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露出実行報告(女性専用)

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2
投稿者:恭子
◆nkgalYGPXs
趣味の風景撮影を終えて、早春の山を下っていました。
登頂することを目指していたのではないので、それほど登ってきたわけではありません。
とはいえ、けっこう汗をかいていました。
思っていたよりもわりとハードな山道だったからです。
登山用とまではいわなくても、いちおうトレッキング用のフル装備で臨んできていました。
それでも疲労感でいっぱいです。

(疲れた)
(ザックが重い)

やっと登山道の入口まで戻ってきました。
それからはしばらく平地を歩いていきます。
へとへとになりながら駐車場まで辿り着いていました。
とめてあった自分のレンタカーに乗り込みます。
発進させました。

(おなかすいた)

まだ夕方前の時間帯です。
30分ほど運転して、予約していた宿に到着しました。
本当はビジネスホテルがよかったのですが・・・
あいにくみつからなくて、代わりに選んだすごく安くて小さい旅館です。
かたちだけのフロントで呼び鈴を鳴らしました。
奥のほうから係のおばちゃんが出てきます。
チェックインしました。
お金をかけたくなかったので、食事なしの素泊まりです。

(昭和って感じ)
(お客さんいるのかな)

ずいぶん古い建物でした。
廊下を歩いていって、自分の部屋に入ります。
小さいテレビと冷蔵庫があるだけの八畳間ぐらいの和室でした。
寝るためだけの宿のつもりで予約しましたから、何も文句はありません。
おなかがすいていました。
用意してきてあったカップ麺やパンを荷物から出します。
でも・・・

(先に汗を流そう)
(お風呂に入りたい)

部屋にお風呂はついていません。
チェックインしたときに、浴場の場所の説明を受けていました。
必要なものを持って部屋から出ます。
廊下を歩いていって、いちばん奥の角を曲がりました。
どん詰まりになった通路の狭いスペースに男湯と女湯の入口が並んでいます。
その前には自販機とベンチもありました。
ひとりでベンチに腰かけていたおじさんに会釈しつつ・・・
女湯の引き戸は開いたままになっていて、暖簾だけがかかっています。
その瞬間に違和感を覚えていました。

(ちがう・・・)
(今の目はおかしい)

暖簾をくぐって脱衣場に入ります。
時間が早くてまだ誰もいませんでした。
たかだか4~5メートル四方ぐらいしかない狭い脱衣場です。
入口でスリッパを脱ぎながら、
(そういうことか)
そのときにはもう気づいていました。
建物の構造が古くて、入口からの曲がり角度がありません。

(あのおじさん)
(やっぱり)

一瞬で察知していました。
こんなの自慢できることでもなんでもないですが・・・
経験上、私はもう・・・すぐにわかるのです。

(間違いない)
(あの人、絶対そう)

まるでお風呂からあがって涼んでいるかのように・・・
人待ち顔でベンチに腰かけていたおやじ・・・

(あの場所からだと)
(たぶん見えてる)

確信していました。
脱衣している女の姿がちらっとでも見えないものかと・・・
下心を持ってあの場に腰かけているのです。

(うわー)

あまりにも唐突すぎて、考えるいとまもありませんでした。
でもあの目は絶対そうです。
いきなりのなりゆきに思考停止したまま、思いっきり頭に血が昇っていました。
思いもよらないシチュエーションに若干動揺しながらも、
(私、狙われてる・・・狙われちゃってる)
自虐的な興奮がわきあがります。

(普通の女なら)
(まず気づかない)

だとしたら、いまの私にいったい何の非があるというのでしょう。
素知らぬふりをしていました。
死角になっていない位置にとどまってしまいます。
いちばん暖簾に近い場所のロッカーの前に立っていました。
扉を開けて、持っていたものを中に入れます。

(だめ、だめ・・・)
(もっと奥のロッカーを使わないと)

(この場所だと)
(おじさんに見えちゃう)

おじさんにとっても嬉しい誤算のはずでした。
廊下の角から現れた私を見たときの、さっきのあの目を思えば明らかです。

おじさんよかったね・・・
誰か女が来ないかと期待してたところに、
(びっくりしたでしょ)
まさかのこんな美人が現れちゃったんだもん・・・

(一瞬、釘付けになってたよ?)

