もう、震えは指先だけではありません。
人前で服を脱いでいくことに対して理性がもたらす抵抗感に、心を締めつけ
られます。
そして、その抵抗感を無視しなければならない大きなプレッシャーに、全身
が硬直してしまいそうになります。
肩や脚まで震えてしまいそうでした。
それでも、ブラウスを脱いで床に置きました。
これで上半身は、ライトグレーのブラだけです。
きっと見ているはずの、モヤシ君の視線を強烈に意識してしまいます。
自分の顔がこわばってしまっているのではないかと心配になります。
(自然に、自然に・・・)
できるだけ無表情を心がけました。
ストッキングに手をかけ、立ったまま脱いでいきます。
かがむのではなく、片脚上げするような感じで足を抜きました。
(あっぁ、きっと見てる。。。)
ショーツも、ブラとお揃いのライトグレーのパンティです。
上半身はブラ、下半身はパンティ1枚だけの姿になりました。
ラグマットの上に『ぺたっ』と座ります。
あらかじめガラステーブルを壁際に寄せてありました。
横窓のすぐ下のところの壁にぴったりとつけてあります。
テーブルの高さは40cmぐらいで、窓の下辺の20cmぐらい下にガラス
テーブルの面がくるぐらいの感じです。
持ってきた夕刊を、そのテーブルの上に広げます。
下着だけの姿で、新聞を読みはじめます。
座ったまま、横窓に顔を向けることになります。
テーブルの奥行き幅(?)はせいぜい60~70cmぐらいでしょうか。
ちょうどガラステーブルを挟んで、私とモヤシ君とが顔を見合わせている状
態です。
レースカーテンのせいで私からは何も見えませんが、1mとない至近距離
で、お互いに顔を見合せている格好になっているはずです。
緊張感はありましたが、恥ずかしさはありませんでした。
私は、モヤシ君に自分の顔をよく見てもらいたかったのです。
自画自賛になってしまって心苦しいのですが、私は外見の容姿にだけは、ほ
んの少し自信があります。
実際、これでも職場では『清楚な美人』として、とおっているぐらいなので
す。
モヤシ君が、極度に内向的な性格なのは明らかです。
顔を合わせて挨拶を交わすときだって、彼はいつも私の顔から視線をそらし
ていました。
(これが、あなたが狙っていた女の顔よ。。。)
(こんな女を覗けて幸せでしょ?)
今なら、私の顔をあますことなく観察できるはずです。
(あなたが覗きたがっていたお姉さんよ。。。)
(満足のいく獲物でしょ?)
ナルシストなどと批判されてしまいそうですが・・・
私は、彼に自分の幸運を噛みしめてもらいたかったのです。
彼が覗いている相手が、こんな顔の私だということを。
私は新聞に目を落としています。
でも本当は、実際には何て書いてあるのかなんて、ぜんぜん頭に入ってきて
いません。
記事に集中なんてできるはずもなく、内容を把握することさえできません。
新聞に視線を置きながらもモヤシ君の様子が気になってしかたありません。
でも、部屋の照明をつけている限り、こちらから彼の様子を見ることはでき
ません。
(ぜったいに、見てる。。。)
見ていないはずがありません。
あの子が私を覗いています。
下着姿の私の姿を・・・。
ガラステーブルの上に広げた新聞を、そのまま床に降ろしました。
テーブルから少し遠ざかった場所に広げ直して、足を崩します。
新聞を読むふりを続けました。
ブラとパンティ以外は身につけていない状態です。
まる出しになっている太ももに、自分でも華奢さを感じます。
室内との温度差で窓ガラスを曇らせたくなかったので、エアコンをつけてい
ませんでした。
こんな姿で本当は寒いはずなのに、一向に寒さを感じません。
お行儀悪く、片ひざを立てます。
パンティがけっこうお尻に食い込んでしまっていましたが、直しませんでし
た。
そういうことのひとつひとつが、私の気持ちを煽るのです。
(顔見知りの相手に、こんな格好を見られている。。。)
(変質者に覗かれちゃってる。。。)
(プライバシーを侵害されてる。。。)
自虐的な気分です。
興奮していました。
(早くオナニーしたい。。。)
もう、じゅうぶん・・・
すぐにもカーテンの乱れを直して、そして思いっきりオナニーしたい・・・
