2024/09/23 17:12:18
(EreI5B9U)
職場から帰宅の途についていました。
電車の中で吊革につかまっています。
表情に出してはいませんが、心の中では悔しくて泣きそうになっていました。
今日、部門のマネージャーのミスを被らされそうになったからです。
絶対に私には非がないのに・・・
いつも平然と他の誰かに責任をなすりつけようとしてくるあの人を許せませんでした。
でも、私には社内における力がありません。
(いつか絶対)
(見返してやる)
この程度の理不尽なことは、長く勤めていれば珍しいことではありませんでした。
そんなことはわかっています。
帰宅するやいなや、着替えていました。
いわば、理性でコントロールされた範囲内での自暴自棄です。
必要最低限のものだけを持って、また家を出ていました。
原付スクーターで夜道を疾走します。
「ヴィーーー」
すでに20時をまわっていました。
目的地を目指します。
5月頃、あちこちの町でカフェ探しをしていたときに偶然目にしたスポットでした。
到着してスクーターを駐輪します。
万が一にも特定されるのが怖いので、あまり細かいことまでは書けません。
郊外の住宅地の一角にある場所でした。
こちら側と向こう側が、金網フェンスで完全に隔てられている立地の場所です。
(暑っつ)
もうこんな時間なのに、信じられないような湿度の高さでした。
9月も半ばを過ぎたというのに、いまだに昼間は気温が35度にもなる毎日が続いています。
周囲を見渡しました。
こちら側は〇〇なので、まず人は現れません。
実際、完全に無人でした。
フェンスの向こう側は路地です。
遊歩道の延長上に位置するような道でした。
だから車両が通ることはありません。
通行できるのは徒歩の人か、せいぜい自転車ぐらいです。
(どきどきどき)
待ちました。
フェンスの金網に顔をくっつけるようにして、道の彼方をみつめます。
誰の姿も見えませんでした。
何年も前の記憶がよみがえります。
かつて同じようなことをしたあのときに利用したのは、公園の金網フェンスでした。
今日は公園ではありませんが、フェンスの上部には忍び返し(?)のようなものがついています。
向こうから金網を乗り越えてこちら側に来ることは不可能でした。
(どきどきどき)
不意に100メートルぐらい向こうに人影が浮かびます。
歩いてくる男性の姿が見えました。
緊張に胸がしめつけられて、一瞬にして息が苦しくなります。
はいていたスカートの中に手を突っ込んで、中の下着のパンツをふくらはぎまでおろしました。
おしっこするような感じでその場にしゃがみこみます。
やばい、来ちゃう・・・
(どきどきどき)
ああああ、来る・・・
みるみるうちに近づいてきていました。
完全に一発勝負です。
20代ぐらいの男性でした。
もう、すぐそこまで迫っています。
『すっ、すっ、すっ』
プレッシャーにからだが縮みあがって思わず気配を殺してしまう自分がいました。
(だめだめだめ、むり)
(やっぱりむり)
金網の向こう・・・
私の目の前を、
(どきどきどき)
通り過ぎていく男性・・・
『すっ、すっ、すっ』
首をちょっと横向けられたら、そこには私がいました。
でも私の存在に気づくことなく、その人はそのまま通過していきます。
(ばくばくばく)
生きた心地がしませんでした。
ほっとして胸をなでおろしますが・・・
その反面、みすみす素通りさせてしまった(チャンスを逃してしまった)ことが猛烈に悔やまれます。
ただ、そもそも気づかれさえしなかったのですから今のはノーカウント(?)でした。
あらためて次のチャンスがくれば、今度こそ一発勝負です。
(ばくばくばく)
下ろしていたパンツを引っ張り上げて、立ち上がりました。
金網フェンスに頬を寄せて路地の先の様子を窺います。
こんな怪しい行動で待っている自分を誰か第三者に見咎められるのではないかとハラハラがとまりませんでした。
いや見咎められても大丈夫なのですが・・・
そこで何をしているのですかと問われたら、とっさに何と返せばいいのか思いつきません。
だから焦るような気持ちでずっとびくびくしていました。
(ああ、誰か男の人・・・)
(はやく来て)
十五夜の月が私の姿を照らしています。
チャンスが訪れることを願いながらも緊張しすぎて異様な息苦しさでした。
時計を見ていたわけではありませんが、体感的には10分ぐらいそのまま待ったような気がします。