しかも、よりによって入口からの死角になっていない手前のロッカーを選んでしまった『彼女』です。

(だめだめだめ)
(おかしなこと考えないで)

心の奥底に潜んでいた『もうひとりの自分』が耳もとでささやきかけていました。
おまえは悪くないだろ?
(気づいてないんだから)
降ってわいたようなドキドキじゃないか・・・

(だめだめだめ)
(ほんとに見えちゃう)

自分の左3メートルぐらいのところに入口の暖簾がぶら下がっています。
暖簾の下は、もちろん何もない空間でした。
立っていて目線の位置が高い私には何も見えていません。
すぐそこの通路の床が視界に入っているだけです。
でも、私にはわかっていました。
あの向こうでベンチに腰かけているおじさんの目の高さは、暖簾の下端より低いのです。
数メートル奥にいる私の脚が見えているはずでした。

(ほんと一瞬のチャンスだろ)
(利用しちゃえよ)

どうせ二度と会うこともない男性です。
気づかぬふりを続けてやれば、あのおじさんが喜ぶに違いないのはわかっていました。
でも私は、
(そんな安い女じゃない)
こんなおやじに覗き見られるなんてイヤ・・・

(じゃあなんで)
(そのロッカーを選んだんだよ)

自分で自分を抑えられません。
ロッカーの中に入れたポーチから小銭を取り出しました。
かーっと高揚しながら、
(だめえ、だめえ)
戻るように入口のスリッパに足を突っ込んで・・・
再び暖簾をくぐります。

(ひいん)

案の定、さっきと変わらず『こっち向き』でベンチに腰かけているおじさん・・・
まさに値踏みするような目でした。
50代ぐらいのその男性が、私の容姿に見入っています。

(いやんいやん)
(こんなおやじ)

正直に書くと、その視線がすごく快感でした。
注目されていることに気づかないふりをして、自販機でボトル缶のコーヒーを買います。

やっぱりだ、
(暖簾より顔を低くすると)
脱衣場の中が見える・・・

(ああん、おじさん)
(私、むりだよ)

「ジー・・・コトン・・・コトン・・・」

お釣りのコインが1枚ずつ返却口に落ちていました。
指先でつまみ損ねたふりをして、
「ちゃりっ」
そのうちの1枚を落としてしまいます。
完全に演技モードに入っている自分がいました。
目を細めて、足もとを見回す『彼女』・・・
すぐそこの床に落ちているのに、みつけることができずにいます。

(ああ、おじさん)
(私の顔を見て)

狙いどおり、おじさんがベンチから腰を浮かせて拾ってくれました。
手渡してもらいながら、さりげなく強度の近視(嘘ですが)だということをアピールします。

「すみません」
「メガネ、部屋に置いてきちゃって」

ちゃんと相手の目を見ながら、
「ありがとうございます」
にっこりはにかんでみせました。

鼻の下に口ひげをはやした、いかにもいやらしそうな印象に思える男性です。
再び相手がベンチに腰をおろしたのと同時に・・・
そのおじさんに背を向けるようにして目の前で女湯の暖簾をくぐってみせました。

(ひいいん)
(喋っちゃった)

そこからはあっという間でした。
スリッパを脱ぐ彼女・・・
背にした暖簾のすぐ向こうには、ひげおやじが鎮座しています。
脱衣場に上がってすぐのところにある自分のロッカーに缶コーヒーを置きました。
と同時に、トレッキングパンツのフロントを外します。
そう・・・普通の女なら、
(気がつかない)
入口から曲がり角度がない場所にいるなんて、そこまで意識がいかなくて当然でした。
脱衣場に入れば、あたりまえにもう外から見えなくなっていると思ってしまうのが普通の感覚です。