その欲求にかられました。
でも、耐えます。
今やめたら、もうそれっきりです。
こんなシチュエーションはそうそう作りだせるものではありません。
今どれだけ頑張れるかで、あとあとオナニーするときの興奮が違ってきま
す。
ただ単に、下着姿を見られるだけじゃ物足りないと思い始めていました。
鏡に向かって部屋の中央に立ちます。
思いつきでした。
ほぼ全身が映るような姿見の鏡です。
肌の白い女が、下着だけの姿で立っているのが映っています。
モヤシ君は、ちょうど真横から私の立ち姿を眺めることになります。
私は全体的に細身のため、もしかしたら実際よりも長身に映っているかもし
れません。
さっきまでの無表情とは一転して、私は鏡に映る自分に向って微笑みかけま
した。
ちゃんと口角が上がるように意識した、にこやかな笑顔をつくってみます。
この『清楚そうな顔』こそ、私の数少ない武器のひとつなのです。
私は、鏡に映る自分のスタイルをチェックします。
モヤシ君に、どの角度からも私のスタイルを見てもらえるように・・・
前を向いたり、後ろ姿を映したり、鏡の前で繰り返しました。
振り向いて、鏡を見るたびに笑顔をつくります。
それとなく、モデルのように軽くポーズをつけてみたりします。
下着姿で、ちょっとした『ひとりファッションショー』の気分に浸っている
女の子・・・そんなイメージを意識して演じていました。
鏡の前での『ひとりファッションショー』は、女性だったら誰だって経験が
あるはずです。
そして・・・
それは、まさに『自分だけの世界』そのものです。
『自分しかいない』、そして『誰にも見られていない』からこそできる密か
な行為です。
自分が何かの主役にでもなったかのような、その子がほんの少しだけ自意識
過剰になっている恥ずかしい瞬間です。
男性の方にどれだけ理解していただけるかわかりませんが・・・
他人に見られたら『赤面もの』の場面なのです。
部屋の中をぐるぐるモデル歩き(?)しながら、パッとターンして笑顔でポ
ーズを決めます。
まさか人に見られているだなんて夢にも思わないお姉さんの、下着姿での恥
ずかしい光景です。
決して人には見せることのできない私生活の断片です。
ときどきお尻に食い込んだパンティを直さなければなりません。
パンティのふちに親指を入れて引っ張ります。
そして『ニコッ』、またポーズです。
はたから見れば、馬鹿まるだしです。
『自分がモデルか女優にでもなったかのような気分の女の子』を演じて、い
ろいろな表情をつくります。
微笑み・・・、おすまし・・・、気の強そうな顔・・・。
こんな場面、知り合いには絶対に見せるわけにはいきません。
それだけに、顔見知りともいえる子に見られているかと思うと、恥ずかしさ
でいっぱいです。
私の顔・・・、私のスタイル・・・
こっそり覗くモヤシ君に、私の容姿を十分に堪能してもらえているはずで
す。
こんな場面を見られるなんて、女として『赤っ恥』もいいところです。
それだけに、それを実際に目の当たりにしたモヤシ君は『覗いた甲斐があっ
た』と感動してくれているかもしれません。
下着ファッションショーを披露しているうちに、いつしか感覚がすり替わっ
てきていました。
恥ずかしさに心を焦がすのはもちろんのこと、それ以上に『モヤシ君を喜ば
せたい』という気持ちが強くなってきていました。
彼が覗きたがっているのは『私の体』であって、『私の行動』ではないのか
もしれません・・・
モデル歩きをやめて、ふと動きを止めました。
鏡に向かって真正面に立ちます。
表情から微笑みを消し、まじめな顔で鏡の中の自分を見つめます。
両手を胸にもっていきました。
胸のまわりのお肉をブラの中に『寄せて、上げ』ます。
特別に大きいとはいえない胸を、少しでも大きく見せようとしている女の
子・・・です。
実際は、私はあまり贅肉がないので、ブラに無理やり押し込めるようなお肉
はほとんどありません。
ですから、そんなことをしたところで胸の大きさは変わりません。
再び、まじめな顔で鏡に映った自分の姿を見ます。
そのままじっと見続けます・・・
