2019/12/29 13:16:57
(LGRHt0L5)
レンタカーのハンドルを握っていました。
本気で行こうと思えば、帰り途中にもう一度立ち寄ることが可能です。
(行こう)
(少しぐらい帰りが遅くなってもいい)
どこへって?
あの公共温泉です。
昨夜泊った旅館近くの、公共のボロ温泉・・・
(もう1回どきどきしたい)
昨日のことを思い出しながら、何度イメージしたことか。
所詮、私は自分の欲求に打ち勝つことはできないのです。
(ああああ)
(やっぱり怖い)
混浴というのは、やはり私にとって恐怖の要因でした。
見られることを前提として来ていると思われるのは、怖すぎて嫌なのです。
見覚えのある町並みに戻ってきて・・・
適当なパーキングに車を駐車します。
荷物を持って、降り立ちました。
(ああ、混浴・・・)
(混浴か・・・)
自分の中の一線を越えてしまったような気がして落ち着きません。
でも、
(だいじょうぶ)
気持ちの拠り所はありました。
(あの人・・・)
(ジイさん、バアさんばっかりって言ってた)
昨夜のおじさんの言葉を思い出しながら、あの公共温泉へと向かって歩いていきます。
(そうだよ)
(だいじょうぶ)
少し離れたところには、もう1つ『公営』のちゃんとした温泉もあるのです。
昨日そのことを宿に戻ってから知った私でした。
(観光客は、ほとんどそっち)
(こっちに来るのは地元のお年寄りばっかりのはず)
歩きながらイメージを膨らませます。
おじいさんとおばあさん2~3人がいるお風呂に、全裸のまま入っていく私・・・
チラチラと視線を感じながら、
(いい気分)
それでもゆったりとお湯につかる満足感・・・
(そうだ)
昨夜は使わなかったけど、洗い場も2つ3つありました。
お年寄りとはいえ男性もいるその空間で、
(見ないでえ)
内心悲鳴をあげながら、悠々と自分のからだを洗う私・・・
(だいじょうぶ)
(今日はお風呂道具もちゃんと一式持ってきてる)
あるいは、
(逆もありえるか)
どんどんイメージが膨らみます。
誰もいない無人の浴場で、ひとりお湯につかって待ち受ける私・・・
入浴に現れたおじいさんは、そこに若い女がいるのを見てどんな表情をするでしょうか。
(どきどきどきどき)
建物が見えてきました。
入口の内側、どきどきしながら左手の戸を開けます。
(あ・・)
脱衣場に、おじいさんがひとりいました。
現れた私を見て、なぜか厳しい目を向けてきています。
一瞬にして、
(ああ・・)
気が弱くなってしまっていました。
内気に陥りそうになるそんな自分から逃避(?)しようと・・・
「Boa tarde」
とっさに外国人を装う演技をしてしまっている自分がいます。
呆れた顔で、
『ハぁ?』
そんな目を向けてくるおじいさん・・・
私は、勝手がわからず戸惑っているふりをすることで自分の弱気をごまかしていました。
(なんなの、怖いよ)
(なんで睨むの)
でも、すぐにわかりました。
・・・べつに、怒っているわけではないと。
「おまえ、ガイジンか」
「どっから来た」
言葉使いはキツいですが、悪意がないのは見て取れます。
ダウンジャケットを脱いで、棚の空いているカゴに突っ込みました。
「Eu não sei o que você está dizendo(何を言っているのかわかりません)」
大袈裟に首をすくめながら、外国人っぽく両手でジェスチャーします。
(どきどきどき)
おじいさんは、パンツ1丁のお風呂上がり姿でした。
ちょっと物珍しそうに、
「なんだよ、日本語わかんねえのかよ」
それでも興味深げに若い私のことをじろじろ見ています。
昨夜は気づきませんでしたが、戸の横に料金箱がありました。
小銭入れを出して、
「ぼとっ、ぼとっ・・・」
書いてある金額のコインを入れます。