向こうのほうに、すっと人影が浮かびました。
金網に顔を押しつけて、なんとかそっちの様子を見極めます。
ひいいん、
(どきどきどき)
男性でした。
ひとりです。
(今度こそ)
(声をかける)
肩にかけていたポーチを地面において、Tシャツを脱ぎ捨てていました。
思い切ってスカートも下ろした私・・・
いざというとき咄嗟に逃げられるようスニーカーははいたままですが、それ以外はブラとパンツをつけているだけの下着姿になってしまいます。
もう、すぐそこまで来ていました。
なるべくフェンスに近づいて立ちます。
『とつっ、とつっ、とつっ』
・・・が、
(ひいいっ)
やはり怯んで相手が通りかかる直前でしゃがんでしまう私・・・
泣きそうになりながらじっと身を潜めます。
『とつっ、とつっ、とつっ』
私に気づくことなく目の前を通り過ぎていく男性・・・
そのまま靴音が、
『とつっ、とつっ・・・』
遠ざかっていきました。
(ばくばくばく)
自分がずっと息をとめたままでいたことに気づきます。
大きく息をつきました。
(ああ、また・・・まただ・・・)
内心の張りつめるような緊張感に、神経がどうにかなってしまいそうです。
気持ちを落ち着かせなきゃと思っていると今度は間をおかずに、
(あっ)
向こうに人影が2つ現れています。
女性ふたりのシルエットでした。
(ひいいん)
慌ててポーチと服を拾って、下着姿のまま植え込みのかげに身を潜めます。
こんな格好で同性にみつかったら言い訳がききませんでした。
おしゃべりしている声が近づいてきて、もはや天に祈るような心境です。
『コツっ、コツっ、コツっ、コツっ・・・』
(お願い行って)
(そのまま通り過ぎて)
ふたりとも私に気づかずに通過していきました。
再び静寂に包まれます。
(ばくばくばく)
(ばくばくばく)
よっぽど、もう帰ろうかと思いました。
こんなことを繰り返していたら、とてもではないけれど心臓が耐えられません。
ただ同時に、意外と気づかれないものだなとも思いました。
植え込みのかげから、フェンスの前に戻ります。
(どきどきどき)
だいぶ落ち着いてきました。
誰もいません。
パンツをするっと下ろしました。
スニーカーは脱がずにそのままで、足首からパンツを抜きます。
昔を思い出していました。
久しぶりですが、今でもできるでしょうか。
(どきどきどき)
すーっと前屈するようなからだの動きから、両手をフェンス手前の地べたにつきました。
同時にスニーカーの足裏を意識する感じで地面を蹴ります。
腹筋と背筋を効かせていました。
天地が逆転するような感覚とともに、
『すーーっ』
体重をまっすぐ移動させます。
倒立していました。
からだ全体が少しエビぞり気味になりながら、そのままスニーカーが金網につきます。
『ガシャっ』
ややぐらつきましたが、けっこう余裕でした。
足先で金網フェンスに体重を預けたまま、倒立状態でゆっくり開脚しました。
脚の自重もあって足先からそれぞれ左右に開いていきますので、バランスさえ保てればそれほど難しくありません。
誰も見てないけど、
(ああん、見て)
わたし、今・・・こんな、はしたないことしてる・・・
(ねえみんな、わたしパンツもはかないで)
(こんなに股ひらいてるよ)
足先で金網を蹴りました。
その反動を利用して、エビぞっていたからだを戻します。
両脚を揃えるようにしながら地面に足をついていました。
元どおり普通に立ち上がります。
(どきどきどき)
逆立ちしたなんて、それこそ何年かぶりのことでした。
でも、まだからだが覚えているというか・・・
若いときからずっとジョギングやピラティスの運動を続けてきたことの賜物です。
自分の運動神経が落ちていないことに興奮していました。
言葉にならないような高揚感と下半身まる出しの背徳的な感情が入り混じって、自意識がふわふわします。
(私・・・まだまだいける)
そのとき、
(ひっ)
心臓が止まりそうになりました。
気配を感じたのです。
近くの木の枝葉がざわざわしていました。
動揺して思考が停止しそうになります。
次の瞬間、泡を食ったようにからだが動いていました。
(ひいいいい)
パンツを足に通している暇はありません。
ノーパンのまま、超スピードでスカートをはいていました。
大慌てでTシャツを着ます。
辺りの様子を窺いました。
(ばくばくばく)