しばらくして、思いつめたような表情を崩さないまま、両手を背中にまわし
ました。
ホックをはずします。
『下着姿だけ』という決心を裏切ろうとしていました。
体を締め付けていたブラが胸のふくらみから離れ、宙に浮かびます。
すぐ横からモヤシ君が見ているはずです。
きっと固唾をのんでなりゆきを見守っているに違いありません。
(見られちゃう。。。見られちゃう。。。)
そのままゆっくりとブラを脱ぎました。
無防備なおっぱいが露わになります。
(はあぁ・・・、きっと見てる。。。)
(ああん、恥ずかしい。。。)
取ったブラを床に落とします。
上半身ヌードになりました。
また鏡を見続けます。
鏡に映る自分の胸を見つめます。
そうやって、モヤシ君の眼前に胸を晒していました。
『だめ』と思いながらも、彼がちゃんと『観察』できるようにです。
モヤシ君は、私の胸を真横から見ている計算です。
私のおっぱいは、特別に大きいほうではありません。
そのかわり垂れてもいません。
横から見ている彼の目に、そんな私のおっぱいが完全に晒けだされていま
す。
乳首だって完全に見えてしまっています。
勃って飛び出してしまっている乳首が・・・。
(ああ、もうだめだ。。。)
恥ずかしさに、思わず手で胸を隠したくなります。
羞恥心に、必死に耐えます。
見ているのは、私のことを知っている人です。
(はぁん、まずいよぅ。。。)
何度も挨拶し、会話を交わしたことのある人です。
(恥ずかしい。。。)
なぜか、心臓のどきどきはあまり感じませんでした。
でも血圧が上昇するような感覚で、顔が熱くなってきます。
ただ、内心の気持ちはともかく、表面上はまったくの『静』です。
私は、相変わらず真剣な眼差しで鏡を見つめています。
自分の胸の形を静かにチェックしている女の子です。
『やりすぎだ』と思いました。
胸まで出してしまうのは、『下着姿だけ』と課した最初の決心を破ってしま
っています。
限度以上にモヤシ君を興奮させるのは危険です。
もし次に彼と出くわしたときに、何かされでもしたらたまりません。
でも、
(もう少しだけ、もう少しだけだから。。。)
(これ以上は見せないから。。。)
羞恥心に悶えながら、そう自分に言い訳をしていました。
首から上は鏡のほうに向けたままで・・・体だけ「すっ」と横を向きまし
た。
ちょうど正面がカーテンの隙間に向くように・・・
鏡に映った体の横側を、顔だけ横に向けて見ています。
もう完全に、気持ちのモードが『見せ』に入っていました。
1.5m。
ガラスの窓とテーブルを隔ててはいますが、距離的にはそんなものです。
わずか1m半のところから覗いているあの子に、真っ正面から胸を見せてい
ました。
私の両方のおっぱい・・・
実は左側のほうが、ほんのほんの少しだけ大きいという違いにモヤシ君は気
がついたでしょうか。
私の白いおっぱい・・・
モヤシ君にそのすべてを晒しています。
完全な上半身ヌードです。
下だってパンティ1枚です。
男の目の前なのに。
そんな格好で、まっすぐ立っています。
覗き趣味の変質者の前なのに。
私の白いおっぱいと、その上にある私の横顔・・・
彼はその両方を見比べながら興奮してくれているでしょうか。
それとも、乳首を凝視するのに忙しくてそれどころではないでしょうか。
飛び出している乳首の、その先端の質感までもがはっきり観察できる距離で
す。
喜んでいる彼を想像しながら、恥ずかしさで死んでしまいそうでした。
ずっとこのままでいるのは不自然です。
反転して、今度は体の右側を鏡に映しました。
さっきと正反対に、横窓に対して背中を向けて立っています。
顔だけは鏡のほうを向いたままです。
ボディラインのチェックを続けている女の子を演じ続けていました。
もう、自分でもやめどきがわからなくなっていました。
頭では、はっきりと『もうやりすぎ』とわかっていました。
『もうやめなきゃ』と思います。
でも、どうしても後ろ髪を引かれる思いです。
貴重なこの一瞬に幕を引くのが惜しくてなりません。
それぐらい、気持ちがのって、陶酔感に包まれていました。
鏡を眺めながら、『はっ』と思いました。
ちょっと体をひねって、後ろ側を鏡に映してみます。
(え!?)