私も、興味深げな表情をしてみせていました。
きょろきょろと、昔ながらのお風呂の脱衣場を見回してみせます。
(このおじいさん以外に)
(使っているカゴは4つ・・・)
浴場には4人がいるということを意味していました。
いまならまだ引き返せますが、
(どきどきどきどき)
ここまで来てそんなつもりはありません。
シャツのボタンに手をかけました。
1枚1枚、服を脱いでいきます。
そして、ぱっぱとカゴに入れていきました。
おじいさんは突っ立ったまま、じーっと私のことを見ています。
目が合って、
「O que?」
にこっと微笑みを向けてあげました。
そして、そのまま目の前でブラを外してみせます。
(どきどきどき)
おじいさんは何も言いませんが、じっと私の胸をみつめていました。
再び目が合って、
「O que?」
にこにこしてあげます。
「ちっちぇえおっぱいだな」
「揉んでやろか?」
ここでは標準語で書いていますが、本当は方言と訛りでかなりすごい感じでした。
悪意とも好意ともつかない口調で、
「さわってもらわねえと大きくなんねえぞ」
日本語オンリーで、勝手に『楽しそう』に話しかけてきます。
「O que você está dizendo」
今まさに『セクハラ発言中』のおじいさんの前で、するっとパンツを下ろす私・・・
にこにこしながらも、
「eu não entendo」
それ以上の意思疎通は諦めたという感じを表情に出してみせていました。
(若いときは)
(さぞかしセクハラおやじだったんだろうな)
相手が高齢だからでしょうか。
なぜか、まったく恥ずかしくありません。
むしろ相手を喜ばせてあげていることが楽しいぐらいでした。
すっぽんぽんのまま、おじいさんに背を向けます。
棚から自分のカゴを取り出して、床に直接置きました。
もうひとつ隣の棚から空のカゴを床に下ろして、2つ並べるように置きます。
ねえ、おじいちゃん・・・
(もうなかなか)
(こんな目の保養をする機会ないでしょ?)
正確なところはよくわからないけど、たぶん80歳近いおじいさんでした。
その、元セクハラおやじ(?)の前で・・・
ひざは曲げずに立ったまま、思いっきり前かがみになります。
(見たい?)
おじいさんが、すーっと背後に寄ってきていました。
気づいているけど、
(見ていいよ、おじいちゃん)
ぜんぜん気づかないふりをしてあげます。
脱いで丸めたままカゴに放り込んだ服を、前かがみの姿勢でたたみ直す私・・・
(なんで真後ろにいるの)
(おじいちゃんのえっち)
この女の股間が、後ろにまる見えのはずのポーズでした。
少し足幅を開いた前屈姿勢のまま・・・
ささっと服をたたみ直しては、次々に隣の空きカゴに移していきます。
(これがあの課長だったら)
そう思うと痛快でした。
こっちは本当に迷惑しているのに、最近やたらと私を食事に誘ってくる庶務の課長・・・
あの人には決して目にすることのできない、私の股間の『割れ目』です。
(見るだけね)
(さわっちゃだめだよ、おじいちゃん)
そして、
「Uau」
びっくりした感じで背後の気配に気づいたふりをしました。
何もわかっていなかったような演技で、やさしく微笑みかけてあげます。
「O que aconteceu(どうしたの?)」
2つのカゴを、元の棚の段に戻しました。
(どきどきどきどき)
タオルを腰に巻いて、しっかり結わえます。
ヘアバンドで髪を束ねました。
シャンプーのミニボトルや洗顔料が入っているお風呂ポーチを持ちます。
(おじいちゃん)
(長生きしてね)
いよいよでした。
おそらく4人がいるであろう浴場に入っていこうとしている私・・・
引き返す?
(そんなわけない)
このおじいちゃんのおかげで、高揚した気持ちに勢いがついています。
曇りガラスの引き戸に手をかけました。