オレは声優を目指して勉強する中で、ヴォイストレーニングに通っていた。
先 生はミュージカルを中心に活躍する女優で40歳。オレよりも17歳年上だった。
ぽっちゃりではあったがキレイな声の美人で、芸能人のオーラと言うのか?部屋に入ってくるとその場の空気を華やかに感じさせる人だった。
先生は東北出身の日本人だったが、どことなく外国人かハーフの様にも見える顔立ちで、金髪のポルノ女優を見ると顔立ちが似てるなぁって感じる事がある人妻だった。
オレは個人レッスンではなく、レッスン料の安い4〜5人でのグループレッスンを受けていて、レッスンを受け始めて2年くらい経っていた。
レッスンは先生の自宅で受け、1年くらい経った辺りからレッスン後に他の生徒達と近くの店で食事する様になったくらいで、ごく普通の先生と生徒の関係だった。
そんな関係が変わったのは、先生の師匠である方のレッスンを受けた日だった。
一緒にレッスンを受けてるA美が大きな舞台のオーディションと音大受験を受ける事になり、レッスンをよりがんばる様になるも課題点をクリアする事がでない事から、気分を変えるのと違う視点からのアドバイスをもらうために、先生の師匠のお宅でレッスンをする事になった。
一緒にレッスンを受けるオレや他の仲間のレッスンも、一緒にレッスンを行う事になった。
このレッスンで課題点をクリアする事ができたA美は、感覚を忘れない内に復習すると言ってすぐに帰り、他の仲間もバイトや養成所のレッスンで帰って行って、先生と二人きりになった。
「お昼はだいぶ過ぎてるけど、何か食べて行きましょ。今日は奢ってあげる」
先生はそう言うと手を挙げてタクシーを止め、後部座席に先生と並んで座っていると、仄かに香水の匂いがした。
それまで先生を性的な目で見た事はなく、レッスン中もレッスンに集中力してて先生が傍に来ても匂いを意識した事はなかったが、先生の体臭も混ざってなかのか?この時初めて認識した匂いは、性的興奮を掻き立てられる様な気がした。
タクシーは10分もしない内に上野に着き、先生と上野の繁華街を歩いた。
何が食べたいか聞かれるも色んな店があり、目移りして決められずにいたがどこもランチは終わっていて、外看板に色んな一品物のメニューが手書きされてる店に入った。
「あの子、いつものレッスンとは別に個人レッスンも頼まれてみてたんだけど、オーディション直前でやっと課題点がクリアできて、なんか一仕事やり終えた気分だから、まだ明るいけど飲んじゃおっか。
あんたも…ビールでいい?」
「あ、オレ、ビールは苦くて好きじゃなくて…ラムネサワーで」
「お子ちゃまめ。
黒ビールとラムネサワー下さい」
「はいよ。
いいわね、若くて良い体格のツバメじゃない」
「教え子よ」
「あら、失礼」
女将っぽい店員は時折そんな意味のわからない単語を交えながら先生とやり取りをしつつ、酒とお勧めの料理を並べていった。そして、オレと先生は今日のレッスンの事や、他愛もない話しをしながら料理を食べつつ、昼間から結構なペースで飲んだ。
途中から電気ブランという物を飲む内に、オレは普段飲む時以上に酔いが回っていった。