お尻のほうまで、見事にパンティが染みています。
ファッションショーのころから、性器が湿ってきているのは自分でもわかっ
ていました。
でも、これは想像以上です。
(えっ、え・・・、)
パンティの色がグレーだったせいもあって、まるでおもらしをしてしまった
かのように染みができていました。
この瞬間に、陶酔感など、どこかに吹き飛びました。
(そんな、イヤぁー)
うかつだったと言えばいいのか・・・
やはり途中から冷静さを失っていたということなのでしょう。
演技に夢中になっていた私は、そんな単純なことに気が回っていなかったの
です。
パンティ1枚しか身につけていないのに・・・
そのパンティに染みをつくっているなんて・・・
(恥ずかしい)
『見られてしまっていた』ということを強烈に意識してしまいました。
(恥ずかしい)
私にとっては、『本当に他人に見られるには恥ずかしすぎること』でした。
(いやぁん、最低。。。)
もう耐えられません。
今はじめて気がついたかのような感じで、カーテンに手を伸ばします。
さりげなく、乱れていた部分を直して隙間をなくしました。
パンティ1枚の姿のそのまま、急いで玄関へ行きます。
ドアスコープを覗きました。
楕円に歪んだ視界の中を、右から左へとモヤシ君が横切りました。
耳をすませます。
「カッ・・・チッ」
隣室のドアがそっと開閉される音が伝わってきました。
(やっぱりぜんぶ見られた。。。)
すさまじい後悔に襲われます。
恥ずかしさに、もう気が狂いそうでした。
そもそも、わざと覗かれようだなんて考えたこと自体が間違いだったので
す。
相手が顔見知りなのも、場所が自分の部屋なのも最悪でした。
すっかり現実に引き戻されていました。
ひとりファッションショーも、胸を出したことも、全て後悔していました。
なりゆきの感情に流された、自分の浅はかさを嘆きました。
取り返しのつかない失態でした。
今度あの子と顔を合わせたときのことを想像して、泣きそうな気持ちになり
ます。
どんな顔をしていればいいのでしょう。
いつもどおり、素っ気なく何も知らない表情を突きとおせるでしょうか。
とても自信が持てません。
あの子は、私の顔を見て、どう思うのでしょうか。
私の顔を見ながら、今夜の一部始終を思い浮かべるにちがいありません。
想像するだけで胸が苦しくなります。
本当の私は、まじめすぎるぐらいに『まじめ』な人間です。
他の女の子たちのように、パーッと楽しむことができない引っ込み思案な性
格なのです。
そんな私が、ほんのちょっと羽目をはずしただけなのです。
自己嫌悪していました。
このときばかりは、もうすぐ引っ越しするのが決まっていることを心底あり
がたく思いました。
数日間、びくびくしながら生活していました。
特に、玄関から外に出るときと、外から帰宅してくるときは緊張しました。
あくまでも、モヤシ君が卑劣な(?)覗き犯人で、私は何も知らない憐れな
被害者です。
そのことに変わりはありません。
私が何か悪いことをしたわけではありません。
何があっても堂々と知らんぷりをして通せばいいのであって、必要以上に過
敏になる必要もないのかもしれません。
でも、私はあの子と顔を合わせるのが恐怖でした。
できれば『私が引っ越してしまうまで、このまま二度と会うこともなく済ま
せたい』と願っていました。
自分の軽率さを恥じていました。
あの日から、仕事から帰宅してきて自分の玄関に入ると、私はそのままそこ
でドアスコープを覗くのが日課のようになりました。
私が靴も脱がずにスコープから監視(?)していると、すぐにモヤシ君がう
ちのドアの前を横切っていきます。
その先には、建物の横のあのスペースしかありません。
私も、どれだけ残業するかによって帰宅時間は毎日異なります。
それなのに、彼のこの行動は100%の確率です。
やはり私の靴音が帰宅の合図になってしまっていたようです。
それにしても、これって私の靴音を耳にしたらすぐに自分の部屋を飛び出し
ていることになります。