誰もいません。
ただ風で樹木の葉が鳴ったというだけでした。
そうとわかって安堵します。
心臓が破裂しそうでした。
極度の緊張に神経が研ぎ澄まされているぶん、些細なことにも過敏になってしまっているのです。
(ばくばくばく)
帰ろうと思いました。
もうじゅうぶんどきどきを味わうことができています。
いい場所を見つけたという気持ちでした。
またいつか来ればいい・・・
誰かを相手にした一発勝負的などきどきは、また今度のそのときにとっておけばいいのです。
なのに、
(あ・・・)
まさにちょうどそのタイミングで、人影のシルエットを目にしていました。
男の人がひとりで歩いてきているのが見えます。
一瞬、心が揺らぎました。
(え、え・・・)
(いまの私ならできるかも)
とっさに判断できません。
あっという間に近づいてきていました。
フェンスのこちら側にいる私に気づかず、目の前を通り過ぎていく男性・・・
真面目そうな普通の人という印象です。
思わずささやくように声をかけていました。
「すみません」
彼がぎょっとしています。
ひとけのない路地を歩いていたらいきなり呼びかけられたのですから、びっくりして当然でした。
足をとめてこちらを見ながら・・・
フェンス越しに立っている私の姿を認めて、怪訝な表情になっています。
私は左右をきょろきょろしてみせてから、
「しーーっ」
自分の口の前で人差し指を立ててみせました。
そして、はにかむような顔で手招きのジェスチャーをします。
あたりまえですが不信感に満ちた眼差しを向けられていました。
「すみません、ほんとごめんなさい」
「ちょっとだけいいですか」
自分で言うのもなんですが、容姿はいかにも清楚系の『私』です。
そのはにかんだ微笑みに惹かれたかのように近づいてきてくれる彼・・・
黒縁のメガネの人でした。
たぶん私と同じぐらいの世代の男性です。
(どきどきどき)
あらかじめ考えていたわけではありませんでした。
その場での思いつきです。
足もとに置いていたポーチの中からスマホを取り出しました。
相手に画面が見えるようにして、ボイスレコーダー機能の録音をオンにします。
「罰ゲームなんです」
「音だけですから録らせてください」
録音状態のままポーチの上にそっと置きました。
わけがわからないという感じのメガネさんが、警戒心から眉をひそめています。
今にも立ち去ってしまいそうでした。
間髪入れずにTシャツを脱ぐ『この女』・・・
その行動に目を丸くして、男性がその場に固まっています。
戸惑うような顔を向けられたまま凝視されていました。
上半身ブラだけになった彼女が、恥ずかしそうにもじもじしています。
「無理・・・ブラは無理・・・」
そのつぶやきに、私がブラを外す展開を予期したメガネさんが目を見開いていました。
金網フェンスに貼りつかんばかりに近寄ってきています。
(ひいいん)
心臓が破裂しそうでした。
ここまできたら、もうこの場所は二度と使えません。
これが最初で最後でした。
幸い、この人なら静かに見ていてくれそうです。
まさに一期一会のシチュエーションでした。
「ぁぁぁ・・・」
両手を背中にまわしてブラのホックを外します。
胸が露わになりました。
金網フェンスを隔ててメガネさんがかぶりつくように見ています。
「ブラ、取った」
「あああ、男の人が見てるよう」
死ぬほど恥じらってみせました。
警戒する必要がないと悟った彼は、儲けものとばかりに超にやにやしながら私の胸を凝視しています。
若干涙目になってみせながらメガネさんにお願いしました。
「罰ゲームの証拠なんです」
「声に出して言ってください、いま何が見えてますか」
トップレスで向き合ったまま、涙を浮かべてもじもじしてみせています。
細身で色白の彼女でした。
顔はかなり美人のほうだと思いますが、胸はいわゆる貧乳です。
「お、おっぱい」
メガネさんのにやにやが強烈です。
「どんなおっぱいですか」
「ちゃんと、見ているものを説明してください」
自分でそう言いながら、
「あぁぁ、恥ずかしいよ」
頭の中が真っ白になりそうでした。
「ちっちゃいおっぱい、Aカップかな」
「乳首、勃ってる」
(ひいいいん、死ぬ)
あまりの羞恥に耳までかーっと熱くなりそうでした。
にやにや顔に耐えられません。
被虐心をさらに煽りたくてわざとそのまま会話を続けました。
「ちゃんと声を録らせてください」
