『今、〇〇駅前バス乗り場の待合室にいます』
メールするようになって二ヶ月ほどの美晴からの突然の連絡でした。
当時俺は21才美晴は中学二年14才、学校は夏休みに入ったばかりの七月も下旬の夕方でした。
来るなんて聞いてないし、会いたいとも言われてないし、とにかく突然のことで驚き、仕事が終わるまで待てと返事だけしました。
仕事を片付け、美晴に電話すると、まだ待合室にいるとのことで、急いで〇〇駅前バス乗り場に向かいました。
写メ交換はしてたし、それらしい人は美晴しかいないのですぐわかりました。
ボストンバッグを膝に抱えた女の子がいました。
『突然どうしたの?』
『家出してきたの』
何が何だかわからず、とりあえず腹も減ったし、駅前のラーメン屋に入りました。
事情を聞きました。
美晴はお母さんと二人暮らしをしていたけど、二年くらい前にお母さんは再婚、三人暮らしからお母さんは美晴の弟を出産、自分の居場所がないような気がして、嫌になったと言いました。
親戚のお姉さんのとこに、しばらくやっかいになるとお母さんに言ったら、引き止めるどころか、どうぞどうぞと言わんばかりに送り出された、とのことでした。
しかしそのお姉さんは、彼氏と同棲中とのことで断られ、お姉さんのとこにいる口裏を合わせてもらう約束だけして、俺に連絡を入れたそうでした。
初めて実物を見た美晴は、一見メガネをかけたガリ勉風のお嬢様で、でも可愛らしい女の子でした。
八畳一間、バストイレにダイニングキッチンのみの小汚い俺のアパートに泊めるのかと戸惑いましたが、そうするしかないのかと思いました。
アパートの駐車場、車内で美晴を少し待たせ、俺はとにかく部屋を片付けました。
布団は以前、親父が泊まりにきたとき、置いていった布団があり、辛うじて二組あり助かりました。
何とか多少片付けて、美晴を部屋に入れました。
とにかく突然のことで、あわくっていた俺に美晴は何度もごめんなさいを言いました。
美晴はボストンバッグから、シャンプーやリンス、洗面道具、学校の宿題を取り出しました。
それを部屋の隅に置き、ちょっと落ち着いた様子でした。
そして部屋を見渡していました。
『ポスターとかも貼ってないし、意外とシンプル』
そう言われました。
何日くらいいるのか、聞いてみました。
『う~ん、わからない。けどお母さんには二週間くらいと言ってきたから、多分そのくらい』
そんなに?つい言ってしまいました。