カーテンなんてそうそう乱れるものでもないのに、その小さな可能性に賭け
ようと毎晩チェックしにくる彼の根気(?)には驚かされます。
それほどにまで、私を覗くことに価値を見出しているということなのでしょ
うか。
われながら屈折していると思いますが、彼の執着心に怖れを感じながらも、
プライドをくすぐられるようで、その点だけは素直に嬉しく思っていまし
た。
部屋に入った私は、厚いカーテンをきちんと閉めてから、照明をつけます。
ですから、彼のはかない期待はあっというまに潰えます。
あの子は、すぐに諦めて自分の部屋に戻るのでしょうか。
それとも、何が何だかわからない程度のシルエットを求めて、寒さに耐えな
がら浴室の曇りガラスの前で粘るのでしょうか。
・・・そこまでは確かめようがありません。
どうしても矛盾してしまうのですが・・・
あの日以来、私は毎日のようにオナニーしてしまっていました。
きちっと閉じられたカーテンを目にした彼の落胆をイメージします。
『もしかしたら今夜も横窓の向こうで、モヤシ君が悔しがっているんじゃな
いか』などと想像しながら・・・
あの子が覗き見ている前で、恥ずかしい姿を晒している自分を思い出して興
奮します。
あのときの自分を、後からものすごく後悔したのは事実です。
その気持ちに、何ら変わりはありません。
あの夜の私の行動・・・
思い出すだけで、顔が真っ赤になります。
オナニーしながら、最高の興奮を得ることができました。
(・・・あまりにも『オナニー、オナニー』って、書いてて自分でも恥ずか
しいですね。)
矛盾だらけで説得力がないのは承知のうえです。
でも、これがこのときの正直な『私』でした。
反省して自分を責める気持ちと、『もういちどやるなら引っ越し前の今しか
ない』という2つの真逆な気持ちの板挟みになって苦悩していました。
私なりにいろいろな葛藤がありました。
(こんなチャンスはおそらく2度とない)
一日、一日と、引っ越しの日が迫ってくるのが、みすみすチャンスを逃して
いるような気分です。
まったく無意味に、焦りを感じます。
ひにちがすぎるたびに、ますます落ち着かなくなってきます。
(何も考えずに、はじけてしまいたい)
それでも、慎重な性格が欲求を抑えつけます。
(自分の部屋なんて、直接的すぎる)
(顔を知られている相手にだなんて、軽率すぎる)
頭でわかっていながらも、うずうずしていました。
その複雑な感情は、到底ここに書き切ることなどできません。
(どうせあとちょっとで引っ越してしまう)
(引っ越せばモヤシ君とは縁が切れる)
正直な心境として、『良い悪い』は、もう考えないようにしていました。
都合の悪いことは、頭の外に追いやってしまおうという意識が働いていたよ
うに思います。
私はやる気(?)になっていました。
ただ、もちろん無茶をするつもりはありません。
外から部屋の中を覗かれてしまう・・・
あくまでも私は『覗きの被害者』なのです。
他人の部屋を覗くなんていうのは、覗く側の人間が悪いのです。
他人のプライバシーを侵害する卑劣な人間は覗く側のモヤシ君であって、私
は悪くありません。
ただただ、かわいそうな被害者です。
自分自身に言い聞かせるように、自己中心的な解釈をしていました。
とにかくそうやって、良心の呵責や自分の罪悪感をごまかしていました。
頭の中で、プランをめぐらせていました。
私はこの数日で、何度オナニーしたことでしょう。
あの子に窓から覗き見られる場面を思い浮かべながら・・・
オナニーのたびに想像を膨らませていたこともあって、私には『イメージ』
ができつつありました。
モヤシ君には決して演技と見破られることなく、『素の私の生活の断片』を
装って覗かれる必要があります。
絶対にそうでなければいけません。
私は、覗かれた憐れな女の子として彼の視線の被害者になるのですから。
さらに、どうしても何とかしたいと考えていたことがありました。
私のほうからも、『覗いているモヤシ君の存在』をはっきり確認できる状態
にしたかったのです。
鏡などを使うことによって、それは可能なはずです。
