2011/05/23 01:33:39
(Jdwj5T3n)
事務所に入ると、少女と私を交互に見ながら、ボウリング場の主任が声をかけてきます。
『見つけましたよ、メダル機に悪戯してたの。主犯は取り逃がしましたけど。』
主任にそう答えると、主任の顔は急に厳しくなり、電話の受話器を手に取るのでした。
「ちょ、チョット待てよ。アタシ何もしてないよ。」
警察に電話されると悟った少女が、慌てて言い訳を始めます。
『悪いな。お前ら頻繁にやり過ぎたんだ。大体こんな時間に何やってんだ?中学生!』
「うるせぇ!」
私の読みは正解だったようです。
茶髪のストレートな髪は背中の半ばまで伸びており、だぶだぶの白いセーター?カーディガン?からは華奢な白い肩が露に成っています。黒いデニム地のホットパンツから真っ白で細い足が伸び、足には素足にサンダルといった出で立ちでした。
私の実家は田舎ですので、十数年前にはこんなのがウロウロしていました。
「警察は勘弁してよ。アタシは初犯だよ。」
『誰に吹き込まれたか知らないが、自分で“初犯”とか言う奴は補導されまくってる証拠なの。』
実は、主任は警察には電話していませんでした。主犯が捕まらない限り、メダル機への悪戯が減らないのは解っていましたので、少女からいろいろ聞き出すための、このボウリング場のマニュアルでした。
『逃げた彼氏。名前は?』
主任が受話器を置いたのを確認して、少女を椅子に座らせて情報を聞き出しにかかります。
一般人は現行犯逮捕は可能ですが、その後の取り調べは出来ません。しかし、店舗等での窃盗に関しては、必要に応じてある程度の聞き取りが可能です。(“必要に応じて”ってのが曖昧な言い方ですが(汗))
「…」
『黙秘って奴ですか?自分、切り捨てられたのに義理堅いねぇ。』
そっぽを向いて何も答えない少女。私は合流場所があると睨み、主任と目配せして次のマニュアルに移ります。
『主任。やっぱり警察へ。こんなの構ってても、あのガキの情報出ませんよ。表で待ってるかも知れないんで、俺見てきます。』
「ちょ、チョット待っててば。」
『主任。警棒借りて行きますよ。』
「あんた待てって。」慌てる少女。
(ハッハァン…表で待ってんな。)
私はそう読んで、特殊警棒(実は押収品(汗))をたたんだまま表に出ました。半地下の駐車場だろうと睨んだ私は、わざとらしく出入口のど真ん中に立ち、これ見よがしに特殊警棒を伸ばします。