何より彼女の着ているジャケットに見覚えがあった。
私は慌ててスェットのまま部屋を出た。
音を響かせて階段を降り、裏の駐車場に走った。
彼女はバイクを降りて、私の方を見ている。
息を切らし彼女の前に立った。
彼女は私に背を向け、ヘルメットを脱ぐとそれをミラーにかけ、ゆっくりと振り向いた。
「久しぶり、いつ大型の免許取ったんだ」
私はいったい何を言ってるのだろう。
彼女は微笑みながら、「貴方が私の前から消えてすぐよ」
「よくそんな旧車見つけたな。高かっただろう」
彼女の表情は変わらない、相変わらず微笑んでいる。
「苦労したけど、私にも意地があるから」
「でもそんな事聞く前に、言う事は無いの?」
確かにそうだ。
「由香すまなかった。でも俺は由香の事を…」
もう微笑んではいなかった。
由香は両目に涙を澑て、私の胸に飛び込んで来た。
「隆弘さんの馬鹿、ずっと待ってた。いつか会えると信じてた。」
何も言えない私は、そっと由香を抱きしめた。
「だからもう何も言わなくて良いから」
由香は私の胸に顔を押し付け泣き続けた。
風が吹き抜けた。
桜の花びらが、私と由香に降り注ぐ。

後から聞いた事だが、由香はやはり会社に電話して、私の転勤を知ったらしい。
その時対応した者から、三年くらいでまた戻るかもしれませんと聞いた。
それを頼りに時々会社まで様子を見に来ていたと言うのだ。
駐車場に私の車を見つけ、跡をつけたがなかなかタイミングが合わず、昨夜やっと成功したらしい。
アパートは確認したが、昨夜は声をかける決心がつかず、一晩悩んで意を決して、今朝私を訪ねたと教えてくれた。
もし私が車を乗り換えていたり、社用車通勤が一足早く始まっていたら、由香と再会する事は無かったかもしれません。
そもそも出会った日も、あの公園で昼飯を食べてなかったら、出会う事も無かったかも知れません。
全てが運命だったと今は思います。
由香との新たな第二章が始まる訳ですが、皆様に語る程のものではありません。
お互いに、それなりの山や谷がありました。
今まで長きに渡り見て頂いてありがとうございました。
誤字、脱字、変換ミス等お許し下さい。











回りは私より若い奴ばかりた。
どうも私一人が浮いている気がして落ち着かない。
ピロピロピロと不意に携帯が鳴った。
一斉に皆が私を見る。
会社からだ。
「由隆君のお父さん、携帯は切るかマナーモードでお願いします」
先生に注意される。
教室内に笑いが興った。
私は頭を下げ、急いで廊下に出た。
「もしもし植村です」
「部長お休みのところすみません。〇〇の件ですが……」
部下に指示を出し、マナーモードに切り替え様とした時、メールが入って来た。
妻からだ。


参観ご苦労様。
由隆の様子はどうですか?
こちらは順調に勝ち進んでいます。
今年のテニス部は強いよ。
試合終わったら一度学校に戻るので遅くなるかも。
弘香は母に預けています。
お迎え宜しくね。


了解と返信して、息子の居る教室に戻った。
31
投稿者:(無名)
2012/04/30 13:35:29    (78zRMBnV)
何と言うか……感動しました。
私も含め、皆各々いろいろな経験をしてきているのですが、中々言葉で表現すのが難しい。よく似た経験をしてきていて共感出来るからこそ、感動するんでしょうね。まさに文才のなせる技です。

ありがとう。


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