(あああ、だめえ)

心臓が爆発しそうでした。
自然体を装ってトレッキングパンツを脱ぎます。

(ひいいいい)

手早くまるめてロッカーの奥に突っ込みました。
左右の太ももが剥き出しです。
下着はシンプルな白パンツ・・・

(ああん、きっと)
(固唾をのんで見てる)

恥ずかしすぎでした。
あの人は、この覗き見シチュエーションを期待してわざとあの場所に陣取っていたのです。
ぶら下がっている暖簾の下は、床まで1メートルぐらい空いていました。
腰かけたままでももっと頭を低くしようものなら、
(それだけで)
すぐそこで脱いでいる私の脚や太ももどころか・・・
下手すれば、おなかぐらいまで見えてしまいかねません。

(いやんいやん)
(あっち行って)

ひざが震えそうでした。
気持ちを奮い立たせて、
(いまやめたらかえって不自然)
パンツに手をかけます。
知的な感じのする美人でした。
たったいま自分と会話を交わしてから、まだ30秒もたっていない『彼女』です。
その彼女が、わずか数メートル向こうで・・・
下着のパンツを、
『するっ』
脱いでいました。

(あああ、イヤああー)

被虐の興奮に脳みそがとろけそうになります。
脱いだパンツをロッカーに放り込みながら、
(いやんいやん、おやじ)
あっち行って・・・
息が詰まるような重圧に押しつぶされそうでした。
なおも悪魔がささやきかけてきます。

(向いてやんなよ)
(ちゃんとあっちを)

泣きそうでした。
上半身のカットソーを脱ぎながら、
(いやあー、嫌あああ)
からだをまっすぐ暖簾のほうに向けます。

(いやんいやん)
(恥ずかしいよ)

おやじのほうを向いて立ったままカットソーから頭を抜いていました。
ブラも外し終えるまで、
(だめえー、いやああ)
アンダーヘアの薄い『股の割れ目』をおさえることもできません。
本当はあのおやじに言ってやりたいぐらいでした。
これでも私、会社では・・・

(けっこうみんなに)
(憧れられてるんだから)

でも、そんなことは一切関係なく今度は背を向けてしまう彼女です。
足を上げるのではなく・・・
上半身を屈むように手を伸ばして、
『すっ』
ソックスをおろしていました。
開ききったお尻の真ん中を覆ってくれるものは何もありません。

(ああああ、おやじ・・・)
(見ないで)

続けて、もう片方の足もでした。
自分の前であのはにかみの美人が、
(ああああ、あああ・・・)
お尻の穴をまる見えにしてソックスを脱いでいます。
でも・・・服を脱ぐのなんて、あっという間に終わりでした。
彼女自身は何も気づいていないのです。
完全に自然体に見えていなければなりませんでした。
ちゃっちゃかロッカーを閉めて、そのまま死角へと消えてみせます。

(どきどきどき)
(どきどきどき)

恥ずかしくて泣きそうになるのをこらえていました。
サッシ戸を横に開いて浴場に足を踏み入れます。
その瞬間、
(だめえ、もうだめ)
耐えられずに涙があふれていました。
被虐的な興奮に途轍もなく高揚している自分がいます。

(かわいそう・・・私、かわいそう・・・)

あれ以上のことはできせんでした。
演技だったとバレるわけにはいかなかったからです。
でも、
(ああん、もっと)
もういちどチャンスがありました。
お風呂をあがったときなら、もっと時間を稼ぐことができます。

(さっきの缶コーヒーを飲めばいい)
(ボディクリームも持ってきてる)

