高3の夏休み、俺は美大進学を諦めかけていた時だったが、やっぱり絵を描き
たくて、身のほど知らずにも国語教師のN先生(当時24歳)に、10年分くらいの
勇気を振り絞って土下座してモデルになってもらった。何と表現して良いか分
からないくらいの美人だったし、スタイルも申し分なくて、“好き”とか以前
に、どうしてもN先生の絵を描きたかった。

　一日だけの約束で、父の会社の倉庫の2階にあった自称“アトリエ”で朝9時
からからN先生の絵を描いた。裸になって椅子に座ったN先生の前で、緊張と興
奮とプレッシャーで汗だくになりながら、もう必死で描いた。ひと段落つくま
で、休憩を挟んで6時間以上掛かった。

　描きあがって、さすがに疲れ果てて座り込んだ。N先生はシャツを着て暫く
絵を見ていたが、黙って俺の前にひざを付いて、「あ」と思ったらキスしてい
た。一瞬のうちに疲れも吹き飛んで、俺もN先生を抱きしめて、5分くらいキス
が続いた。

　でもって、その場で、高校生には勿体無いくらい強烈で濃厚なセックス。
実は、その2ヶ月前に同級生の女の子と初体験を目指したのだが、いざとい
う段になって俺のアレは情けない事に役に立たず、失敗に終わっていたので、
事実上の俺の初体験だった。(そんな俺にも先生が処女でない事は判った)

　絵は完成してすぐに先生にあげた。喜んでくれた。俺も嬉しかった。人
生最高の瞬間だったかも。これでN先生との関係が続けば、俺の人生も変
わっていたのかも知れない。

　幸か不幸か、その1回限りで、それも結構残酷な形で終わってしまった。
夏休みが終わりに近付いたある日、N先生が知らない男のクルマに乗って
ラブホテルに入る所を偶然見てしまった。信じられなくて、自転車に乗っ
たままアホみたいにラブホテルの周りをぐるぐる回ること2時間あまり、
出て来た車に乗っていたのは、やっぱりN先生だった。俺に気付く事もな
く、クルマは行ってしまった。フツーに考えれば、俺みたいなガキは“遊
びの遊び”に過ぎないんだろうが、思い入れの激しい高校生には大ショッ
クで、卒業するまで立ち直れずに引きずっていた。

　その後N先生は結婚して、一時期職場を離れていたが、また復帰して教壇
に立っているそうだ。俺は卒業以来一度も会ってないし、会わん方が良い
と思っている。向こうも当惑するだろうが、こっちも別の意味でショック
受けるかも知れないもんね。