このことを確かめるために、1度だけ実験的(?)に彼に部屋を覗かせまし
た。
ただし、私がモヤシ君に覗かせたのは、『下着姿』だけでした。
あのときのように、大胆なことは一切しません。
試してみたかったのは、カーテンの乱し方でした。
厚いカーテンだけでなく、レースのカーテンも隙間をつくるようにしたので
す。
窓のはしっこを、ほんの1.5cmほどですが・・・
帰宅して部屋に入った私は、レースのカーテンにも細い隙間をつくったま
ま、照明をつけました。
モヤシ君はここぞとばかりに覗いていることでしょう。
服を脱いで、下着姿になりました。
ブラとパンティだけの姿で新聞を読みます。
もちろん内容など頭に入るはずもありません。
あるものを使って、カーテンの隙間の様子を窺います。
うまくいきました。
彼の存在を、私のほうからも確認することができます。
イメージどおりで問題ありません。
お風呂にお湯がたまるまで下着姿ですごした私は、彼からは死角になってし
まう台所スペースに行って全裸になり、お風呂に入りました。
入浴をすませ、浴室から出た私は、台所スペースで体を拭いて、上下とも下
着を身につけます。
そうしてから、その姿で部屋に入りました。
彼の前に、さっきとは違う下着姿の私が再登場します。
私がお風呂から上がってくるのを、あの子はちゃんと待っていました。
そのことも、きちんと確認することができました。
お風呂上がりの下着姿を見られるだけでも、ものすごい興奮でした。
私は自他ともに認める、まじめで几帳面な性格の人間です。
こんな私が、ブラとショーツしか身につけていない姿を覗かせてしまってい
る・・・
顔が熱くなってしまいます。
この時点で、乱れたカーテンを直しました。
特別なことは何もせず、ここまでで終わらすと初めから決めていました。
モヤシ君は、下着姿の私を覗きながら、きっと『お姉さんブラを取れ』、
『パンツを脱げ』、そう念じ続けていたことでしょう。
特にお風呂上がりには、私が裸のまま部屋に入ってくることを期待していた
に違いありません。
私が、入浴の際は台所スペースで全裸になり、お風呂上がりもそこで下着を
つけることを彼は知ったはずです。
この前、おっぱいまで見れたのはとてつもない偶然だった・・・、そう思っ
てくれたでしょうか。
私は私で、下着だけでいる姿を見せただけでもかなり興奮してしまいまし
た。
自宅で下着だけの姿・・・、それは紛れもなく私のプライバシーそのもので
す。
これ以上の姿を見せるときは・・・
考えるだけで、どきどきします。
翌朝、出勤しようと玄関を出たときに、彼とバッタリ(?)鉢合わせしまし
た。
引っ越しの日までに、いつかこの瞬間は訪れるだろうと覚悟してはいました
が、『ついに会っちゃった』という感じです。
ずっと怖れていた瞬間でした。
なにしろ相手は、毎夜、私の部屋のカーテンの乱れをチェックしにくる『覗
きの男の子』なのです。
そして私は、実際この子に恥ずかしい光景を見られてしまっているのです。
でも、顔を合わせてしまった以上は堂々とするしかありません。
覗かれたことなど、まったく知らないことになっているのですから。
内心の動揺を悟られないように、
「おはようございます」
いつものように挨拶しました。
「お、お、おはようござい・・・」
モヤシ君は、相変わらず小さな声です。
私と目を合わそうとしません。
いつもにも増して、私の顔を見られないようです。
直感的に察しました。
大丈夫です。
危険はありません。
むしろ『この子なりに、私に対して後ろめたさを感じているんじゃないか』
とさえ思えました。
こうやって面と向かうのは久しぶりな気がしますが、『彼に演技をしかける
チャンス』だというのは瞬時に判断できました。
それなのに、どうしても次の言葉が出てきません。
無言のまま立ち止まっているわけにもいかず、
「すみません」
体が勝手に動いて、彼の横をすり抜けようとしていました。
立ち去ろうとしたときに、
「あ、あの・・・」
モヤシ君が話しかけてきました。
(え!?)