大浴場というほどの広い浴室ではありませんでした。
お湯も温泉ではない普通のお湯です。
2つしかない洗い場のイスに腰をおろしました。
山歩きで汗をかいてしまっていたので、ちゃんとお風呂したい気持ちがあるのも事実です。
大急ぎでクレンジングをして、全身も洗いました。
最後に一瞬だけ湯船に入って・・・
というときに、
『ががーっ』
サッシ戸が開いて二人連れのおばちゃんたちも入ってきます。

「ざばっ」

すぐにお湯からあがりました。
あのシチュエーションを逃したくなくて気がはやります。

(お願い、おじさん)
(まだそこにいて)

お風呂好きの私が、わずか10分ほどで浴場から出ようとしていました。
覗き見されるとわかっていて、
(どきどきどき)
はだかで男の前に行こうとしている私・・・
被虐的な感情の昂りに、わきあがる興奮を抑えられません。

(恥ずかしいよ)
(こんなの泣いちゃう)

『ががーっ』

サッシ戸を開けて脱衣場に戻りました。
と・・・

(えーーー)

きっとあのおばちゃんたちが暖簾をくぐったとき閉めてしまったのでしょう。
入口の引き戸が閉じてしまっていました。
半透明の曇りガラスの向こうに、暖簾の朱色がぼわっと透けています。
正直、すごくがっかりしました。
もうあのどきどきを味わうことはできません。
普通にからだを拭いてドライヤーをして・・・
部屋から持ってきた旅館の浴衣を着ました。

引き戸を開けて、
『ぱさっ』
暖簾をくぐります。

(だよね)
(もういないよね)

誰もいませんでした。
驚いたのは、ベンチの位置が違っていたことです。
自販機のこっち側ではなく、あっち側にありました。
きっと、本来はそこが定位置なのでしょう。
あのひげおやじ、
(やっぱり意図的だったんだ)
わざわざベンチの場所まで変えちゃって・・・

またとないタイミングを逃したことに落胆しながら廊下を歩いていきました。
自分の部屋に戻ります。
ポットのお湯でつくったカップ麺を食べながら、今日撮ってきた写真をチェックしている私ですが・・・
なんだかすごく気もそぞろになっていました。

(あーあ)

ぜんぜん集中できません。
布団を敷いて、ごろんと横になりました。
さんざん歩いた1日だったので、その疲れが睡魔となって襲ってきます。

(いま何時?)
(まだこんな時間じゃん)

時計を見るとまだ17時をまわったばかりでした。
いくらなんでも寝るには早すぎますが、ひげおやじのことを思い出しながら布団にもぐります。

(脱衣場覗けて)
(きっと喜んでただろうな・・・)

心地の良い睡魔にまかせて、ちょっとだけうとうとしました。
はっと目を覚ますと、23時になっています。

(うわ、まじ?)

電気もエアコンもつけっぱなしでした。
布団から出ます。
のどがからからでした。
部屋まで持ち帰っていたさっきの缶コーヒーを開けてがぶ飲みします。
うたた寝する前とちがって、心が平らかに落ち着いていました。

(ちゃんとゆっくり)
(お風呂に入りたい)

部屋にお風呂がついていないのは不便ですが・・・
さっきの浴場に行けば、ちゃんと足を伸ばして入れる湯船があります。
タオルやポーチを持って浴衣姿で部屋を出ました。
廊下を歩いていって、
(からだ、だるー)
角を曲がります。
女湯の暖簾をくぐって、入口の引き戸を開けました。

(誰もいない)
(貸し切りだ)

そもそも大旅館ではありません。
宿泊客数だってきっとわずかなものでした。
そして、もう遅いこの時間です。
夕方のときとは違って、ちゃんとゆっくりお風呂に入りました。
狭い浴場ですが、誰もいないのでいい気分です。

(これでお湯が)
(温泉だったらよかったのに)

そんなふうに思わなくもありませんが、そもそもそんな贅沢な旅館ではありませんでした。
ひとりでのんびりくつろいで、お風呂からあがります。
脱衣場に戻ったとき・・・
さっきの高揚感がよみがえってきていました。

