去年の夏だった…小遣い稼ぎのために隣町にあるスーパーでバイトを始めた。ほんとに考えられないくらい不器用な俺はいつも周りに迷惑をかけっぱなしだった。同じ歳くらいの連中もチラホラいた。この店は店内で何班かに分けられていてリーダー格の人に仕事を習う。そういうシステムで俺の入れられた班はなんと主婦ばかり話なんか合う筈もなく少し落ちていたすると班のリーダーのSさんが気を使って一生懸命、話かけてきてくれた。30~40代くらいの主婦ばかりの班に入れられて溶け込めずにいた俺に手を差し出してくれた。
Sさんとは色々コミュニケーションをとるようになった。Sさんは29歳で10歳になる子供がいるらしい…ということは言い遅れたが俺は今17歳…2年後には所帯を持っていた事になる考えられない…パートをするきっかけというのも、旦那の稼ぎだけではちと寂しいので家計を助けるために始めたのが一つの理由。次に子供がやっと手を離れるようになり、専業主婦というマンネリズムから抜け出すのがもう一つの理由らしい…。俺はこのSさんに急に親しみが湧いてきた。というのもSさんの方からやたらと話かけてきてくれるからだった。
数日後の事だった…バイトが終わり着替えをして裏口から出てチャリに乗って帰ろうとした時に道の端に1台の軽が止まっていた。それとなく通り過ぎる時に運転席を覗くとSさんが下を向いていた。俺が窓を叩きながら「なにしてんの?」と聞くとSさんが顔を上げた。泣いていた。ガビン(やばっ…可愛い…でもなんで)窓を開けて必死に作り笑いをして「なんか食べに行こっか?」突然の誘いに戸惑いこそしたものの俺はチャリを置いてSさんの車の助手席に座っていた。少し車を走らせて離れた所にあるファミレスに入った。
いざ向き合って座るとSさんの顔がまじまじと見えて意外と恥ずかしかったりした。俺はなんとか店の事や学校の話題で場を持たせた。いつもよりよく喋っていたと思う…けれども12歳も歳が離れている、そんなに話題が持つわけない。ちょっとした時に2人の間に沈黙が訪れた…Sさんが「あのね…さっき…」と切り出した。俺はドキドキしながら耳を傾けた(なんで俺がこんなにドキドキしなくちゃいけないんだ?)どうやらSさんの旦那さんが他の女性と浮気をしていた事がわかったらしい…それが涙の理由らしい。(そんな事なんで俺に言うんだ!?)