ドキッとして、一気に『ものすごい警戒モード』になりました。
(なに?なんなの?)
(こわい。。。)
緊迫感が走ります。
「はい?(なに?いったいなんなの?)」
モヤシ君は、おどおどした感じで、
「あ、あ、あの・・・」
「なんですか?」
「うちのテレビ、夜中うるさくないですか?」
見るからにガチガチに緊張した様子で話しかけてきました。
「え?(いきなり急になに?)」
意味がわからず、一瞬絶句しかけた私に、
「あの、あの・・・ボリュームが大きくて、迷惑をかけてないですか?」
唐突すぎる内容の問いかけでしたが、おどおどしながらも頑張って話しかけ
てきているのが、痛いほど伝わってきます。
大丈夫です、心配するような問題はなさそうです。
ほっとして、こわばった全身から緊張がほぐれていきます。
「だいじょうぶですよ」
微笑みをつくります。
「ぜんぜん気になったことないですよ」
彼の態度から伝わってくるものがあります。
この子は私と話したいのです。
きっと精一杯の勇気を振り絞っているに違いありません。
「私こそ、ご迷惑をかけてないですか?」
逆にこちらから聞き返します。
「あ、いえ、ぜんぜん・・・です」
「本当ですか?よかったですー」
モヤシ君はもういっぱいいっぱいのようです。
私も、もう行かなければなりません。
「あの・・・会社に行かなくちゃ。失礼します。」
ニコッと微笑みかけて、会釈しました。
歩き出す私の後ろから、
「い、いってらっしゃい」
モヤシ君の蚊のように小さい声が聞こえました。
私は、後ろを振り返って、
「いってきまーす」
もういちど、彼に笑顔を投げかけていました。
職場に向かいながらも、明るい気持ちになっていました。
私が意識しすぎていたのでしょうか。
あれほど恐れていたモヤシ君との顔合わせでしたが、何も問題ありませんで
した。
それどころか・・・
またも『うぬぼれ』かもしれませんが、やっぱりあの子は私に好意を持って
いるのかもしれません。
精一杯頑張って、一生懸命に話しかけてきたあの姿は、すごく印象的でし
た。
とは言っても、私はいまさら彼に対して好意なんて抱けませんが・・・
この日は帰宅してくるときの足取りも気楽でした。
たとえモヤシ君と顔を合わせたとしても、もう問題はありません。
集合ポストで夕刊を取ってから、自分の部屋へと進みます。
「コツン、コツン、コツン・・・」
101号・・・、102号・・・
(モヤシ君、顔をだすかな?)