(あのひげおやじ)
(絶妙だったな)

あのときの自分に戻ったかのように、
(どきどきどき)
動悸がしてきます。
ちょっと冒険してみたくなりました。
もうこの時間ですから、どうせ人もほとんど来ないとわかっています。

(どきどきどき)

とりあえずバスタオルでからだを拭きました。
下着をつけずに直に浴衣だけをまといます。
スリッパをはきました。
耳を澄ませてみますが何の気配も感じません。
入口の戸を開けて、そこに誰もいないことを確かめてから・・・
暖簾をくぐって通路のスペースに出ました。

(どきどきどき)

自販機の横のベンチに腰かけます。
周囲をくまなく見渡して、防犯カメラがないことを確認しました。
浴衣の胸もとをだらしなく開いてみます。
片方のおっぱいを出したまま、佇んでみました。
・・・が、あたりまえですが緊張してびくびくしてしまいます。

(何やってんのそんなことして)
(誰か来ちゃったらどうするの)

スリッパの足音が響く通路でした。
廊下を歩いてくる人がいれば、あの角を曲がってくるより前にわかります。

(だいじょうぶ)

頭がくらくらしそうになりながらも・・・
息が荒くなってくる自分を感じていました。

(今なら誰もいない)
(なんでもできる)

すぐそこに男湯の入口があります。
暖簾がかかっていて・・・引き戸は『開いたまま』になっていました。
もしかして、
(入ってる人、いる?)
急に心臓がばくばくしてきます。
さっきのひげおやじのように覗いてみようかと思いました。
気配を殺してそっと近づきます。
暖簾の前でしゃがんでみると、2人分のスリッパが並んでいるのが見えました。

(どきどきどき)
(どきどきどき)

女湯と同じです。
入口からの角度がなくて、脱衣場の手前半分ぐらいが覗けていました。
でも、人の姿はありません。
気配もないということは・・・
ふたりとも今、浴場に入っている最中ということでした。

(どきどきどき)
(どきどきどき)

通路には私しかいない・・・
男湯からもしばらく人は出てこない・・・

(どきどきどき)

あらためて耳を澄ませてみます。
物音ひとつなく、まるでこの宿そのものが寝静まっているかのような空気感でした。
誰もいない通路のどん詰まりで・・・

(どきどきどき)
(どきどきどき)

立ったまま自分の胸に手をあてている私がいます。
浴衣の生地に乳首がこすれて、それだけで頭がふわーっとなりました。
そっと撫でまわしながら、
(あ、あ・・)
変な声が出たりしないように奥歯を噛みしめます。
でも・・・ふと、思いとどまりました。
男湯の暖簾が目に入ったのです。

(ばか・・・だめ)
(そんなこと)

われながら、魔が差したとしか言いようがありませんでした。
全神経を研ぎ澄ませて・・・
周囲に気配がないことを確かめながら、その場でスリッパを脱ぎます。
次の瞬間には、からだが動いていました。
男湯の暖簾をくぐって中に入ったと同時に、心臓が爆発的に鼓動しています。

(やばい・・・やばい、私)
(やばい・・・)

『やましい』なんてものではありませんでした。
ここは男湯の脱衣場です。
忍び込んだ瞬間から、
(ばくばくばく)
もう息をするのも忘れていました。
悪いことをしているという強烈な後ろめたさに・・・
目の前の視界の見え方がカクカク小間切れのようになっています。

(ひいい、ひいいいー)

帯を解きました。
浴衣を脱ぎ捨てて、全裸になった私・・・
すでに頭の中が真っ白状態で、
(ひいん、ひいいん)
自分が何をやっているのか自分でもわかりません。
藤の丸イスがありました。
お風呂あがりの男の人がいつも座っているはずのイスです。
そのイスに腰かけて、自分のお尻を押しつけていました。