「私のおっぱいキレイですか」
泣きそうに恥じらいながらフェンスに近づきます。
金網に胸を押しつけました。
ひし形の金網の間から、おっぱいの先端が飛び出します。
ぱっと手が伸びてきて乳首を摘ままれていました。
感じたふりをして、
「ぁんっ」
顔をのけ反らせてみせます。
(ひいーー、嫌あー)
演技でした。
本当はこれっぽっちも感じてなんかいません。
乳首をいじられて、
「ぁんっ、ああっ」
みっともなく鼻の穴を膨らませた、はしたない顔をじろじろ見られる自分が快感でした。
奥歯をかみしめて喘ぎをこらえているふりをします。
「あああ、やめて」
「は、は、恥ずかしいです・・・」
メガネさんがすかさず口で吸いつこうとしてきました。
その瞬間、金網から離れます。
(それはイヤ)
潮時でした。
私は男の人の前で恥ずかしがる自分に興奮したかっただけです。
それ以上のことは望んでいませんでした。
(嫌ああ、いじわる)
(そんな目しないで)
長居するのは危険だと焦りはじめながらも、
(あああ、私)
衝動がわきあがります。
ああん、
(どきどきどき)
絶対だめえー
1歩、2歩、下がりました。
勢いよく両手を前について・・・
その勢いのまま、
『びゆーーん』
倒立します。
『ガッシャっ』
スニーカーが金網につきました。
はいているのは、ひざ下の長さのフレアスカートです。
逆立ちした瞬間におなかまでめくり落ちていました。
パンツははいていません。
(ああああ)
一気に頭に血が昇っています。
下半身まる出しで逆立ちしたまま、ゆっくり開脚しました。
金網に顔を寄せているメガネさんの眼前数十センチの近さで、何も着けていない両脚が大きく左右に開いています。
心の中で、自虐の快感に身悶えていました。
(だめ、もうだめ・・・)
(死んじゃう)
全体重を支えている両腕ががくがくしてきます。
金網を蹴るようにして逆立ち姿勢から戻りました。
(ひいいいー)
メガネさんと目が合います。
驚愕と蔑みが入り混じったような、超にやにやした視線・・・
その彼が、ポケットに手を突っ込んでいました。
さっとスマホを取り出しています。
(あああ・・・)
どうせ二度と会うこともない男性でした。
いまさらどう思われようと知ったことではありません。
反射的に背を向けていました。
後ずさるように金網の寸前までフェンスに近づきます。
スカートをまくり上げました。
お尻を後ろに突き出します。
(あああん)
数秒後には、
「キシャっ、キシャっ」
スマホカメラのシャッター音が鳴り響いていました。
脳の中で興奮がどばどばあふれます。
(あああん)
絶対に顔を写されるわけにはいきませんでした。
だからもう振り向くことはできません。
「キシャっ、キシャっ、キシャっ・・・」
(だめえ、だめえ)
(撮らないでえ)
自虐の極みでした。
スカートをまくり上げたまま、その場にひざをつきます。
背を向けたまま両手を前について地面に這いつくばりました。
メガネさんにお尻の穴をまる見えにして、
「キシャっ、キシャっ、キシャっ」
どう思われてもいい・・・
下半身に意識を集中します。
「恥ずかしいよ、いやんいやあん」
私の正体は、某会社に勤める普通の会社員です。
その私が男性の前で、
「っ・・・くっ・・・」
這いつくばったまま本気でイキんでいました。
お尻の穴からう〇ちが出てくる瞬間を人に見られるなんて・・・
女としてこれ以上の屈辱はありません。
会社の、あのマネージャーの顔を思い浮かべていました。
(あんたの部下は)
(裏ではこんなことしてるんだよ)
「キシャっ、キシャっ、キシャっ・・・」
でも、出ません。
限界でした。
屈辱と羞恥に気が狂いそうです。
いちども後ろを振り返ることなく、自分のスマホとポーチと服をつかんでいました。
そのまま駆け出している私がいます。
〇〇〇の横を曲がったところで、大急ぎで服を着ました。
そして一気にスクーターの場所まで走ります。
(ひいいん)
(嫌あーーー)
キーを差して、メットインスペースから取り出したヘルメットをかぶって、エンジンをスタートさせて・・・
それらの一連の動作を3秒で終えて、次の瞬間には走り出していました。
住宅地の路地を縫うように通って幹線道路に出ます。
興奮の余韻にからだの奥まで熱くなりながら家路に戻る、心臓ばくばくの『私』でした。
(PS)
長文にお付き合いくださってありがとうございました。