そう思った瞬間、
「ガチャ」
私の目の前で、本当に103号の玄関ドアが開きました。
モヤシ君が出てきます。
考えたとおりの展開に『わっ』と思いつつ、足がとまります。
私が完全に105号の玄関の中に姿を消してしまってから、その玄関ドアの
前を通って建物の横に回りこむのが、彼の行動パターンだったはずです。
今朝、私と会話を交わしたことが、結果的には彼に勇気を与えたということ
なのでしょうか。
「こんばんは」
とりあえず警戒しながらも、私のほうから挨拶をしました。
「あ、ど、ども」
もじもじしています。
「おでかけですか?」
笑顔で話しかけます。
「あ、はい、ちょっとコンビニ」
(うそだ)
と思いながらも、
「あー、ファミマですかぁ?」
私は会話を続けました。
「あ・・・、はい」
もじもじしながら、私の顔をちらちら見ます。
「このへん、セブン無いですもんねー」
実は駅に向かうのとは逆の方向に少し行けば、セブンがあるのは私も知って
います。
「え?・・・あるけど」
彼が意外そうに言います。
「本当ですかー?えっ、どのへんにー?」
私は目を輝かせるようにしながら、モヤシ君の瞳をみつめました。
「あ、あの、あっちにまっすぐ行って・・・、左に曲がって・・・」
どもりながら、懸命に説明してくれます。
「四つ角のところですよね?」
私は、説明に問い返しながら、彼の瞳をみつめ続けます。
「そうなんだー、知らなかったぁ。ありがとうございます」
モヤシ君・・・、嬉しそうです。
「私、あそこのおでんが好きなんですよねー」
「あ、あ、僕もです」
ここまで話が続くとは思いませんでしたが、その後も少しだけコンビニ会話
に花が咲きました。
モヤシ君も、だいぶん私の顔を見ながら話をすることができるようになって
います。
覗かれたときのことを思い出しながら私がオナニーするのと同じように、こ
の子も私を思い浮かべながらオナニーしたりするのでしょうか。
(顔を見て。。。)
顔をよく見せてあげたいと思いました。
(これが、あなたが覗いたお姉さんの顔なのよ)
(毎晩チャンスをうかがってるよね?・・・あなたはこの顔の女を覗こうと
しているのよ)
2~3分、立ち話をしたと思います。
会話が途切れたところで、
「あ、じゃあ・・・、ありがとうございました」
そう言って私は話を切り上げました。
「ど、どうも」
私は105号の自分の玄関に入りました。
ドアスコープに目を向けます。
コンビニに行くと言っていたモヤシ君がこのドアの前を横切っていきます。
(今日・・・、やる?)
ためらいました。
タイミング的には最高だと思いましたが、準備ができません。
部屋に入った私は、迷いながらもカーテンの隙間はつくりませんでした。
(明日、やっちゃおう。。。)
決めました。
(明日、ちゃんと準備してから覗かせよう。。。)
翌日は、いつも以上に業務がたてこんで、慌ただしい1日になりました。
仕事に追われているうちに、あっというまに夜になってしまったという感じ
です。
くたくただったはずなのに、疲れはありませんでした。
わくわくしながら帰宅の途についていました。
ついつい、歩く足が速くなります。
(あの日といっしょだ。。。)
着替えを覗かれようとテンションが上がってしまい、早足で帰ったあの日を
思い出します。
コーポまで帰ってきたとき、今夜はいつものように靴音を響かせないように
気をつけました。
自分が帰ってきたことを103号のモヤシ君に気づかれないように、そっと
歩いて自分の部屋の玄関に入りました。
ちょっと準備したいことがあったのです。
照明はつけずに暗くしたまま、ガラステーブルの場所を調整します。
今日は横窓の壁際にくっつけるのではなく、少し距離を置いたところに持っ
ていきました。
レースのカーテンを通して窓から光が入ってきています。
月明かりだったらロマンティックですが、ただの住宅街の人工的な明るさで
す。
気になって、隣室側の壁にそっと耳を当ててみました。
かすかにテレビのような音が聞こえます。
まだ何もしていないのに、胸がどきどきしてきます。
あるブランドのバッグを床に置きます。
ちゃんと計算しつくした位置です。
もういちど確認しながら、置き位置を微調整しました。
横窓の反対側の壁側には、洋タンスがあります。
私の腰ぐらいまでの高さのものです。
タンスの上には雑貨がごちゃごちゃ置いてあります。
この雑貨の中に卓上鏡もさりげなく立ててありました。
前回、下着姿だけ覗かせたときに試してみたのですが、この小さな鏡によっ
て、私は背後のカーテンの隙間の様子を確かめることができるのです。
角度に問題がないことを確認します。
タンスの横で再び壁に耳を当てると、隣室でなんだか『ゴトゴト』音がして
います。
(いる。。。)
いちおう、考えていた限りの状況が整っていました。
玄関に戻ります。
最後に、洗濯機の上に家の固定電話(?)の子機を置いておきます。
計画は完璧なはずです。
手順も、何度も頭の中でのシミュレーションを繰り
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