(いやん、いやあん)
(きたないよう)

隣にあったもうひとつの藤イスも手に取って、
(いやああ、やめて)
人が座る部分のところに、これでもかというぐらい胸をなすりつけます。

(嫌ああああー)

そして慌てて立ち上がっていました。
浴衣を拾い上げて腕を通します。
帯を結ぶ余裕もなく腰に巻いただけで、逃げ出していました。
暖簾をくぐって通路に脱出してスリッパを拾って・・・
そのまま女湯の暖簾をくぐって、もとの脱衣場に戻ります。

(ばくばくばく)
(ばくばくばく)

死にそうでした・・・死にそうに興奮していました。
罪悪感に胸を締め付けられながら、
(ああああん)
浴衣を脱いでロッカーに突っ込みます。
浴場に直行して、湯船に飛び込んでいました。

(ばくばくばく)
(ばくばくばく)

もう、私・・・死んじゃう・・・
こんなことしてたら捕まっちゃう・・・

あっちの脱衣場に侵入していたのは、正味30秒ぐらいのものです。
結果的に見つからなかったからよかったようなものの、
(やばい、私・・・あんなことした)
強烈な罪悪感はやむことがありません。
でも、バレなかったことで異様なほど高揚している『私』・・・
もう衝動がとまりませんでした。
お湯からあがってすぐまた脱衣場に戻ります。

タオルで簡単にからだを拭いただけで、
(どきどきどき)
入口の引き戸を開けました。
暖簾から首を出して、人がいないことを確かめます。

(どきどきどき)

もういちど確かめました。
耳も澄ませますが、
(どきどきどき)
誰もいません。

はだかのままでしたが、
(あああん)
さささっと男湯の入口の前に行って・・・
まださっきの2つのスリッパがあることを確かめました。
そして一瞬でまた女湯に戻ります。

(まだいる)
(出てきたら女湯の前を通る)

脳がフル回転していました。
女湯の入口の引き戸をいちばん開けられるところまで開けて、そのまま『開けっ放し』にしておきます。
暖簾は、縦長の4枚の布が並んでぶらさがっているような形のものでした。
ひとつひとつの布は幅30~40センチぐらいでしょうか。
いちばん端の1枚だけ、わざと上の竹棒までめくりあげてしまいました。
その部分だけ何もぶら下がってないのと同じです。

(女湯の前に来たとき)
(まる見えになっちゃう)

いかにもお風呂あがり直後であるかのように、濡れたタオルを頭に巻きました。
保湿用のボディクリームを手に取ります。
肩や腕に塗って伸ばしました
もういちど、手のひらにクリームを出します。
そこで動きをとめました。

(どきどきどき)

男湯の人がいつ出てくるかまったくわかりません。
気持ちがじりじりしました。
入口からいちばん手前のロッカーの前に立って・・・
その瞬間を待ちます。

(どきどきどき)

めくれた暖簾のところから外の通路が見えていました。
私からは5メートルもありません。
本当にすぐそこって感じでした。
気づいていないふりを装うのですから入口のほうを正面にして向くわけにはいきません。
心の中の悪魔が私にささやいていました。

(だいじょうぶ)
(横向きでいればいい)

簡単なことです。
状況的には、実際に起こりえるハプニングの範疇でした。
彼らが通り過ぎるとき瞬間的に目にする『偶然』のヌードですから・・・
見えてしまうのも、ほんの一瞬のことにすぎません。

ああだめ、
(泣きそう)
超どきどきする・・・

時間の感覚があまり定かではありませんが、たぶん5分か10分ぐらいでしょうか。
ロッカーの前で立ったまま、
(どきどきどき)
そのときが来るのをぼーっと待っていました。
やがて、唐突に気配を感じます。

(どきっ!)

男性の声でした。
酔っぱらいのように威勢のいい、げらげら笑っている声が聞こえています。
ふたりの男の会話の声が、
「・・・・かよー!」
男湯の入口から通路まで出てきたのがわかりました。
その瞬間、心臓が破裂しそうなります。

(ひいい)
(やっぱり無理)

あっという間に迫ってきていました。
動揺して、
(だめだはやく)
入口から見えない死角になる場所に・・・
でも足が動きません。
さっきまで私の味方だったはずの悪魔が、気弱な『彼女』を陥れようとしていました。

(通り過ぎるのなんてどうせ一瞬だろ?)
(ほんの1秒もないよ)

秒にも満たない一瞬だけど・・・
その瞬間、私は全裸で男たちの視界に入ってしまうことになるのです。
そう思うと死ぬほどどきどきしました。
手のひらのクリームを伸ばして、腕に塗ります。
自然体の動きをはじめていました。

「・・・だってよ」
「まじでー!?」

通りぎわにこっちに顔を向けさせるために・・・
彼らの声が通りかかる寸前に、
「くしゅん!」
わざと聞こえるように嘘のくしゃみをしてみせます。

「木曜だって言っ・・・」
「・・・・・」

会話の声とスリッパの足音がいきなりぴたっと消えました。

(うそ、うそ)
(いやん、いやんいやん)

私は腕にクリームを塗りながら、自分のロッカーに向いて立っています。
気配でわかりました。
一瞬だけ目に入りつつも見なかったふりして通り過ぎていく、ではなく・・・
ふたりともそこに足をとめて立ち止まってしまっています。

(いやああー)

気が狂いそうでした。
ちがうちがう、
(立ち止まらないで)
もう行ってーー
そのまま行ってーー

(ひいいん、やばい)

でも、もう自分をとめられませんでした。
頭に巻いたタオル以外、一糸まとわぬ『すっぽんぽん』の私です。

横向きでもそうとわかるほっそり美人でした。
その彼女が、手のひらにクリームを足して・・・
彼らに背を向けています。

(いやあー)
(あっち行って)

外から見えてしまっていることに気がついておらず・・・
上半身を前屈みにして、
(あああん)
脚にクリームを塗り伸ばしていました。
ひざを軽く曲げたまま、お尻を突き出しているような格好です。

(ひいいん、恥ずかしい)
(見ちゃイヤああー)

いま真後ろで男が見てるなんて知ったら、無垢な彼女はどれほど泣き崩れることでしょう。
なまめかしくも無防備すぎる後ろ姿でした。
彼らの眼前ですべすべのお尻が開ききったまま・・・
かわいそうに、
(ひいいいん)
股の割れ目を隠すものは何もありません。
前屈姿勢でクリームを塗りながら、屈辱感に涙がにじみそうでした。

(死ぬ・・・死ぬ・・・)
(息ができない)

入口のほうに背を向けたまま下着のパンツとブラをつけます。
浴衣と帯を手に持って・・・
彼らからは死角になる、見えない場所へと姿を消してみせました。

(ばくばくばく)
(ばくばくばく)

泣き出す寸前のところを必死にこらえながら、浴衣をまとって帯を結びます。
私自身はまともに彼らを見ていないので、相手がどんな人たちなのか見当もつきませんでした。
いまさら顔を合わせる勇気などありません。

(もうだめ)
(恥ずかしすぎる)

時間を稼ぎました。
頭のタオルを取って、
「ヴィーーー」
ドライヤーをします。
頃合いを見計らって自分のものをすべて手に持ちました。
スリッパをはいて暖簾をくぐります。

(どきどきどき)

無人になっていました。
ほっと胸をなでおろします。
もはや人目に触れたくないという一心でした。
罪悪感と後ろめたさに責め立てられるような心情ながら・・・
背徳的な興奮も強烈にぶり返しています。
まさに逃げるような気持ちで自分の部屋へと戻る『私』でした。


(PS)
長文にお付き合いくださってありがとうございました。
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24/03/24 11:10 (7eCIIVR3)
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